法令上の制限 実戦篇
農地法の過去問アーカイブス 平成15年・問23
農地法に関する次の記述のうち,正しいものはどれか。(平成15年・問23) |
1.「市町村が農地を農地以外のものにするため所有権を取得する場合,農地法第5条の許可を得る必要はない。」 |
2.「市街化調整区域内の農地を宅地に転用する目的で所有権を取得する場合,あらかじめ農業委員会に届け出れば農地法第5条の許可を得る必要はない。」 |
3.「農地の所有者がその農地のうち2アールを自らの養畜の事業のための畜舎の敷地に転用しようとする場合,農地法第4条の許可を得る必要はない。」 |
4.「遺産の分割により農地の所有権を取得する場合,農地法第3条の許可を得る必要はない。」 |
●市街化区域外の農地・採草放牧地−許可(3条,4条,5条) | |
耕作目的で農地の権利の設定・移転
採草放牧地の権利の設定・移転〔農地転用を含む〕 |
農業委員会の許可 |
農地の自己転用 | 4ha超=農林水産大臣の許可
4ha以下=都道府県知事の許可 |
転用目的で農地・採草放牧地の権利の設定・移転 | 農地4ha超=農林水産大臣の許可 農地4ha以下=都道府県知事の許可 採草放牧地のみ=都道府県知事の許可 |
【正解】
1 | 2 | 3 | 4 |
× | × | × | ○ |
1.「市町村が農地を農地以外のものにするため所有権を取得する場合,農地法第5条の許可を得る必要はない。」 |
【正解:×】平成6年,平成15年 ◆市町村は,原則として農地法の許可が必要 市町村は原則として農地法3条〜5条の許可が必要です。ただし,許可不要となる例外があります。 都道府県を除く地方公共団体〔市町村や地方公共団体の組合,地方開発事業団〕で農地法第5条の許可が不要となるのは,例えば,次のような場合です。(農地法5条1項7号,施行規則53条5号) ・地方公共団体( 都道府県を除く。)がその設置する道路,河川,堤防,水路若しくはため池又はその他の施設で土地収用法第3条各号に掲げるもの(第28条第1号から第3号までに掲げる施設〔学校,社会福祉事業または更生保護事業の用に供する施設,病院・診療所・助産所〕,市役所,特別区の区役所,町村役場を除く。)の敷地に供するため,その区域内にある農地又は採草放牧地について権利を取得する場合 |
●類題 |
1.「市町村が農地の権利を取得する場合には,農地法第3条に基づく許可は常に不要である。」(不動産鑑定士・2次・平成12年問16肢1), |
【正解:×】国や都道府県が農地を転用を伴わずに取得する場合は3条の許可が不要という規定はありますが,市町村の場合は3条許可が不要という規定はありません。 |
2.「市町村が自ら農地を転用する場合,農地法第4条に基づく許可は常に不要である。」(不動産鑑定士・2次・平成11年問15肢4) |
【正解:×】市町村(地方開発事業団,地方公共団体の組合)が自己転用する場合は,原則として4条の許可が必要ですが,道路,河川,堤防,水路,ため池その他の施設で土地収用法第3条各号に掲げるもの(第28条第1号から第3号までに掲げる施設〔学校,社会福祉事業または更生保護事業の用に供する施設,病院・診療所・助産所〕,市役所,特別区の区役所,町村役場を除く。)の敷地に供するためにその市町村内にある農地を農地以外のものに転用するときは,4条の許可は不要です。(4条1項8号,施行規則32条6号)
※赤字部分は平成22年6月1日施行。 |
2.「市街化調整区域内の農地を宅地に転用する目的で所有権を取得する場合,あらかじめ農業委員会に届け出れば農地法第5条の許可を得る必要はない。」 |
【正解:×】 ◆市街化調整区域内にある農地を転用目的で取得 市街化区域内にある農地を転用目的で取得する場合はあらかじめ農業委員会へ届け出れば5条の許可を受ける必要はありません(5条1項6号)が,市街化調整区域内にある農地にはこのような特例はないので,農地法第5条の都道府県知事〔4ha超は農林水産大臣〕の許可が必要です。 |
●関連問題 |
「農地を農地以外のものにするための許可には,条件が付されることがある。」(昭和57年問27肢4) |
【正解:○】農地法3条〜5条の許可をするときには,条件を付すことができます。(3条4項,4条4項,5条3項)
・耕作・養畜目的の農地・採草放牧地の権利の移転・設定(3条4項) ▼都道府県知事が4条・5条の許可をしようとするときには,あらかじめ,都道府県農業会議の意見を聴くことになっています。(4条3項,5条3項)・・・近年では出題がない。 |
3.「農地の所有者がその農地のうち2アールを自らの養畜の事業のための畜舎の敷地に転用しようとする場合,農地法第4条の許可を得る必要はない。」 |
【正解:×】平成11年,15年 ◆2アール〔200平方メートル〕以上は許可が必要 農地法4条許可の不要なものとして,<2アール未満の農業用施設〔農作物の育成・養畜の事業のため〕に供する場合>があります。(4条1項8号,施行規則32条1号) 本肢の場合は,ジャスト2アールなので,ギリギリ許可が必要です。 2アール未満の農業用施設に転用・・・農地法4条の許可は不要 2アール以上の農業用施設に転用・・・農地法4条の許可が必要
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4.「遺産の分割により農地の所有権を取得する場合,農地法第3条の許可を得る必要はない。」 |
【正解:○】昭和61年,平成3年,平成8年,平成10年,平成15年 ◆遺産分割 遺産の分割,離婚での財産分与に関する裁判・調停,相続財産の分与に関する裁判によって権利が設定・移転されるときには,農地法3条による許可は不要です。(3条1項12号) ただし,21年12月施行の改正によって,遅滞なく,その農地又は採草放牧地の存する市町村の農業委員会にその旨を届け出なければならないとされました(3条の3第1項)。 |
●農地法3条の3 (農地又は採草放牧地についての権利取得の届出) |
相続,包括遺贈,遺産分割,(離婚・婚姻取消しに伴う)財産の分与に関する裁判・調停,(特別縁故者に対する)相続財産の分与に関する裁判によって,権利が設定または移転された場合, 3条の許可は不要であるが,遅滞なく,農地・採草放牧地のある市町村の農業委員会に,その旨の届出をしなければならない(農地法3条1項12号,16号)。 |
●類題 |
1.「包括遺贈により農地の所有権が取得される場合には,常に農地法第3条に基づく許可を受ける必要はない。」(不動産鑑定士・2次・平成14年問16肢5) |
【正解:○】(農地法3条1項16号,施行規則18条5号) |
2.「相続によって農地の権利を承継する場合には,農地法第3条に基づく許可が常に必要である。」(不動産鑑定士・2次・平成11年問15肢4),宅建・平成8年 |
【正解:×】 |
●農地法の過去問Archives |
昭和63年,平成元年,平成2年,平成3年,平成4年,平成5年,平成6年,平成7年, 平成8年,平成9年,平成10年,平成11年,平成12年,平成13年,平成14年,平成15年,平成16年,平成17年,平成18年,平成19年,平成20年,平成21年, |