税法その他 実戦篇
所得税の過去問アーカイブス 平成14年・問26
特定の居住用財産の買換えの場合の長期譲渡所得の課税の特例
租税特別措置法第36条の2の特定の居住用財産の買換えの場合の長期譲渡所得の課税の特例に関する次の記述のうち,正しいものはどれか。(平成14年・問26) |
1.「譲渡資産とされる家屋については,居住の用に供しているもの,又は居住の用に供されなくなった日から同日以後5年を経過する日の属する年の12月31日までに譲渡されるものであることが,適用条件となる。」 |
2.「譲渡資産とされる家屋については,その譲渡をした日の属する年の1月1日における所有期間が10年を超えるもののうち国内にあるものであることが,適用要件とされる。」 |
3.「買換え資産とされる家屋については,譲渡資産の譲渡をした日からその譲渡をした日の属する年の翌年12月31日までの間に取得することが,適用要件とされている。」 |
4.「買換え資産とされる家屋 (区分所有に係るものを除く) については,その床面積のうち自己が居住の用に供する部分の床面積が50平方メートル以上500平方メートル以下のものであることが,適用要件とされる。」 |
【正解】
1 | 2 | 3 | 4 |
× | ○ | × | × |
●特定の居住用財産の買換えの場合の長期譲渡所得の課税の特例 |
課税の繰り延べであることに注意。
・譲渡資産の譲渡による収入金額が買換資産の取得価額〔又は見積り額〕以下のときは,その譲渡がなかったものとみなされ,課税されません。 ⇒ 譲渡所得≦ 買換資産の取得価額 ・譲渡資産の譲渡による収入金額が買換資産の取得価額〔又は見積り額〕を超えるときは,その超える部分について資産の譲渡があったものとみなされ,取得価額の引継ぎによる課税の繰り延べになります。〔買換資産を将来譲渡するときには,買換資産の取得費は旧資産である譲渡資産の取得費を引き継ぐことになる。〕 ⇒ 譲渡所得>買換資産の取得価額 ・・・ 譲渡代金の一部で買い換えると,譲渡代金と取得価額の差額が長期譲渡所得として課税される。 |
1.「譲渡資産とされる家屋については,居住の用に供しているもの,又は居住の用に供されなくなった日から同日以後5年を経過する日の属する年の12月31日までに譲渡されるものであることが,適用条件となる。」 |
【正解:×】 ◆譲渡資産の要件−居住していた時期 譲渡資産とされる家屋については, ・『譲渡するまで当該個人がその家屋に居住していた』か, ・『当該個人の居住の用に供されなくなった日から同日以後3年を経過する日の属する年の12月31日までの間に譲渡されるもの』 のどちらかを満たしていればよいので,「居住の用に供しているもの,又は居住の用に供されなくなった日から同日以後5年を経過する日の属する年の12月31日までに譲渡されるもの」とする本肢は×です。(租税特別措置法・36条の2第1項) 自己の居住の用に ――●――――――――――●――――――――●―――― |← 譲渡がこの間にあればよい →| ●最近,譲渡資産にいつまで居住していたかを尋ねる肢が目立つ。 ・居住用財産の軽減税率の適用のための家屋の居住要件(平成12年) ・特定の居住用財産の買換えの特例適用のための譲渡資産の要件(平成14年) ・居住用財産の譲渡所得の3,000万円特別控除(平成15年) |
●譲渡した年,前年又は前々年に,以下の適用を受けているときは, 特定の居住用財産の買換・交換の課税の特例は,適用されない。(36条の6) |
・3,000万円の特別控除(35条) ・居住用財産を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例(軽減税率)(31条の3) ・居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除(41条の5), ・特定居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除(41条の5の2) |
●盲点と対比 譲渡した前年又は前々年に ・居住用財産を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例(軽減税率)(31条の3) の適用を受けていても,3,000万円特別控除(35条)の適用を受けることができる。 ⇔ 特定の居住用財産の買換え・交換の課税の特例(36条の2) 譲渡した年,前年又は前々年に『居住用財産を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例』(軽減税率)の適用を受けていると,『特定の居住用財産の買換えの課税の特例』の適用を受けることができない。〕
|
2.「譲渡資産とされる家屋については,その譲渡をした日の属する年の1月1日における所有期間が10年を超えるもののうち国内にあるものであることが,適用要件とされる。」 |
【正解:○】昭和57年,61年,平成5年,14年 ◆譲渡資産の要件−所有期間10年超,居住期間10年以上 特定の居住用財産の買換えの場合の課税の特例(36条の2)は,譲渡した年の1月1日での譲渡資産の所有期間10年超,居住期間10年以上が要件です。 ▼本肢でのブラフ 『所有期間が10年を超えるもののうち国内にあるものであること』にギョッとした人もいるかもしれませんが,条文ソノママの表現です。条文確認をしない人を引っ掛けようという魂胆から出題したものと思われます。条文ソノママなのになぜか迷わせるという宅建試験ではよくあるダマシの手口です。出題範囲全部の条文確認は時間的に不可能ですが,頻出事項については一応,条文を確認しておく必要があるでしょう。 ●譲渡資産の所有期間・居住期間の要件
▼譲渡した年の1月1日で『所有期間10年,かつ,居住期間10年』では,この特例は適用されないことに注意。→平成元年出題 |
3.「買換え資産とされる家屋については,譲渡資産の譲渡をした日からその譲渡をした日の属する年の翌年12月31日までの間に取得することが,適用要件とされている。」 |
【正解:×】平成5年 ◆買換資産の取得時期と入居時期の要件 文章ではわかりにくいので,図解で理解しましょう。平成5年問28肢4では,買換資産の取得時期のほかに入居時期についても尋ねています。 ■買換資産の取得時期 譲渡の前年 譲渡した年 譲渡した翌年 ■買換資産への入居時期 (i) 譲渡した年又はその前年中に買換資産を取得したとき ⇒ 譲渡した年の翌年まで 譲渡の前年 譲渡した年 譲渡した翌年 (ii) 譲渡した年の翌年中に買換資産を取得したとき ⇒ 譲渡した年の翌々年まで 譲渡の前年 譲渡した年 譲渡した翌年 譲渡した年の翌々年 |
4.「買換え資産とされる家屋 (区分所有に係るものを除く) については,その床面積のうち自己が居住の用に供する部分の床面積が50平方メートル以上500平方メートル以下のものであることが,適用要件とされる。」 |
【正解:×】平成5年 ◆買換資産の家屋と土地の面積要件 買換資産とされる家屋については,その居住の用に供する部分の床面積が50平方メートル以上(上限はない)※,買換資産とされる土地等については,その面積が500平方メートル以下〔下限はない〕のものであることが要件になっています。(租税特別措置法・施行令24条の2第3項1号イ,2号)
▼買換資産である家屋が耐火建築物である既存住宅の場合は,取得の日以前25年前に建築されたものであるか,一定の耐震基準に適合したものに限ることに注意。 ■国税庁タックスアンサー 特定の居住用財産の買換えの特例 |
●基本事項・居住用財産を買い換えた場合の課税の特例の選択 |
譲渡益があるとき → 以下の三つから選択する ・買換え特例 ※「収用交換等の5,000万円特別控除」や「代替資産取得の課税の繰り延べ」も 譲渡損があるとき → 以下の2つを併用できる。 ・住宅ローン控除 |
●宅建過去問Up-To-Date 買換え・交換の課税の特例 〜検索用〜 |
*昭和57年問31,*昭和59年問29,*昭和61年問30,*平成元年問29,*平成3年問29,□平成5年問28,*平成8年問28,*平成10年問27,*平成12年問26,□平成14年問26,
(註) *のマークは,ワンポイントの出題,□は買換・交換の課税の特例を主な出題テーマとするものです。 |
●所得税の宅建過去問Up-To-Date 〜検索用〜 |
昭和57年問31,昭和59年問29,昭和60年問28,昭和61年問30,昭和62年問29,昭和63年問29,平成元年問29,平成2年問29,平成3年問29,平成4年問28,平成5年問28,平成6年問29,平成7年問29,平成8年問28,平成9年問27,平成10年問27,平成11年問26,平成12年問26,平成13年問26,平成14年問26,平成15年問26 |