税法その他 実戦篇

所得税の過去問アーカイブス 平成12年・問26 居住用財産の譲渡の場合の軽減税率

(居住用財産を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例)


個人が,平成19年中に,平成19年1月1日において所有期間が10年を超える家屋を譲渡した場合において,居住用財産を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例 (以下この問において「軽減税率の特例」という。) に関する次の記述のうち,正しいものはどれか。(平成12年・問26)

1.「その家屋を火災により滅失した場合を除き,その家屋を譲渡する直前まで自己の居住の用に供していなければ,軽減税率の特例の適用を受けることができない。」

2.「その家屋の譲渡について居住用財産を譲渡した場合の3,000万円特別控除の適用を受けるときは,3,000万円特別控除後の譲渡益について軽減税率の特例の適用を受けることができない。」

3.「その家屋の譲渡について特定の居住用財産の買換えの特例の適用を受ける場合は,譲渡があったものとされる部分の譲渡益があるときであっても,その譲渡益について軽減税率の特例の適用を受けることができない。」

4.「その家屋以外に自己の居住の用に供している家屋 (所有期間10年超) を有しており,これらの家屋を同一年中に譲渡した場合には,いずれの家屋の譲渡についても軽減税率の特例の適用を受けることができる。」

【正解】

× × ×

1.「その家屋を火災により滅失した場合を除き,その家屋を譲渡する直前まで自己の居住の用に供していなければ,軽減税率の特例の適用を受けることができない。」

【正解:×

◆家屋の譲渡に軽減税率が適用されるには,『居住要件』がある

 譲渡した年の1月1日での所有期間が10年超である居住用財産を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例〔「軽減税率の特例」〕の適用は,居住用財産のうちの家屋があるまま譲渡された場合は,

・『譲渡するまで当該個人がその家屋に居住していた』か,

・『当該個人の居住の用に供されなくなった日から同日以後3年を経過する日の属する年の12月31日までの間に譲渡されるもの』

 のどちらかを満たしていればよいので,「火災により滅失した場合を除き,その家屋を譲渡する直前まで自己の居住の用に供していなければ,軽減税率の特例の適用を受けることができない」とする本肢は×です。

 自己の居住の用に
 供さなくなった日       3年間経過    その年の12月31日

 ――――――――――――――――――――――――

    |←  譲渡がこの間にあればよい       →|      

最近,譲渡資産にいつまで居住していたかを尋ねる肢が目立つ。

居住用財産の軽減税率の適用のための家屋の居住要件(平成12年)

特定の居住用財産の買換えの特例適用のための譲渡資産の要件(平成14年)

居住用財産の譲渡所得の3,000万円特別控除(平成15年)

2.「その家屋の譲渡について居住用財産を譲渡した場合の3,000万円特別控除の適用を受けるときは,3,000万円特別控除後の譲渡益について軽減税率の特例の適用を受けることができない。」

【正解:×平成3年,8年,10年,12年,15年

◆3,000万円特別控除+10年超の居住用財産の軽減税率

 居住用財産を譲渡したときの3,000万円の特別控除は,所有期間の長短を問わず,適用することができます。

 3,000万円の特別控除後の譲渡所得に対して,譲渡年の1月1日における所有期間に応じて,該当する税率が適用されることになります。

 5年以内  短期譲渡所得  30%
 5年超〜10年以内  長期譲渡所得  15%
 10年超  居住用財産の軽減税率  6,000万円以下の部分 10%
 6,000万円超の部分 15%

 したがって,「3,000万円特別控除後の譲渡益について軽減税率の特例の適用を受けることができない」とする本肢は×です。

3.「その家屋の譲渡について特定の居住用財産の買換えの特例の適用を受ける場合は,譲渡があったものとされる部分の譲渡益があるときであっても,その譲渡益について軽減税率の特例の適用を受けることができない。」

【正解:平成3年,8年,12年

◆特定の居住用財産の買換えの適用を受けると,所有期間10年超の居住用財産の軽減税率は適用されない

 『特定の居住用財産の買換えの場合の長期譲渡所得の課税の特例』の適用を受けるときには,居住用財産を譲渡した場合の軽減税率の特例の適用を受けることはできません。(31条の3第1項)

所有期間10年超の居住用財産の譲渡に対する軽減税率との重複適用

 居住用財産の譲渡所得の特別控除〔3,000万円〕  
 収用交換等の場合の譲渡所得の特別控除〔5,000万円〕  
 収用等に伴い代替資産を取得した場合の課税の特例  ×
 特定の居住用財産の買換えの場合の課税の特例  ×

4.「その家屋以外に自己の居住の用に供している家屋 (所有期間10年超) を有しており,これらの家屋を同一年中に譲渡した場合には,いずれの家屋の譲渡についても軽減税率の特例の適用を受けることができる。」

【正解:×

◆2以上の場合は一つのみに適用される

 軽減税率の特例は,所有期間10年超の居住用の家屋が2以上ある場合は,主としてその居住の用に供せられていると認められる一の家屋に限って適用されます。(施行令20条の3第2項)

 したがって,「いずれの家屋の譲渡についても軽減税率の特例の適用を受けることができる」とする本肢は×です。


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(註) *のマークは,ワンポイントの出題,は居住用財産の譲渡の軽減税率を主な出題テーマとするものです。

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