法令上の制限 実戦篇

農地法の過去問アーカイブス 平成5年・問26 


農地法に関する次の記述のうち,誤っているものはどれか。(平成5年・問26)

1.「市街化区域〔都市計画法第7条第1項の市街化区域と定められた区域で,農林水産大臣との協議が調ったものをいう。〕内の農地に住宅を建てようとする場合,事前に農業委員会へ届出を行えば,農地法の許可を受ける必要はない。」

2.「農作物を収穫した後の数ヵ月だけ資材置場として賃貸する場合,営農に支障がなければ,農地法の許可を受ける必要はない。」

3.「競売により農地の所有権を取得する場合,農地法の許可を受ける必要がある。」

4.「賃貸住宅を建てるため一度農地法の許可を受けた農地を,その後工事着工前に賃貸住宅用地として売却する場合,改めて農地法の許可を受ける必要がある。」

【正解】

×

1.「市街化区域〔都市計画法第7条第1項の市街化区域と定められた区域で,農林水産大臣との協議が調ったものをいう。〕内の農地に住宅を建てようとする場合,事前に農業委員会へ届出を行えば,農地法の許可を受ける必要はない。」

【正解:平成5年,14年

◆市街化区域内での農地の自らの転用は農業委員会への届出

市街化区域内の農地 → 農地の所有者が住宅を建設する 農地の自己転用

 農地の自己転用(4条),農地・採草放牧地の転用目的の権利移転(5条)は,その土地が市街化区域内にあるときは,前もって農業委員会へ届け出ることでよいので,本設問では第4条の許可は不要です。

●農地の自己転用(農地法4条)
 市街化区域外  4ha超=農林水産大臣許可
 4ha以下=都道府県知事許可
 市街化区域内  【特例】面積によらず,農業委員会への届出

採草放牧地の自己転用では農地法4条の許可は不要。採草放牧地を農地に転用するための権利の設定・移転は農地法3条の許可が必要になる。

●市街化区域内の農地・採草放牧地−許可(3条),特例による届出(4条・5条)
 耕作目的で農地・採草放牧地の権利の設定・移転 農業委員会許可
 農地の自己転用  【特例】農業委員会への届出
 転用目的で農地・採草放牧地の権利の設定・移転  【特例】農業委員会への届出

2.「農作物を収穫した後の数ヵ月だけ資材置場として賃貸する場合,営農に支障がなければ,農地法の許可を受ける必要はない。」

【正解:×昭和60年,平成5年,6年,8年,10年,14年

◆一時的な転用のための権利の設定

農地 → 資材置場 のための 賃借権設定 転用目的のための権利の設定

 は,農地法第5条の都道府県知事or農林水産大臣の許可(4ha超は農林水産大臣。市街化区域内は面積に関係なく農業委員会への届出)が必要です。営農に支障がなければ許可が要らないということではありません。

 使用貸借  建設会社の現場事務所  昭和60年
 賃貸借  資材置場  平成5年,6年,10年,14年
 臨時駐車場  平成8年

3.「競売により農地の所有権を取得する場合,農地法の許可を受ける必要がある。」

【正解:平成5年,平成8年,平成16年

◆競売による取得でも農地法の許可が必要

 競売による農地の取得でも,原則として,農地法3条(耕作等の目的のための取得)または5条(転用目的の取得)の許可が必要です。農地法3条1項,5条1項の許可不要のものの中に『競売による取得』は含まれていないからです。

農地法の3条の許可は所有者・権利者の実質的な変化をチェックすることですから,競売のように誰が買うのかわからないものをチェックするのは当然と言えます。

4.「賃貸住宅を建てるため一度農地法の許可を受けた農地を,その後工事着工前に賃貸住宅用地として売却する場合,改めて農地法の許可を受ける必要がある。」

【正解:平成5年,13年

◆4条の許可を受けていても転用工事をしないまま売却→改めて5条の許可

    4条の許可             第三者に所有権移転

 ――――――――――――――――――――――→
        転用工事に着手していない

 本肢は,以下のように整理できます。

転用工事に着手する前に 同一の転用目的で ●第三者にその所有権を移転

 すでに4条の許可を受けていて同一の転用目的で譲渡するのであっても,改めて農地法第5条の許可が必要です。

現況農地 → (許可の必要な)転用目的で取得 農地の転用目的の権利の移転


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