法令上の制限 実戦篇

農地法の過去問アーカイブス 平成2年・問26


農地法に関する次の記述のうち,正しいものはどれか。(平成2年・問26)

1.「土地収用法第3条に規定する事業〔土地を収用し,又は収用することができる事業〕である場合,その事業に供するための農地の取得については,農地法第5条第1項の許可を要しない。」

2.「農地法上必要な許可を受けないで農地の賃貸借をした場合は,その賃貸借の効力が生じないから,賃借人は,その農地を利用する権利を有することにならない。」

3.「市街化区域〔都市計画法第7条第1項の市街化区域と定められた区域で,農林水産大臣との協議が調ったものをいう。〕内にある農地の所有権を取得しようとする場合,取得後,農地として耕作する目的であるか,農地を農地以外に転用する目的であるかにかかわらず,あらかじめ農業委員会に届け出れば足り,農地法の許可を受ける必要はない。」

4.「住宅建築のために農地を購入する場合は,原則として農地法第5条第1項の許可が必要であるが,その取得した農地に住宅を建築するときは,農地を農地以外のものにすることとなるため,さらに農地法第4条第1項の許可が必要となる。」

【正解】

× × ×

1.「土地収用法第3条に規定する事業〔土地を収用し,又は収用することができる事業〕である場合,その事業に供するための農地の取得については,農地法第5条第1項の許可を要しない。」

【正解:×】対比・昭和63年問27肢3昭和61年問26肢3

◆任意取得=買収

 土地収用法という言葉に惑わされないようにしましょう。

 土地収用法により収用または使用される場合は農地法5条の許可は不要です。(農地法5条1項5号)しかし,<その事業に供するための農地の取得〔=買収〕>の場合は農地法5条の許可が必要です。

2.「農地法上必要な許可を受けないで農地の賃貸借をした場合は,その賃貸借の効力が生じないから,賃借人は,その農地を利用する権利を有することにならない。」

【正解:昭和57年,昭和59年,60年,62年,平成2年,6年,13年

◆許可を受けないでした農地の賃貸借は無効

 農地に(耕作・養畜目的で)賃借権を設定するのは農地法3条の許可が必要です。許可を受けないでした行為(農地の賃貸借)は無効ですから,本肢での賃借人はその農地を利用する権利を有しないことになります。(3条7項)

農地法5条の許可を受けないでした転用目的の賃貸借契約も無効です。

農地・採草放牧地の賃貸借は「引渡しをもって第三者への対抗要件とする」という規定(農地法16条1項)がありますが,これは≪第三者への対抗要件≫であり,本肢での契約の効力発生要件と混同してはいけません。

●類題
1.「農地を農地以外のものにするための権利の設定又は移転は,原則として農地法第5条の許可を受けなければ,効力を生じない(昭和57年問27肢3)
【正解:
2.「は,所有の市街化区域〔都市計画法第7条第1項により市街化区域と定められたもので農林水産大臣との協議が調ったものをいう。〕内の農地300平方メートルを自己の住宅の敷地とするために賃借しようとしている。AB間の賃貸借は,農業委員会にあらかじめ届け出れば,農地法に基づく許可がなくとも有効に成立する。」(昭和59年問27肢3)
【正解:

3.「市街化区域〔都市計画法第7条第1項の市街化区域と定められた区域で,農林水産大臣との協議が調ったものをいう。〕内にある農地の所有権を取得しようとする場合,取得後,農地として耕作する目的であるか,農地を農地以外に転用する目的であるかにかかわらず,あらかじめ農業委員会に届け出れば足り,農地法の許可を受ける必要はない。」

【正解:×

◆市街地内の農地・採草放牧地の取得→耕作目的と転用目的で異なる

 市街化区域内の農地・採草放牧地の取得は,取得目的によって許可と届出に分かれます。

 農地を転用目的で取得する場合は市街化区域内の特例で農業委員会への届出ですみますが,耕作目的での農地・採草放牧地の取得農業委員会〔住所地外にあるときは都道府県知事〕の許可が必要です。

●市街化区域内の農地・採草放牧地−許可(3条),特例による届出(4条・5条)
 耕作目的で農地・採草放牧地の権利の設定・移転 農業委員会許可
 農地の自己転用  【特例】農業委員会への届出
 転用目的で農地・採草放牧地の権利の設定・移転  【特例】農業委員会への届出

4.「住宅建築のために農地を購入する場合は,原則として農地法第5条第1項の許可が必要であるが,その取得した農地に住宅を建築するときは,農地を農地以外のものにすることとなるため,さらに農地法第4条第1項の許可が必要となる。」

【正解:×

◆5条の許可を得たときは原則として重ねて4条の許可は要らない

 農地法第5条の許可をしたときに転用の可否についての判断はすでになされているので,取得した農地の転用目的が変わらない限り,農地法第4条第1項の許可は不要です(農地法4条1項1号)

●市街化区域外の農地・採草放牧地−許可(3条,4条,5条)
 耕作目的で農地の権利の設定・移転

 採草放牧地の権利の設定・移転〔農地転用を含む〕

農業委員会許可
 農地の自己転用 4ha超=農林水産大臣許可

4ha以下=都道府県知事許可

 転用目的で農地・採草放牧地の権利の設定・移転 農地4ha超=農林水産大臣許可
農地4ha以下=都道府県知事許可

採草放牧地のみ都道府県知事許可
         〔面積によらず〕


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