法令上の制限 実戦篇

農地法の過去問アーカイブス 昭和61年・問26


農地法第3条の規定に基づく農地又は採草放牧地の権利移動の制限に係る許可に関する次の記述のうち,誤っているものはどれか。(昭和61年・問26)

1.「農地又は採草放牧地について所有権を移転し,又は地上権,永小作権若しくは質権を設定するには,許可を必要とするが,抵当権を設定する場合には,許可を必要としない。」

2.「遺産の分割によって農地又は採草放牧地の所有権が移転される場合には,許可を必要とする。」

3.「土地改良法による交換分合によって,農地の所有権を取得する場合には,許可を必要としない。」(改)

4.「非農家〔サラリーマン〕が,家庭菜園の利用に供するために,20平方メートルの農地の賃借権を取得しようとする場合には,許可を受けることはできない。」

【正解】

×

1.「農地又は採草放牧地について所有権を移転し,又は地上権,永小作権若しくは質権を設定するには,許可を必要とするが,抵当権を設定する場合には,許可を必要としない。」

【正解:平成9年

◆抵当権の設定には農地法の許可は要らない

 質権の設定には農地法の許可が必要ですが(昭和63年出題),抵当権の設定には農地法の許可は不要です。農地に質権を設定すれば農地を管理する人が変わるのに対して,抵当権では使用収益する人は変わらないので,このような違いが生じます。

 ◎農地法 → 農地の減少農地を使用収益する人の変化をチェックする。

●類題
「農地について抵当権を設定する場合には,農地法に基づく許可が必要である。」(不動産鑑定士・2次・平成12年問16肢3)
【正解:×

2.「遺産の分割によって農地又は採草放牧地の所有権が移転される場合には,許可を必要とする。」

【正解:×昭和61年,平成3年,平成8年,平成10年,平成15年

◆遺産分割

 遺産の分割,離婚での財産分与に関する裁判・調停,相続財産の分与に関する裁判によって権利が設定・移転されるときには,農地法3条による許可は不要です。(3条1項12号)

農地法3条の3 (農地又は採草放牧地についての権利取得の届出)
 相続包括遺贈遺産分割(離婚・婚姻取消しに伴う)財産の分与に関する裁判・調停(特別縁故者に対する)相続財産の分与に関する裁判によって,権利が設定または移転された場合, 3条の許可は不要であるが,遅滞なく,農地・採草放牧地のある市町村の農業委員会に,その旨の届出をしなければならない(農地法3条1項12号,16号)

3.「土地改良法による交換分合によって,農地の所有権を取得する場合には,許可を必要としない。」(改)

【正解:

◆土地改良法による交換分合は3条による許可は不要

 土地改良法,農業振興地域の整備に関する法律,集落整備法,市民農園整備促進法による交換分合によって権利が設定・移転される場合は,農地法第3条の許可は不要です。(農地法3条1項6号)

●原題
3.「土地収用法による交換分合によって,農地の所有権を取得する場合には,許可を必要としない。」

4.「非農家〔サラリーマン〕が,家庭菜園の利用に供するために,20平方メートルの農地の賃借権を取得しようとする場合には,許可を受けることはできない。」

【正解:対比・平成4年問26肢4

◆3条不許可の要件

 農業委員会〔権利を取得しようとする者の住所地以外の農地では都道府県知事〕は,権利を取得しようとする者又はその世帯員がその取得後において耕作又は養畜の事業を行うと認められない場合(農地法3条2項1号)必要な農作業に常時従事すると認められない場合(農地法3条2項4号)は3条の許可をすることができません。

 また,権利を取得しようとする農地または採草放牧地の合計面積が50アール〔北海道では,2ha。〕に達しない場合も3条の許可をすることができません。〔面積要件について都道府県知事は,農林水産省令で定める基準に従い,この範囲内で別段の面積を定めることができる。〕(農地法3条2項5号)

 本肢では,農地を賃借して単に家庭菜園として利用するのみなので,農地法第3条の許可を受けることはできません。

家庭菜園は農地ではないため,家庭菜園利用のための農地の賃借権設定では農地法5条の許可が必要になります。この場合,農地を農地以外に転用する権利移動になるからです。


●農地法の過去問Archives
昭和60年,昭和61年,昭和62年昭和63年平成元年平成2年平成3年平成4年平成5年平成6年平成7年平成8年平成9年平成10年平成11年平成12年
平成13年平成14年平成15年平成16年平成17年平成18年平成19年平成20年平成21年

●農地法の昭和の過去問Archives
昭和55年昭和56年昭和57年昭和58年昭和59年昭和60年・昭和61年・昭和62年

過去問アーカイブス・法令制限に戻る 宅建1000本ノック・農地法に戻る

宅建過去問に戻る  宅建1000本ノック・法令上の制限に戻る