税法その他 実戦篇

所得税の過去問アーカイブス 昭和61年・問30 

3,000万円の特別控除 (居住用財産の譲渡所得の特別控除)


居住用財産を譲渡した場合の譲渡所得の課税の特例に関する次の記述のうち,正しいものはどれか。(昭和61年・問30)

1.「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円特別控除は,居住用財産をその者が100パーセント出資している会社に譲渡した場合には適用されない。」

2.「居住用財産が収用等された場合には,居住用財産を譲渡した場合の特別控除3,000万円と収用交換等の場合の特別控除5,000万円との合計額8,000万円が特別控除として控除される。」

3.「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円特別控除は,その譲渡をした年前5年内にこの特別控除の適用を受けたことがある場合には適用されない。」

4.「特定の居住用財産の買換えの場合の課税の特例は,その居住用財産の所有期間が10年以下の場合であっても適用される。」

【正解】

× × ×

1.「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円特別控除は,居住用財産をその者が100パーセント出資している会社に譲渡した場合には適用されない。」

【正解:昭和61年,平成6年,15年

◆当該個人と特別な関係にある者に対する譲渡には適用されない

 3,000万円特別控除は,当該個人と政令で定める特別な関係にある者に対する譲渡には適用されないことになっています。(租税特別措置法35条1項,施行令23条2項,同20条の3第1項)

●当該個人と政令で定める特別な関係にある者
・配偶者及び直系血族・親族で生計を一にする者

・内縁関係にある者及びその親族で生計を一にする者

・当該個人から受ける金銭その他の財産によって生計を維持している者及びその者の親族で生計を一にしている者

・譲渡者や上記の人を基礎に判定した場合の同族会社や同族法人 ←本肢のケース

以下の特例も政令で定める特別な関係にある者に対する譲渡に対しては適用されないので注意してください。

・居住用財産を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例〔軽減税率〕(31条の3)

・特定の居住用財産の買換え及び交換の場合の長期譲渡所得の課税の特例(36条の6)

2.「居住用財産が収用等された場合には,居住用財産を譲渡した場合の特別控除3,000万円と収用交換等の場合の特別控除5,000万円との合計額8,000万円が特別控除として控除される。」

【正解:×昭和61年,平成元年,4年,

◆収用交換等の5,000万円特別控除と重複適用はできない

 収用交換等の場合の譲渡所得の5,000万円特別控除収用等に伴い代替資産を取得した場合の課税の特例の適用を受けるときは,3,000万円の特別控除を受けることはできません。(35条1項括弧書き)

 したがって,「合計額8,000万円が控除される」とする本肢は×です。

居住用財産の譲渡所得の3000万円控除 重畳適用一覧
短期譲渡所得・5年以内・30%  ○ 
長期譲渡所得・5年超・15%  ○ 
居住用財産譲渡の軽減税率・10年超保有・10% and 15%  
優良住宅地の造成の軽減税率・5年超・10% and 15%  ×
収用交換等の場合の5,000万円控除  ×

収用等に伴い代替資産を取得した場合の課税の特例

 ×
居住用財産の買い換え特例(特定)  ×
新住宅ローン減税  ×

住宅ローンのある住宅に居住した年又はその年の前年・前々年・翌年・翌々年に,3,000万円特別控除・所有期間10年超の居住用財産の軽減税率・居住用財産の買換え交換の課税の特例の適用を受けると,新住宅ローン減税は適用されません。〔平成9年出題〕⇒収用交換等の場合の5,000万円特別控除の適用を受ける場合では,住宅ローン減税の適用を受けることができます。〔平成9年出題〕

        住宅ローンのある住宅に入居した年

 ――――――――――――――――――――――――

    |← 前々年・前年・入居年・翌年・翌々年  →|      

3.「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円特別控除は,その譲渡をした年前5年内にこの特別控除の適用を受けたことがある場合には適用されない。」

【正解:×昭和61年,平成10年

◆譲渡した前年,前々年

 3,000万円の特別控除は,譲渡した前年又は前々年に,この特別控除の適用を受けているときは,適用されません。(35条1項)

 したがって「譲渡をした年前5年内にこの特別控除の適用を受けたことがある場合には適用されない」とする本肢は×です。

●譲渡した前年又は前々年に,以下の適用を受けているときは,
3,000万円の特別控除は,適用されない。(35条1項)
・3,000万円の特別控除→昭和61年出題
・特定の居住用財産の買換え・交換の課税の特例(36条の6)→平成10年出題
・居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除(41条の5)
・特定居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除(41条の5の2)

盲点と対比

 譲渡した前年又は前々年に

 ・居住用財産を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例(軽減税率)(31条の3)

の適用を受けていても,3,000万円特別控除の適用を受けることができる。

 ⇔ 特定の居住用財産の買換えの課税の特例(36条の2)

 譲渡した年,前年又は前々年に『居住用財産を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例』(軽減税率)の適用を受けていると,『特定の居住用財産の買換えの課税の特例』の適用を受けることができない。〕

●対策としてのヒント

 「3,000万円特別控除」と「居住用財産の譲渡の場合の軽減税率」は重複適用できますが,「特定の居住用財産の買換えの課税の特例」と「居住用財産の譲渡の場合の軽減税率」は重複適用できないので,このことと合わせて覚えておけば対策としては十分です。

4.「特定の居住用財産の買換えの場合の課税の特例は,その居住用財産の所有期間が10年以下の場合であっても適用される。」

【正解:×昭和57年,61年,平成5年,14年

◆特定の居住用財産の買換えの課税の特例は所有期間10年超

 特定の居住用財産の買換えの場合の課税の特例(36条の2)では,譲渡した年の1月1日での譲渡資産の所有期間10年超が要件です。

 したがって,「所有期間が10年以下の場合であっても適用される」とする本肢は×です。

譲渡資産の要件

  特定の居住用財産(36条の2)
所有期間  10年超
本人の居住期間  10年以上

譲渡した年の1月1日で『所有期間10年,かつ,居住期間10年』では,この特例は適用されないことに注意。→平成元年出題


●宅建過去問Up-To-Date 3,000万円特別控除  〜検索用〜 
*昭和57年問31*昭和60年問28昭和61年問30,*平成元年問29*平成2年問29*平成3年問29平成4年問28*平成6年問29*平成8年問28*平成9年問27*平成10年問27*平成12年問26平成15年問26

(註) *のマークは,ワンポイントの出題,は3,000万円特別控除を主な出題テーマとするものです。

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