税法その他 実戦篇

所得税の過去問アーカイブス 平成10年・問27


個人が平成19年中に平成19年1月1日において所有期間が11年である土地を譲渡した場合の譲渡所得の課税に関する次の記述のうち,正しいものはどれか。(平成10年・問27)

1.「土地が収用事業のために買い取られた場合において,収用交換等の場合の5,000 万円特別控除の適用を受けるときは,特別控除後の譲渡益について優良住宅地の造成等のために土地等を譲渡した場合の軽減税率の特例の適用を受けることができる。」

2.「土地が収用事業のために買い取られた場合において,収用交換等の場合の5,000 万円特別控除の適用を受けるときでも,その土地が居住用財産に該当するなど所定の要件を満たせば,特別控除後の譲渡益について居住用財産を譲渡した場合の軽減税率の特例の適用を受けることができる。」

3.「その土地が居住用財産に該当するなど所定の要件を満たせば,前々年に特定の居住用財産の買換えの場合の課税の特例の適用を受けているときでも,居住用財産を譲渡した場合の3,000万円特別控除の適用を受けることができる。」

4.「その土地が居住用財産に該当する場合であっても,居住用財産を譲渡した場合の3,000万円特別控除の適用を受けるときは,特別控除後の譲渡益について居住用財産を譲渡した場合の軽減税率の特例の適用を受けることができない。」

【正解】

× × ×

1.「土地が収用事業のために買い取られた場合において,収用交換等の場合の5,000 万円特別控除の適用を受けるときは,特別控除後の譲渡益について優良住宅地の造成等のために土地等を譲渡した場合の軽減税率の特例の適用を受けることができる。」

【正解:×平成3年,7年,10年

◆「収用交換等の5,000万円特別控除」と「優良住宅地の造成等の軽減税率」は重複適用できない。

 『優良住宅地の造成等のために土地等を譲渡した場合の軽減税率』は,以下と重複適用することはできない。(31条の2)

 居住用財産の譲渡所得の特別控除〔3,000万円〕  ×
 収用交換等の場合の譲渡所得の特別控除〔5,000万円〕  ×
 収用等に伴い代替資産を取得した場合の課税の特例  ×
 特定の居住用財産の買換え・交換の場合の課税の特例  ×

2.「土地が収用事業のために買い取られた場合において,収用交換等の場合の5,000 万円特別控除の適用を受けるときでも,その土地が居住用財産に該当するなど所定の要件を満たせば,特別控除後の譲渡益について居住用財産を譲渡した場合の軽減税率の特例の適用を受けることができる。」

【正解:平成7年,10年

◆「収用交換等の5,000万円特別控除」と居住用財産の譲渡の軽減税率

 収用交換等の場合の5,000 万円特別控除は,所有期間の長短を問わず,適用することができます。

 5,000万円の特別控除後の譲渡所得に対して,譲渡年の1月1日における所有期間に応じて,該当する税率が適用されることになります。

 したがって,居住用財産に該当するなど所定の要件を満たせば,5,000万円の特別控除後の譲渡益について居住用財産を譲渡した場合の軽減税率の特例の適用を受けることができます。

 5年以内  短期譲渡所得  30%
 5年超〜10年以内  長期譲渡所得  15%
 10年超  居住用財産の軽減税率  6,000万円以下の部分 10%
 6,000万円超の部分 15%

3.「その土地が居住用財産に該当するなど所定の要件を満たせば,前々年に特定の居住用財産の買換えの場合の課税の特例の適用を受けているときでも,居住用財産を譲渡した場合の3,000万円特別控除の適用を受けることができる。」

【正解:×昭和61年,平成10年

◆譲渡した前年,前々年

 3,000万円の特別控除は,譲渡した前年又は前々年に,『特定の居住用財産の買換えの場合の課税の特例』の適用を受けているときは,適用されません。(35条1項)

 したがって,本肢は×です。

●譲渡した前年又は前々年に,以下の適用を受けているときは,
3,000万円の特別控除は,適用されない。(35条1項)
・3,000万円の特別控除→昭和61年出題
・特定の居住用財産の買換えの課税の特例(36条の2)→平成10年出題
・居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除(41条の5)
・特定居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除(41条の5の2)

盲点と対比

 譲渡した前年又は前々年に

 ・居住用財産を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例(軽減税率)(31条の3)

の適用を受けていても,3,000万円特別控除の適用を受けることができる。

 ⇔ 特定の居住用財産の買換え・交換の課税の特例(36条の2)

 譲渡した年,前年又は前々年に『居住用財産を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例』(軽減税率)の適用を受けていると,『特定の居住用財産の買換えの課税の特例』の適用を受けることができない。〕

●対策としてのヒント

 「3,000万円特別控除」と「居住用財産の譲渡の場合の軽減税率」は重複適用できますが,「特定の居住用財産の買換えの課税の特例」と「居住用財産の譲渡の場合の軽減税率」は重複適用できないので,このことと合わせて覚えておけば対策としては十分です。

4.「その土地が居住用財産に該当する場合であっても,居住用財産を譲渡した場合の3,000万円特別控除の適用を受けるときは,特別控除後の譲渡益について居住用財産を譲渡した場合の軽減税率の特例の適用を受けることができない。」

【正解:×平成3年,8年,10年,12年,15年

◆3,000万円特別控除+10年超の居住用財産の軽減税率

 居住用財産を譲渡したときの3,000万円の特別控除は,所有期間の長短を問わず,適用することができます。

 3,000万円の特別控除後の譲渡所得に対して,譲渡年の1月1日における所有期間に応じて,該当する税率が適用されることになります。

 5年以内  短期譲渡所得  30%
 5年超〜10年以内  長期譲渡所得  15%
 10年超  居住用財産の軽減税率  6,000万円以下の部分 10%
 6,000万円超の部分 15%

 したがって,本肢は「3,000万円特別控除の適用を受けるときには,居住用財産を譲渡した場合の軽減税率の特例の適用を受けることはできない」としているので×です。


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