税法その他 実戦篇

所得税の過去問アーカイブス 昭和62年・問29

住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除


住宅を取得した場合の所得税額の特別控除〔住宅ローン控除〕に関する次の記述のうち,正しいものはどれか。(昭和62年・問29)

1.「住宅を取得した場合の所得税額の特別控除は,控除の適用を受けようとする者のその年分の合計金額が3,000万円を超える場合には,その超える年分の所得税については控除を受けることができない。」

2.「住宅を取得した場合の所得税額の特別控除の対象となる家屋は,自ら新築をした居住用家屋及び他から購入した建築後使用されたことのない居住用家屋である。」

3.「住宅を取得した場合の所得税額の特別控除の対象となる借入金又は債務の額が4,000万円を超える場合には,そのすべてについて控除の適用はない。」

4.「給与所得者については,あらかじめ税務署長の承認を受けたときは,年末調整で,最初に控除を受けようとする年分の所得税額から住宅を取得した場合の所得税額の特別控除の適用を受けることができる。」

【正解】

× × ×

●住宅ローン控除
 住宅ローン控除についは,下記のページをご覧ください。
 <合計所得金額  3,000万円以下>が適用要件になっていることに注意。

 住宅ローン減税制度の概要 (財務省)    住宅ローン減税と譲渡所得の損益通算・繰越控除 (PDF)

1.「住宅を取得した場合の所得税額の特別控除は,控除の適用を受けようとする者のその年分の合計金額が3,000万円を超える場合には,その超える年分の所得税については控除を受けることができない。」

【正解:

◆合計所得が3,000万円以内

 控除の適用を受けようとする者のその年分の合計金額が3,000万円を超える場合には,その超える年分の所得税については控除を受けることができません。(租税特別措置法・41条の2第1項)

2.「住宅を取得した場合の所得税額の特別控除の対象となる家屋は,自ら新築をした居住用家屋及び他から購入した建築後使用されたことのない居住用家屋である。」

【正解:×

◆控除対象

 住宅<床面積50平方メートル以上>を取得した場合の所得税額の特別控除の対象は,

・『自ら新築をした居住用家屋』の取得

・『他から購入した建築後使用されたことのない居住用家屋』の取得

・『建築後使用されたことのある住宅用家屋〔既存住宅〕で政令で定めるもの』の取得

・『その者の居住の用に供している家屋で政令で定めるもの』の増改築〔一工事100万以上〕

です。(租税特別措置法・41条第1項,施行令26条)

 自ら建築,他から購入した新築住宅のほかに,既存住宅や増改築の場合でも適用されるので,本肢は誤りです。

建築後使用されたことのある住宅用家屋〔既存住宅〕で政令で定めるもの

(租税特別措置法・施行令26条2項)

・家屋の床面積の1/2以上が居住の用に供される〔新築住宅でも同じ〕

・居住部分の床面積が50平方メートル以上〔新築住宅でも同じ〕

・耐火建築物以外の家屋=取得の日以前20年以内に建築されたもの

 <17年改正により,「地震に対する安全上必要な構造方法に関する技術的基準又はこれに準ずるものに適合する一定の既存住宅」が追加>

・耐火建築物の家屋=取得の日以前25年以内に建築されたもの

・その者が居住の用に供する家屋を2以上有するときは,主としてその居住の用に供すると認められる一の家屋に限る。

3.「住宅を取得した場合の所得税額の特別控除の対象となる借入金又は債務の額が4,000万円を超える場合には,そのすべてについて控除の適用はない。」

【正解:×昭和59年,62年

住宅借入金残高が4,000万円を超える場合

  住宅借入金等特別税額控除額は,居住年が平成21年である場合は,12月31日における住宅借入金等の金額の合計額(当該合計額が4,000万円を超える場合には、4,000万円)1パーセントに相当する金額とされています。(租税特別措置法・41条2項3号)<従来制度の場合>

 (この借入金等の合計額は,民間金融機関や住宅金融公庫,地方公共団体その他当該資金の貸付けを行う政令で定める者などの公的機関からの借入金を合わせたものとされています。)

 したがって,<4,000万円を超える場合は40万円が控除される>のであり,<借入金又は債務の額が4,000万円を超える場合には,そのすべてについて控除の適用はない>とする本肢は×です。

注意

 『年末の住宅借入金残高が4,000万円以下の部分について適用される』という表現が使われることがありますが,<年末の住宅借入金残高が4,000万円以下の場合にのみ借入金残高の1%を控除でき,4,000万円を超える場合には適用されない>という意味ではありません。

 年末の住宅借入金残高が4,000万円以下・・・残高の1%を控除

 年末の住宅借入金残高が4,000万円超 ・・・一律に40万円を控除

 つまり,年末の住宅借入金残高が4,000万円超の場合には,4,000万円の1%に相当する金額40万円が控除されます。(年間の控除額の限度は40万円)

4.「給与所得者については,あらかじめ税務署長の承認を受けたときは,年末調整で,最初に控除を受けようとする年分の所得税額から住宅を取得した場合の所得税額の特別控除の適用を受けることができる。」

【正解:×

◆年末調整に係る住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除

 給与所得者が確定申告によって「住宅を取得した場合の所得税額の特別控除」の最初の適用を受けた年の翌年分以降は,あらかじめ所轄税務署長に一定の手続きをすることで,年末調整でこの控除の適用を受けることができます。(租税特別措置法・41条の2の2)

 したがって,最初に控除を受けようとする年分の所得税額から,年末調整で,住宅を取得した場合の所得税額の特別控除の適用を受けることができるのではありません。


●宅建過去問Up-To-Date 住宅ローン控除  〜検索用〜 
昭和59年問29*昭和60年問28昭和62年問29,平成9年問27平成11年問26

(註) *のマークは,ワンポイントの出題,は住宅ローン減税を主な出題テーマとするものです。

●所得税の宅建過去問Up-To-Date  〜検索用〜 
昭和57年問31昭和59年問29昭和60年問28昭和61年問30,昭和62年問29,昭和63年問29平成元年問29平成2年問29平成3年問29平成4年問28平成5年問28平成6年問29平成7年問29平成8年問28平成9年問27平成10年問27平成11年問26平成12年問26平成13年問26平成14年問26平成15年問26

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