税法その他 実戦篇

所得税の過去問アーカイブス 平成3年・問29


土地等又は建物等を譲渡した場合の譲渡所得の課税に関する次の記述のうち,正しいものはどれか。(平成3年・問29)

1.「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円特別控除の適用を受ける場合であっても,その譲渡した年の1月1日における居住用財産の所有期間が10年を超えるときは,3,000万円の特別控除を控除した後の長期譲渡所得については,居住用財産を譲渡した場合の軽減税率の特例の適用を受けることができる。」

2.「居住用財産の買換えの場合の長期譲渡所得の課税の特例の適用を受ける場合において,その譲渡資産の譲渡による収入金額がその買換資産の取得価額を超えているときは,その超える金額に相当する部分については,居住用財産を譲渡した場合の軽減税率の特例の適用を受けることができる。」

3.「収用交換等の場合の5,000万円特別控除の適用を受ける場合には,その譲渡した土地等の所有期間がその年の1月1日において5年を超えるときであれば,5,000万円の特別控除を控除した後の長期譲渡所得については,優良住宅地の造成等のために土地等を譲渡した場合の軽減税率の特例の適用を受けることができる。」

4.「収用等に伴い代替資産を取得した場合の課税の特例の適用を受ける場合において,その対価の額がその代替資産の取得価額を超えるときは,その超える部分については,その資産〔土地等〕の所有期間が何年であるかを問わず,優良住宅地の造成等のために土地等を譲渡した場合の軽減税率の特例の適用を受けることができる。」

【正解】

× × ×

1.「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円特別控除の適用を受ける場合であっても,その譲渡した年の1月1日における居住用財産の所有期間が10年を超えるときは,3,000万円の特別控除を控除した後の長期譲渡所得については,居住用財産を譲渡した場合の軽減税率の特例の適用を受けることができる。」

【正解:

◆3,000万円特別控除+10年超の居住用財産の軽減税率

 居住用財産を譲渡したときの3,000万円の特別控除は,所有期間の長短を問わず,適用することができます。

 3,000万円の特別控除後の譲渡所得に対して,譲渡年の1月1日における所有期間に応じて,該当する税率が適用されることになります。

 5年以内  短期譲渡所得  30%
 5年超〜10年以内  長期譲渡所得  15%
 10年超  居住用財産の軽減税率  6,000万円以下の部分 10%
 6,000万円超の部分 15%

2.「居住用財産の買換えの場合の長期譲渡所得の課税の特例の適用を受ける場合において,その譲渡資産の譲渡による収入金額がその買換資産の取得価額を超えているときは,その超える金額に相当する部分については,居住用財産を譲渡した場合の軽減税率の特例の適用を受けることができる。」

【正解:×平成3年,8年,12年

◆特定の居住用財産の買換えの適用を受けると,所有期間10年超の居住用財産の軽減税率は適用されない

 『特定の居住用財産の買換えの場合の長期譲渡所得の課税の特例』の適用を受けるときには,居住用財産を譲渡した場合の軽減税率の特例の適用を受けることはできません。(31条の3第1項)

 したがって,本肢は×です。

所有期間10年超の居住用財産の譲渡に対する軽減税率との重複適用

 居住用財産の譲渡所得の特別控除〔3,000万円〕  
 収用交換等の場合の譲渡所得の特別控除〔5,000万円〕  
 収用等に伴い代替資産を取得した場合の課税の特例  ×
 特定の居住用財産の買換え・交換の場合の課税の特例  ×

問題文中の『その譲渡資産の譲渡による収入金額がその買換資産の取得価額を超えているときは,その超える金額に相当する部分については,』というのはブラフです。

3.「収用交換等の場合の5,000万円特別控除の適用を受ける場合には,その譲渡した土地等の所有期間がその年の1月1日において5年を超えるときであれば,5,000万円の特別控除を控除した後の長期譲渡所得については,優良住宅地の造成等のために土地等を譲渡した場合の軽減税率の特例の適用を受けることができる。」

【正解:×平成3年,7年,10年

◆「収用交換等の5,000万円特別控除」と「優良住宅地の造成等の軽減税率」は重複適用できない。

 『優良住宅地の造成等のために土地等を譲渡した場合の軽減税率』は,以下と重複適用することはできない。(租税特別措置法31条の2第1項)(平成16年法改正による。)

 居住用財産の譲渡所得の特別控除〔3,000万円〕  ×
 収用交換等の場合の譲渡所得の特別控除〔5,000万円〕  ×
 収用等に伴い代替資産を取得した場合の課税の特例  ×
 特定の居住用財産の買換え・交換の場合の課税の特例  ×
 相続等により取得した居住用財産の買換え・交換の場合の課税の特例  ×

4.「収用等に伴い代替資産を取得した場合の課税の特例の適用を受ける場合において,その対価の額がその代替資産の取得価額を超えるときは,その超える部分については,その資産〔土地等〕の所有期間が何年であるかを問わず,優良住宅地の造成等のために土地等を譲渡した場合の軽減率の特例の適用を受けることができる。」

【正解:×

◆「収用等に伴い代替資産を取得した場合の課税の特例」と「優良住宅地の造成等の軽減税率」は重複適用できない。

 『優良住宅地の造成等のために土地等を譲渡した場合の軽減税率』は,以下と重複適用することはできない。(租税特別措置法31条の2第1項)

 居住用財産の譲渡所得の特別控除〔3,000万円〕  ×
 収用交換等の場合の譲渡所得の特別控除〔5,000万円〕  ×
 収用等に伴い代替資産を取得した場合の課税の特例  ×
 特定の居住用財産の買換え・交換の場合の課税の特例  ×

問題文中の『その対価の額がその代替資産の取得価額を超えるときは,その超える部分については,』というのはブラフです。

問題文中の『その資産〔土地等〕の所有期間が何年であるかを問わず,優良住宅地の造成等のために土地等を譲渡した場合の軽減率の特例の適用を受けることができる。』という部分もおかしな点です。優良住宅地の造成等の軽減税率は「所有期間5年超」の長期譲渡所得に対する軽減税率です。

税率の比較

 5年以内  短期譲渡所得  30%
 5年超〜10年以内  長期譲渡所得  15%
 5年超〜10年以内  優良住宅地の造成等の
 ための譲渡の軽減税率
 2,000万円以下の部分 10%
 2,000万円超の部分 15%
 10年超  居住用財産の軽減税率  6,000万円以下の部分 10%
 6,000万円超の部分 15%

●収用等に伴い代替資産を取得した場合の課税の特例 (課税の繰延べ)
 個人の有する資産が収用権が認められている事業のために収用され,代替資産を取得又は取得する見込みのときは,納税者の選択により,『収用交換等の場合の5,000万円の特別控除』か,『収用等に伴い代替資産を取得した場合の課税の特例(課税の繰延べ)』のうちのどちらかの適用を受けることができます。

収用等に伴い代替資産を取得した場合の課税の特例(課税の繰延べ)

・収用等により取得した補償金等の額が代替資産の取得価額〔又は見積り額〕以下のときは,譲渡した資産の譲渡がなかったものとされ,課税されません。

・収用等により取得した補償金等の額が代替資産の取得価額〔又は見積り額〕を超えるときは,その超える部分のみ譲渡があったものとされ,課税されます。


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