法令上の制限 実戦篇

農地法の過去問アーカイブス 平成9年・問21 


市街化区城外にある農地に関する次の記述のうち,農地法の規定によれば正しいものはどれか。 (平成9年・問21)

1.「農家が住宅の改築に必要な資金を銀行から借りるため,自己所有の農地に抵当権を設定する場合は,農地法第3条の許可を受ける必要はない。」

2.「農家が自己所有の農地に賃貸住宅を建設するため転用する場合は,農地法第4条の許可を受ける必要はない。

3.「農家が自己所有の農地にその居住用の住宅を建設するため転用する場合は,農地法第4条の許可を受ける必要はない。」

4.「山林を開墾して造成した農地について,それを宅地に転用する目的で取得する場合は、農地法第5条の許可を受ける必要はない。」

●市街化区域外の農地・採草放牧地−許可(3条,4条,5条)
 耕作目的で農地の権利の設定・移転

 採草放牧地の権利の設定・移転〔農地転用を含む〕

農業委員会許可
 農地の自己転用 4ha超=農林水産大臣許可

4ha以下=都道府県知事許可

 転用目的で農地・採草放牧地の権利の設定・移転 農地4ha超=農林水産大臣許可
農地4ha以下=都道府県知事許可

採草放牧地のみ都道府県知事許可
         〔面積によらず〕

【正解】

× × ×

1.「農家が住宅の改築に必要な資金を銀行から借りるため,自己所有の農地に抵当権を設定する場合は,農地法第3条の許可を受ける必要はない。」

【正解:昭和61年

◆抵当権の設定には農地法の許可は要らない

 質権の設定には農地法の許可が必要ですが(昭和61年,63年出題),抵当権の設定には農地法の許可は不要です。農地に質権の設定すれば農地を管理する人が変わるのに対して,抵当権では使用収益する人は変わらないので,このような違いが生じます。

 ◎農地法 → 農地の減少農地を使用収益する人の変化をチェックする。

●類題
「農地について抵当権を設定する場合には,農地法に基づく許可が必要である(不動産鑑定士・平成12年問16肢1)
【正解:×

2.「農家が自己所有の農地に賃貸住宅を建設するため転用する場合は,農地法第4条の許可を受ける必要はない。

【正解:×

◆自己転用

 農地を賃貸住宅に自己転用する場合には原則として農地法4条の許可が必要です。

●農地の自己転用(農地法4条)
 市街化区域外  4ha超=農林水産大臣許可
 4ha以下=都道府県知事許可
 市街化区域内  【特例】面積によらず,農業委員会への届出

3.「農家が自己所有の農地にその居住用の住宅を建設するため転用する場合は,農地法第4条の許可を受ける必要はない。」

【正解:×】】昭和60年,63年,平成4年,9年,12年

◆市街化区域外の農地の自己転用

 自己所有の農地にその居住用の住宅を建設するのは自己転用です。

 農家がその所有する農地を自己転用するには原則として,都道府県知事(その面積が4ヘクタール超の場合は農林水産大臣)の許可が必要です。〔市街化区域内の場合は農業委員会への届出〕

 都市計画法の「市街化調整区域・非線引き区域・準都市計画区域内の農林漁業を営む者の住宅における開発許可不要の制度(都市計画法第29条2号)」と混同しないように注意しましょう。

●農地の自己転用(農地法4条)
 市街化区域外  4ha超=農林水産大臣許可
 4ha以下=都道府県知事許可
 市街化区域内  【特例】面積によらず,農業委員会への届出

採草放牧地の自己転用では農地法4条の許可は不要。採草放牧地→農地に転用するための権利の移転・設定は農地法3条の許可になる。

農家が2a未満の農地農作物の育成・養畜のための農業用施設(温室の建築など)供する場合は自己転用の4条の許可は不要です。→出題・平成11年・15年

4.「山林を開墾して造成した農地について,それを宅地に転用する目的で取得する場合は,農地法第5条の許可を受ける必要はない。」

【正解:×昭和56年,63年,平成3年,4年,7年,9年,11年,13年

◆現況農地を転用目的で取得

 『山林を開墾して造成した農地』→現況農地

 「山林を開墾して造成した」という部分は"飾り"です。
 『現況農地を宅地に転用』するには農地法5条の許可が必要でしたね。

山林を取得して農地として造成するときには農地法の許可は要らない。→平成6年

 農地・採草放牧地以外の土地
          ⇒ 取得して農地に
 →  農地法の許可は要らない

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