宅建過去問 宅建業法
自ら売主の8種制限の過去問アーカイブス 平成21年・問37 小問集合
自らが売主である宅地建物取引業者Aと、宅地建物取引業者でないBとの間での売買契約に関する次の記述のうち、宅地建物取引業法 (以下この問において「法」という。) の規定によれば、正しいものはどれか。(平成21年・問37) |
1 Aは、Bとの間における建物の売買契約 (代金2,000万円) の締結に当たり、手付金として100万円の受領を予定していた。この場合において、損害賠償の予定額を定めるときは、300万円を超えてはならない。 |
2 AとBが締結した建物の売買契約において、Bが手付金の放棄による契約の解除ができる期限について、金融機関からBの住宅ローンの承認が得られるまでとする旨の定めをした。この場合において、Aは、自らが契約の履行に着手する前であれば、当該承認が得られた後は、Bの手付金の放棄による契約の解除を拒むことができる。 |
3 Aは、喫茶店でBから宅地の買受けの申込みを受けたことから、翌日、前日と同じ喫茶店で当該宅地の売買契約を締結し、代金全部の支払を受けた。その4日後に、Bから法第37条の2の規定に基づくいわゆるクーリング・オフによる当該契約を解除する旨の書面による通知を受けた場合、Aは、当該宅地をBに引き渡していないときは、代金の全部が支払われたことを理由に当該解除を拒むことはできない。 |
4 Aは、Bとの間で宅地の割賦販売の契約 (代金3,000万円) を締結し、当該宅地を引き渡した。この場合において、Aは、Bから1,500万円の割賦金の支払を受けるまでに、当該宅地に係る所有権の移転登記をしなければならない。 |
<コメント> |
●出題論点● |
肢1 〔損害賠償額の予定等の制限〕 受領する手付金の額に関係なく,損害賠償の予定額及び違約金の額を合算して代金の額の10分の2まで定めることができる。
肢2 〔手付けによる解除〕 当事者の一方が契約の履行に着手するまでは,買主はその手附を放棄して,当該宅建業者はその倍額を償還して,契約の解除をすることができる。この規定に反する特約は無効である。 肢3 〔クーリングオフ〕 代金全額を支払っていても,引渡しを受けていなければ,クーリングオフによる契約解除ができる。 肢4 〔所有権留保等の禁止〕 宅建業者は,割賦販売で,引き渡した場合は,代金の10分の3を超える額の金銭の支払を受けるまでに,登記その他引渡し以外の売主の義務を履行しなければならない |
【正解】
1 | 2 | 3 | 4 |
× | × | ○ | × |
正答率 | 81.0% |
1 Aは、Bとの間における建物の売買契約 (代金2,000万円) の締結に当たり、手付金として100万円の受領を予定していた。この場合において、損害賠償の予定額を定めるときは、300万円を超えてはならない。 |
【正解:×】平成5年・問43・肢2,平成17年・問43・肢2, ◆損害賠償額の予定等の制限 宅建業者が自ら売主として宅建業者ではない者と締結する売買契約では,当事者の債務の不履行を理由とする契約の解除に伴う損害賠償の額を予定し,または違約金を定めるときは,これらを合算した額が代金の額の10分の2を超えることはできません(宅建業法38条1項)。 本肢の場合,手付金を受領を予定していますが,手付金の額には関係なく,400万円〔代金の額の10分の2〕まで損害賠償の予定額を定めることができます〔違約金については設定しないものとします〕。このため,本肢は誤りです。 ⇒ 受領する手付金の額に関係なく,損害賠償の予定額及び違約金の額を合算して代金の額の10分の2まで定めることができる。 |
2 AとBが締結した建物の売買契約において、Bが手付金の放棄による契約の解除ができる期限について、金融機関からBの住宅ローンの承認が得られるまでとする旨の定めをした。この場合において、Aは、自らが契約の履行に着手する前であれば、当該承認が得られた後は、Bの手付金の放棄による契約の解除を拒むことができる。 |
【正解:×】昭和56年・問48・肢1,昭和58年・問39・肢3,平成5年・問43・肢1,平成6年・問43・肢3,平成7年・問45・肢2,平成13年・問41・肢3,平成18年・問39・肢3,平成19年・問34・肢1, ◆手付けによる解除 宅建業者が,自ら売主として宅建業者ではない者との宅地・建物の売買契約の締結に際して手附を受領したときは,その手附がいかなる性質のものであつても,解約手付とみなされ,当事者の一方が契約の履行に着手するまでは,買主はその手附を放棄して,当該宅建業者はその倍額を償還して,契約の解除をすることができます (宅建業法39条2項)。 この規定に反する特約で,買主に不利なものは無効です(宅建業法39条3項)。 本肢の場合,手付けによる契約解除ができる期限を金融機関から住宅ローンの承認が得られるまでとする旨の定めをしていますが,この特約自体が,上記の規定に反する特約で,買主に不利なため無効です。 したがって,Aは,Bの住宅ローンについて金融機関から承認が得られた後であっても,自らが契約の履行に着手しているのでない限り,Bの手付金の放棄による契約の解除を拒むことはできません。 |
3 Aは、喫茶店でBから宅地の買受けの申込みを受けたことから、翌日、前日と同じ喫茶店で当該宅地の売買契約を締結し、代金全部の支払を受けた。その4日後に、Bから法第37条の2の規定に基づくいわゆるクーリング・オフによる当該契約を解除する旨の書面による通知を受けた場合、Aは、当該宅地をBに引き渡していないときは、代金の全部が支払われたことを理由に当該解除を拒むことはできない。 |
【正解:○】昭和61年・問42・肢2,平成4年・問45・肢3,平成15年・問39・肢4, ◆代金全額を支払っていても,引渡しを受けていなければ,クーリングオフによる契約解除ができる 宅建業者ではない買主が代金を全額支払い,かつ,引渡しを受けているときは,クーリングオフの規定による契約解除をすることはできません(宅建業法37条の2第1項2号)。 しかし,本肢の場合,Bは,代金全部の支払をしていても,引渡しを受けていないので,クーリングオフの規定による契約解除をすることができます。 したがって,Aは,代金の全部が支払われたことを理由に当該解除を拒むことはできません。 |
4 Aは、Bとの間で宅地の割賦販売の契約 (代金3,000万円) を締結し、当該宅地を引き渡した。この場合において、Aは、Bから1,500万円の割賦金の支払を受けるまでに、当該宅地に係る所有権の移転登記をしなければならない。 |
【正解:×】平成8年・問46・肢2,平成15年・問35・肢2, ◆引き渡した場合は,代金の10分の3を超える額の金銭の支払を受けるまでに,登記その他引渡し以外の売主の義務を履行しなければならない 宅建業者は,自ら売主として宅建業者ではない者に対して宅地・建物の割賦販売を行なつた場合には,原則として,買主に引き渡すまで(当該宅地又は建物を引き渡すまでに代金の額の10分の3を超える額の金銭の支払を受けていない場合は,代金の10分の3を超える額の金銭の支払を受けるまで)に,登記その他引渡し以外の売主の義務を履行しなければなりません(宅建業法43条1項)。 本肢の場合,代金の10分の3である900万円を超える金銭の支払を受けるまでに,所有権の移転登記その他引渡し以外の売主の義務を履行しなければならないことになります。 本肢では,「Bから1,500万円の割賦金の支払を受けるまでに」としているので,誤りです。 |
●条文確認 |
(所有権留保等の禁止) 第43条 宅地建物取引業者は、みずから売主として宅地又は建物の割賦販売を行なつた場合には、当該割賦販売に係る宅地又は建物を買主に引き渡すまで(当該宅地又は建物を引き渡すまでに代金の額の10分の3をこえる額の金銭の支払を受けていない場合にあつては、代金の額の10分の3をこえる額の金銭の支払を受けるまで)に、登記その他引渡し以外の売主の義務を履行しなければならない。ただし、買主が、当該宅地又は建物につき所有権の登記をした後の代金債務について、これを担保するための抵当権若しくは不動産売買の先取特権の登記を申請し、又はこれを保証する保証人を立てる見込みがないときは、この限りでない。 |