法令上の制限 実戦篇

農地法の過去問アーカイブス 平成17年・問25


農地法に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。(平成17年・問25)

1.「農地を一時的に資材置場に転用する場合は、いかなる場合であってもあらかじめ農業委員会に届出をすれば、農地法第4条第1項又は同法第5条第1項の許可を受ける必要はない。」

2.「市街化区域内の農地を耕作の目的に供するために取得する場合は、あらかじめ農業委員会に届け出れば、農地法第3条第1項の許可を受ける必要はない。

3.「農業者が山林原野を取得して、農地として造成する場合、農地法第3条第1項の許可を受ける必要がある。」

4.「農業者が自ら居住している住宅の改築に必要な資金を銀行から借りるため、自己所有の農地に抵当権を設定する場合、農地法第3条第1項の許可を受ける必要はない。」

【正解】

× × ×

1.「農地を一時的に資材置場に転用する場合は、いかなる場合であってもあらかじめ農業委員会に届出をすれば、農地法第4条第1項又は同法第5条第1項の許可を受ける必要はない。」

【正解:×

◆農地の自己転用,転用目的の権利の移転・設定

 農林水産大臣との協議が調った市街化区域内では,農地の自己転用,転用目的の権利取得とも,あらかじめ農業委員会に届出をすれば,農地法第4条第1項又は同法第5条第1項の許可を受ける必要はないが,

 市街化区域外では,都道府県知事(農地4ha以下)又は農林水産大臣(農地4ha超)の許可を必要とするので,誤り。

●市街化区域外の農地・採草放牧地−許可(3条,4条,5条)
 耕作目的で農地の権利の設定・移転

 採草放牧地の権利の設定・移転〔農地転用を含む〕

農業委員会許可
 農地の自己転用 4ha超=農林水産大臣許可

4ha以下=都道府県知事許可

 転用目的で農地・採草放牧地の権利の設定・移転 農地4ha超=農林水産大臣許可
農地4ha以下=都道府県知事許可

採草放牧地のみ都道府県知事許可
         〔面積によらず〕

2.「市街化区域内の農地を耕作の目的に供するために取得する場合は、あらかじめ農業委員会に届け出れば、農地法第3条第1項の許可を受ける必要はない。

【正解:×

◆3条の許可に,市街化区域内の特例はない

 農地の自己転用(4条の許可),転用目的の権利取得(5条の許可)の場合は,農林水産大臣との協議が調った市街化区域内では,あらかじめ農業委員会に届出をすれば,農地法第4条第1項又は同法第5条第1項の許可を受ける必要はないが,

 市街化区域内の農地を耕作の目的に供するために取得する場合特例措置はないので,当該農地が取得する者の居住地にあるかどうかで,あらかじめ農業委員会又は都道府県知事の農地法第3条の許可を受けなければならない。

●市街化区域内の農地・採草放牧地−許可(3条),特例による届出(4条・5条)
 耕作目的で農地・採草放牧地の権利の設定・移転 農業委員会許可
 農地の自己転用  【特例】農業委員会への届出
 転用目的で農地・採草放牧地の権利の設定・移転  【特例】農業委員会への届出

3.「農業者が山林原野を取得して、農地として造成する場合、農地法第3条第1項の許可を受ける必要がある。」

【正解:×平成6年・問27・肢2,平成17年・問25・肢3

◆山林原野を農地として造成する

 農地法での農地以外の土地 (現況農地は含まれない。) を取得して,農地として造成する場合には,農地法第3条の許可を受ける必要はない。

 農地法第3条は,農地の場合,耕作者等の変化について目を光らせるというのが制度趣旨であり,それまで農地でなかった土地が農地になるのを取り締まるのではないからである

4.「農業者が自ら居住している住宅の改築に必要な資金を銀行から借りるため、自己所有の農地に抵当権を設定する場合、農地法第3条第1項の許可を受ける必要はない。」

【正解:

◆抵当権の設定−農地法3条の許可不要

 自己所有の農地に質権を設定する場合には,実質的に農地を使用収益する者(耕作する者)が変わってしまうので農地法3条の許可が必要であるが,

 抵当権を設定する場合は、抵当権設定者である農地の所有者は引き続き農地を耕作できるので,農地法第3条の許可は不要である。


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