税法その他 実戦篇

所得税の過去問アーカイブス 昭和63年・問29


土地を譲渡した場合の譲渡所得の課税に関する次の記述のうち,正しいものはどれか。(昭和63年・問29)

1.「その年1月1日における所有期間が7年6ヵ月の土地を譲渡した場合の譲渡所得は,短期譲渡所得となる。」

2.「その譲渡の相手方が国や市町村である場合は,その年1月1日における所有期間が何年であるかを問わず,その譲渡所得は,長期譲渡所得に該当する。」

3.「その譲渡が土地収用法の収用事業の認定を受けた公共事業のために行われたものである場合には,無条件で5,000万円の特別控除が適用される。」

4.「その譲渡をした土地が昭和25年から所有していたものである場合には,譲渡所得金額の計算上収入金額から控除する取得費は,その譲渡による収入金額の5/100に相当する金額によることができる。」

【正解】

× × ×

1.「その年1月1日における所有期間が7年6ヵ月の土地を譲渡した場合の譲渡所得は,短期譲渡所得となる。」

【正解:×

◆5年超は長期譲渡所得

 その年1月1日における所有期間が7年6ヵ月→ 5年超なので,「長期譲渡所得」。

したがって,本肢は×

   譲渡年の1月1日での所有期間  税率
 短期譲渡所得  5年以内  30%
 長期譲渡所得  5年超〜  15%

2.「その譲渡の相手方が国や市町村である場合は,その年1月1日における所有期間が何年であるかを問わず,その譲渡所得は,長期譲渡所得に該当する。」

【正解:×

◆短期と長期の区別は,譲渡年の1月1日の所有期間

 「短期譲渡所得」と「長期譲渡所得」の区別は,譲渡の相手方で決まるのではなく,その年1月1日における所有期間で決まります。

混同注意5年以内の短期譲渡所得の税率30%の例外

 所有期間5年以内の土地や土地の上に存する権利を譲渡したのが以下の場合に該当するときは,税率30%ではなく,例外的に税率が15%になります。

(租税特別措置法32条3項,基本通達32-10,租税特別措置法・施行規則13条の5第1項,同11条1項1号〜3号)

・国又は地方公共団体に対する譲渡

・地域振興整備公団,地方住宅供給公社などに対する譲渡

・収用交換等による譲渡

 ・・・土地の面積が1,000平方メートル以上のときは適正価額以下である場合に限る

3.「その譲渡が土地収用法の収用事業の認定を受けた公共事業のために行われたものである場合には,無条件で5,000万円の特別控除が適用される。」

【正解:×

◆収用交換等の場合の5,000万円特別控除

 収用交換等の場合の5,000万円特別控除の特例の適用を受けるには,無条件ではありません。

●参考●【適用のための要件の例】・・・この他にも要件はありますが,代表的なものを見ておきましょう。

その年中の収用交換等により譲渡した資産のいずれについても,「収用等により代替資産を取得した場合の課税の特例」(33条)及び「交換処分等により資産を取得した場合の課税の特例」(33条の2)の適用を受けていないこと

収用交換等された資産について,公共事業施行者等から,最初に買取等の申出があった日から6ヵ月以内に譲渡したこと〔ただし,土地収用法の仲裁の申請が最初に買取等の申出があった日から6ヵ月以内にされたのであれば,その仲裁判断による譲渡が最初に買取等の申出があった日から6ヵ月を経過した後であっても適用される。〕

同一の事業について,2年以上にわたって譲渡した場合は,譲渡した資産のうち,最初の年に譲渡した資産に限られる〔最初の年に買い取られた分について5,000万円の特別控除の適用を受けていない場合でも,2年目以降の年に買い取られた分について,5,000万円の特別控除の適用を受けることはできない。〕

4.「その譲渡をした土地が昭和25年から所有していたものである場合には,譲渡所得金額の計算上収入金額から控除する取得費は,その譲渡による収入金額の5/100に相当する金額によることができる。」

【正解:

◆概算取得費控除の特例−5%

 原則として,昭和27年12月31日以前から引き続き所有していた土地建物等を譲渡したときは,当該土地建物等の譲渡による収入金額の5%相当額を取得費とすることができます。(31条の4第1項)

昭和28年1月1日以降に取得した土地建物等の譲渡についても,この概算取得費を適用することができます。

 ⇒ 取得費は,「取得価額−償却費相当額」として計算しますが,本肢の「概算取得費」によることもでき,納税者は,どちらかを選択することになっています。

●課税譲渡所得金額の算出方法
 課税譲渡所得金額=譲渡価額−取得費−譲渡費用−特別控除額

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