法令上の制限 実戦篇

農地法の過去問アーカイブス 平成10年・問24 


市街化区域外にある農地に関する次の記述のうち,農地法の規定によれば正しいものはどれか。 (平成10年・問24)

1.「農地を転用するため買い受ける場合は,農地法第3条の権利移動許可と同法第4条の農地転用許可の両方の許可を受ける必要がある。」

2.「農地を一時的に資材置場に転用する場合は,あらかじめ農業委員会に届出をすれば,農地法第4条又は同法第5条の許可を受ける必要がない。

3.「自己所有の農地5へクタールを豚舎用地に転用する場合は,農地法第4条により都道府県知事の許可を受ける必要がある。」

4.「相続した農地を遺産分割する場合は,農地法第3条の許可を受ける必要がない。」

●市街化区域外の農地・採草放牧地−許可(3条,4条,5条)
 耕作目的で農地の権利の設定・移転

 採草放牧地の権利の設定・移転〔農地転用を含む〕

農業委員会許可
 農地の自己転用 4ha超=農林水産大臣許可

4ha以下=都道府県知事許可

 転用目的で農地・採草放牧地の権利の設定・移転 農地4ha超=農林水産大臣許可
農地4ha以下=都道府県知事許可

採草放牧地のみ都道府県知事許可
         〔面積によらず〕

【正解】

× × ×

1.「農地を転用するため買い受ける場合は,農地法第3条の権利移動許可と同法第4条の農地転用許可の両方の許可を受ける必要がある。」

【正解:×

◆転用のための農地の取得は5条の許可のみを受ければよい

 農地を転用するため買い受ける場合は,農地法5条の許可のみを受ければよいので,本肢は×です。

2.「農地を一時的に資材置場に転用する場合は,あらかじめ農業委員会に届出をすれば,農地法第4条又は同法第5条の許可を受ける必要がない。

【正解:×昭和60年,平成5年,6年,8年,10年,14年

◆一時的な転用

 一時的なものであっても農地を転用するならば農地法の許可が必要です。市街化区域内ならば,面積に関係なく農業委員会への届出ですみますが,問題文では<市街化区域外>になっているので,原則で考えます。

 自己転用の場合〔農家が資材置場に使う〕は農地法4条の許可,転用のための権利の設定の場合〔農地の所有者以外の第三者が資材置場に使う〕は農地法5条の許可を受けなければなりません。⇒ 都道府県知事or農林水産大臣の許可(4ha超は農林水産大臣)

 使用貸借  建設会社の現場事務所  昭和60年
 賃貸借  資材置場  平成5年,6年,10年,14年
 臨時駐車場  平成8年

3.「自己所有の農地5へクタールを豚舎用地に転用する場合は,農地法第4条により都道府県知事の許可を受ける必要がある。」

【正解:×

◆自己転用

 4へクタールを超える農地の自己転用は,市街化区域外では農林水産大臣の許可が必要です。都道府県知事の許可ではありません。

●農地の自己転用(農地法4条)
 市街化区域外  4ha超=農林水産大臣許可
 4ha以下=都道府県知事許可
 市街化区域内  【特例】面積によらず,農業委員会への届出

採草放牧地の自己転用では農地法4条の許可は不要。採草放牧地→農地に転用するための権利の移転・設定は農地法3条の許可になる。

4.「相続した農地を遺産分割する場合は,農地法第3条の許可を受ける必要がない。」

【正解:昭和61年,平成3年,平成8年,平成10年,平成15年

◆遺産分割

 遺産の分割,離婚での財産分与に関する裁判・調停,相続財産の分与に関する裁判によって権利が設定・移転されるときには,農地法3条による許可は不要です。(3条1項12号)

農地法3条の3 (農地又は採草放牧地についての権利取得の届出)
 相続包括遺贈遺産分割(離婚・婚姻取消しに伴う)財産の分与に関する裁判・調停(特別縁故者に対する)相続財産の分与に関する裁判によって,権利が設定または移転された場合, 3条の許可は不要であるが,遅滞なく,農地・採草放牧地のある市町村の農業委員会に,その旨の届出をしなければならない(農地法3条1項12号,16号)

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