税法その他 実戦篇

所得税の過去問アーカイブス 昭和60年・問28


税法上の特例措置に関する次の記述のうち,誤っているものはどれか。(昭和60年・問28)

1.「居住用財産の譲渡所得の特別控除〔3,000万円〕は,短期譲渡所得であっても適用される。」

2.「住宅金融公庫から借入金に係る返済額についても,一定の要件のもとで,住宅取得控除が適用される。」

3.「優良住宅地の造成等のために土地等を譲渡した場合の税率の軽減措置は,短期譲渡所得にも適用される。」

4.「いわゆる中古住宅を取得する場合でも,一定の要件のもとで,住宅取得資金の贈与を受けた場合の相続時精算課税の特例が適用される。」

【正解】

×

原題は「正しいものはどれか」でしたが,その後の法改正により×の肢が○になったものがあるため〔肢2,肢4〕,「誤っているものはどれか」に問題設定を変えてあります。

●住宅ローン控除
 住宅ローン控除についは,下記のページをご覧ください。
 <合計所得金額  3,000万円以下>が適用要件になっていることに注意。

 住宅ローン減税制度の概要 (財務省)    住宅ローン減税と譲渡所得の損益通算・繰越控除 (PDF)

1.「居住用財産の譲渡所得の特別控除〔3,000万円〕は,短期譲渡所得であっても適用される。」

【正解:昭和55年,60年,平成8年

◆3,000万円特別控除に保有期間の要件はない

 居住用財産の譲渡所得の特別控除〔3,000万円特別控除〕は,短期譲渡所得〔所有期間5年以下〕,長期譲渡所得〔所有期間5年超〕の区別なく,どちらにも適用される。(租税特別措置法・35条1項)

2.「住宅金融公庫から借入金に係る返済額についても,一定の要件のもとで,住宅取得控除が適用される。」

【正解:

◆住宅金融公庫からの借入金

 現在では,住宅金融公庫からの借入金に係る返済額について住宅取得控除が適用できないのはおかしいと思うかもしれませんが,実はこの規定は昭和61年の改正で取り入れられたものです。それまでは,住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除は,原則として,銀行などの民間金融機関からの借入金に限り適用されていたのでした。(租税特別措置法・41条1項)

昭和60年の出題当時は×の設定でした。

現在では,住宅金融公庫は廃止されているため,演習する必要はありません。

3.「優良住宅地の造成等のために土地等を譲渡した場合の税率の軽減措置は,短期譲渡所得にも適用される。」

【正解:×

◆優良住宅地造成等のための譲渡の場合の軽減税率は所有期間5年超

 優良住宅地の造成等のために土地等を譲渡した場合の税率の軽減措置は,譲渡年の1月1日での所有期間5年超,つまり,長期譲渡所得に対して適用されるので,本肢は×です。〔平成20年12月31日までの譲渡に適用されます。〕

 5年以内  短期譲渡所得  30%
 5年超〜10年以内  長期譲渡所得  15%
 5年超〜10年以内  優良住宅地の造成等の
 ための譲渡の軽減税率
 2,000万円以下の部分 10%
 2,000万円超の部分 15%
 10年超  居住用財産の軽減税率  6,000万円以下の部分 10%
 6,000万円超の部分 15%

平成16年の法改正により, 優良住宅地の造成等のために土地等を譲渡した場合の税率の軽減措置は,4,000万円の前後による区分が2,000万円の前後による区分に変わったので注意してください。

4.「いわゆる中古住宅を取得する場合でも,一定の要件のもとで,住宅取得資金の贈与を受けた場合の相続時精算課税の特例が適用される。」

【正解:平成6年

◆中古住宅で政令で定めるものの取得にも適用される

 建築後使用されたことのある住宅用家屋でも政令で定めるものの取得については,住宅取得資金の贈与を受けた場合の贈与税額の計算の特例が適用されます(租税特別措置法・70条の3の2第3項3号,施行令40条の5・第2項・2号,3号)

・家屋の床面積の1/2以上が居住の用に供される

・居住部分の床面積が50平方メートル以上

・耐火建築物以外の家屋=取得の日以前20年以内に建築されたもの

 <平成17年の改正により,「地震に対する安全上必要な構造方法に関する技術的基準又はこれに準ずるものに適合する一定の既存住宅」が追加された。>

・耐火建築物の家屋=取得の日以前25年以内に建築されたもの


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