法令上の制限 実戦篇

農地法の過去問アーカイブス 平成8年・問17 


農地法に関する次の記述のうち,誤っているものはどれか。(平成8年・問17)

1.「市街化区域内の農地を取得して住宅地に転用する場合は,都道府県知事にその旨届け出れば,農地法第5条の許可を得る必要はない。」

2.「市街化区域外の農地を6ヵ月間貸して臨時駐車場にする場合は,その後農地として利用するときでも,農地法第5条の許可を得る必要がある。

3.「農地を相続により取得する場合は,農地法第3条の許可を得る必要はない。」

4.「競売により農地の買受人となった者がその農地を取得する場合は,農地法第3条の許可を得る必要がある。」

【正解】

×

1.「市街化区域内の農地を取得して住宅地に転用する場合は,都道府県知事にその旨届け出れば,農地法第5条の許可を得る必要はない。」

【正解:×昭和62年,平成元年,8年,11年,12年

◆市街化区域内 : 転用目的で農地の取得

 × 都道府県知事への届出 →  農業委員会への届出

 転用目的で農地を取得する場合は原則として都道府県知事〔4ha超のときは農林水産大臣〕の許可が必要ですが,市街化区域内の農地の場合は,特例で,面積にかかわらず,農業委員会への届出でよいことになっています。

●市街化区域内の農地・採草放牧地−許可(3条),特例による届出(4条・5条)
 耕作目的で農地・採草放牧地の権利の設定・移転 農業委員会許可
 農地の自己転用  【特例】農業委員会への届出
 転用目的で農地・採草放牧地の権利の設定・移転  【特例】農業委員会への届出

2.「市街化区域外の農地を6ヵ月間貸して臨時駐車場にする場合は,その後農地として利用するときでも,農地法第5条の許可を得る必要がある。

【正解:昭和60年,平成5年,6年,8年,10年,14年

◆一時的な転用のための権利の設定

農地 → 臨時駐車場 のための 賃借権設定 転用目的のための権利の設定

 は,農地法第5条の都道府県知事or農林水産大臣の許可(4ha超は農林水産大臣。市街化区域内は面積に関係なく農業委員会への届出)が必要です。臨時駐車場として貸した後に農地として利用するときでも変わりません。

 使用貸借  建設会社の現場事務所  昭和60年
 賃貸借  資材置場  平成5年,6年,10年,14年
 臨時駐車場  平成8年

3.「農地を相続により取得する場合は,農地法第3条の許可を得る必要はない。」

【正解:昭和61年,平成3年,平成8年,平成10年,平成15年

◆遺産分割

 遺産の分割,離婚での財産分与に関する裁判・調停,相続財産の分与に関する裁判によって権利が設定・移転されるときには,農地法3条による許可は不要です。(3条1項12号)

包括遺贈による農地の取得の場合も,3条の許可は不要です。(農地法3条1項16号,施行規則18条5号)

農地法3条の3 (農地又は採草放牧地についての権利取得の届出)
 相続包括遺贈遺産分割(離婚・婚姻取消しに伴う)財産の分与に関する裁判・調停(特別縁故者に対する)相続財産の分与に関する裁判によって,権利が設定または移転された場合, 3条の許可は不要であるが,遅滞なく,農地・採草放牧地のある市町村の農業委員会に,その旨の届出をしなければならない(農地法3条1項12号,16号)

4.「競売により農地の買受人となった者がその農地を取得する場合は,農地法第3条の許可を得る必要がある。」

【正解:平成5年,平成8年,平成16年

◆競売による取得でも農地法の許可が必要

 競売による農地の取得でも農地法の許可を受けなければいけません。農地法3条1項(耕作目的の取得)の許可不要のものの中に『競売による取得』は含まれていないからです。

 農地法の3条の許可は所有者・権利者の実質的な変化をチェックすることですから,競売のように誰が買うのかわからないものをチェックするのは当然と言えます。


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