法令上の制限 実戦篇

諸法令の過去問アーカイブス 昭和56年・問29 


次の記述のうち,誤っているものはどれか。(昭和56年・問29)

1.「地すべり防止区域内において,地下水の排除を阻害する行為をしようとする者は,都道府県知事の許可を受けなければならない。」

2.「保安林においては,農林水産大臣の許可を受けなければ,土地の形質を変更する行為をしてはならない。」

3.「重要文化財に関し,その現状を変更しようとするときは,文化庁長官の許可を受けなければならない。」

4.「国立公園の特別保護地区内において,工作物の新築をしようとするときは,環境大臣の許可を受けなければならない。」

【正解】

×

1.「地すべり防止区域内において,地下水の排除を阻害する行為をしようとする者は,都道府県知事の許可を受けなければならない。」

【正解:

◆地すべり防止区域

 主務大臣(国土交通大臣または農林水産大臣)は,関係都道府県知事の意見を聴いて,「地すべり防止区域(昭和56年,平成12年出題),「ぼた山崩壊防止区域(平成15年出題)を指定します。(地すべり等防止法3条1項,4条1項,51条1項)

 この区域では一定の行為をしようとする者は都道府県知事の許可を受けなければいけません。(地すべり等防止法18条1項)

第18条  地すべり防止区域内において,次の各号の一に該当する行為をしようとする者は,都道府県知事の許可を受けなければならない。

一  地下水を誘致し,又は停滞させる行為で地下水を増加させるもの(平成12年出題),地下水の排水施設の機能を阻害する行為その他地下水の排除を阻害する行為(昭和56年出題)

二  地下水を放流し,又は停滞させる行為その他地表水のしん透を助長する行為

三  のり切又は切土で政令で定めるもの

四  ため池,用排水路その他の地すべり防止施設以外の施設又は工作物で政令で定めるものの新築又は改良

五  前各号に掲げるもののほか,地すべりの防止を阻害し,又は地すべりを助長し,若しくは誘発する行為で政令で定めるもの

 ⇒ 地すべり等防止法 

災害防止関係法令の過去問の出題状況
    平成10年 平成11年 平成12年 平成13年 平成14年 平成15年
災害危険区域             
急傾斜地崩壊危険区域             
地すべり防止区域内             
ぼた山崩壊防止区域            
土砂災害特別警戒区域   *** *** ***  施行     

※平成13年・16年に「災害防止関係法令」の出題は,ありませんでした。
〔宅地造成等規制法の出題はありました。〕

災害防止関係法令(砂防関係の指定権者,許可権者)
    誰が指定するか 許可権者
急傾斜地崩壊危険区域 都道府県知事 都道府県知事 
地すべり防止区域内 主務大臣
(国土交通大臣 or
農林水産大臣)
都道府県知事
ぼた山崩壊防止区域 主務大臣
(国土交通大臣 or
農林水産大臣)
都道府県知事
土砂災害特別警戒区域 都道府県知事  都道府県知事

    区域の指定 制限行為について
砂防指定地

(砂防法)

国土交通大臣 都道府県知事が禁止・制限し,
都道府県の条例で定める

(下記の場合は,国土交通大臣が知事の職権を施行,
国土交通省令で定める。

他の都道府県の利益の保全のために必要なとき
利害関係が一の都道府県にとどまらないとき)

災害危険区域

(建築基準法)

地方公共団体 建築物の建築についての制限は
地方公共団体の条例で定める

災害防止関係法令は,税法その他の土地の問題にも関係するので,用語の定義
指定区域についてはよく見ておきましょう。

2.「保安林においては,農林水産大臣の許可を受けなければ,土地の形質を変更する行為をしてはならない。」

【正解:×保安林・昭和56年問29,57年,民有林・昭和56年問28,58年,60年,

◆保安林

 保安林は,農林水産大臣または都道府県知事が指定し,水源のかん養,土砂の流失の防備,土砂の崩壊の防備などのために必要があるときに指定される森林です。(森林法25条,25条の2)

 保安林では,立木の伐採(34条1項)土地の形質変更(34条2項)都道府県知事の許可を受けなければいけません。

【出題歴】立木の伐採 (昭和57年,62年) 土地の形質変更  (昭和56年)

 ⇒ 森林法 

3.「重要文化財に関し,その現状を変更しようとするときは,文化庁長官の許可を受けなければならない。」

【正解:昭和56年,平成15年

◆重要文化財

 史跡名勝天然記念物(特別史跡名勝天然記念物を含む。)現状を変更または保存に影響を及ぼす行為(文化財保護法125条1項)重要文化財(国宝を含む。)現状を変更または保存に影響を及ぼす行為(文化財保護法43条1項)は,文化庁長官の許可を受けなければいけません。

 ⇒ 文化財保護法 

4.「国立公園の特別保護地区内において,工作物の新築をしようとするときは,環境大臣の許可を受けなければならない。」

【正解:昭和57年

◆国立公園・特別保護地区

 環境大臣は国立公園について(都道府県知事は国定公園について),当該公園の景観を維持するため,特に必要があるときは,公園計画に基づいて,特別地域内に特別保護地区を指定することができる。(14条1項)

 特別保護地区内においては,一定の行為は,国立公園にあっては環境大臣の,国定公園にあっては都道府県知事の許可を受けなければ,してはならない。(14条3項)

 国立公園・国定公園の特別地域や特別保護地区では,以下の行為をしようとする者は,国立公園では環境大臣,国定公園では都道府県知事の許可を受けなければいけません。(自然公園法・20条3項,21条3項)

 また,環境大臣又は都道府県知事は,環境省令で定める基準に適合しないものについては,許可をしてはならないことになっています。(20条4項,21条4項)

・工作物を新築し(昭和56-57,62,平成11)改築し又は増築すること
・土地を開墾し(昭和59)その他土地の形状を変更すること。(昭和63)
・広告物その他これに類する物を掲出し,若しくは設置し,又は広告その他これに類するものを工作物等に表示すること。
・木竹を伐採すること。

・環境大臣が指定する区域内において木竹を損傷すること
・鉱物を掘採し,又は土石を採取すること
・水面を埋め立て,又は干拓すること。

・環境大臣が指定する区域内において当該区域が本来の生育地でない植物で、当該区域における風致の維持に影響を及ぼすおそれがあるものとして環境大臣が指定するものを植栽し、又は当該植物の種子をまくこと。

・環境大臣が指定する区域内において当該区域が本来の生息地でない動物で、当該区域における風致の維持に影響を及ぼすおそれがあるものとして環境大臣が指定するものを放つこと

・特別地域における風致の維持に影響を及ぼすおそれがある行為で政令で定めるもの
・特別保護地区における景観の維持に影響を及ぼすおそれがある行為で政令で定めるもの

 ⇒ 自然公園法 

自然公園法の出題

 特別保護地区 昭和56年,57年,62年,平成2年
 特別地域 昭和59年,63年,平成11年,
 風景地保護協定 平成15年

●国立公園・国定公園の許可と届出−頻出事項

■国立公園・国定公園の出題歴

  国立公園・特別保護地区 昭和56年,昭和57年,
  
国定公園・特別保護地区 昭和62年,平成2年,
         特別地域 昭和59年,63年,平成11年 

 国立公園  特別地域
 特別保護地区
 海域公園地区
 環境大臣

 地域の指定・許可権者

 国定公園  特別地域
 特別保護地区
 海域公園地区
 都道府県知事

 地域の指定・許可権者

 普通地域は,国立公園又は国定公園の区域のうち特別地域及び海域公園地区に含まれない区域で,一定の行為について事前の届出が必要になります。

 国立公園  普通地域  環境大臣に届出。
 国定公園  普通地域  都道府県知事に届出。

●諸法令〔その他の制限法令〕の過去問Archives
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