税法その他 実戦篇

宅地建物の統計の過去問アーカイブス 平成13年・問48  改題

本問題は,平成24年受験用にデータをアップデートしています。


 ガイド  平成13年は省庁統合があり,その年の国土交通白書が宅建試験前には刊行
されず,何らかの影響があるのではと懸念されていました。5年間の動向という
出題方法はこれまでになかったものですが,個々の数値よりも全体の推移に
注意すること
を改めて喚起した問題でした。

不動産の需給に関する次の記述のうち,最近5年間〔平成16年から平成20年まで〕の動向を述べたものとして,正しいものはどれか。(平成13年・問48)

1.地価公示(国土交通省)によると,全国平均の地価の下落率は,商業地のほうが住宅地よりも大きい。

2.住宅着工統計(国土交通省)によると,全国の新設住宅の着工戸数は,持家系住宅(持家及び分譲住宅)より貸家系住宅(貸家及び給与住宅)のほうが多い。

3.住宅・土地統計調査(総務省)によると,全国の総住宅数は,総世帯数よりも少ない。

4.地価公示(国土交通省)及び国民経済計算(内閣府)によると,全国平均の地価が下落した年には,実質国内総生産(GDP)も常に下落している。

【正解】

× × ×

1.「地価公示(国土交通省)によると,全国平均の地価の下落率は,商業地のほうが住宅地よりも大きい。」

【正解:

◆年別変動率の比較−住宅地と商業地

 平成24年地価公示での地価の変動率は,全国でみると,

  住宅地(2.3%)<全用途平均(2.6%)<商業地(3.1%)

で,地価下落率は住宅地よりも商業地のほうが高くなっています。

 これは,全国平均だけでなく,三大都市圏,地方圏も同じです。

 この関係は,出題歴があり,平成6年・問33・肢1(三大都市圏)で,平成7年・問34・肢1に出題されていました。

全国の平均地価の最近の動向 

地価公示→ 12年 13年 14年 15年 16年 17年 18年 19年 20年 21年 22年 23年 24年
全用途平均 4.9 4.9 5.9 6.4 6.2 5.0 2.8 +0.4 +1.7 3.5 4.6 3.0 2.6
住宅地 4.1 4.2 5.2 5.8 5.7 4.6 2.7 +0.1 +1.3 3.2 4.2 2.7 2.3
商業地 8.0 7.5 8.3 8.0 7.4 5.6 2.7 +2.3 +3.8 4.7 6.1 3.8 3.1

2.住宅着工統計(国土交通省)によると,全国の新設住宅の着工戸数は,持家系住宅(持家及び分譲住宅)より貸家系住宅(貸家及び給与住宅)のほうが多い。

【正解:×

◆貸家系 (貸家+給与住宅) < 持家系 (持家+分譲住宅)

 全体の動向としては,貸家+給与住宅 < 持家+分譲住宅 となっています。
 このことは,最近5年間(平成19年から平成23年まで)の動向に限ったことではありません。平成5年より、貸家系<持家系 という関係が固定しています。

昭和63年に貸家系・持家系の動向がそれぞれ増加 or 減少か問う問題が出題されています。平成23年1年間の年間集計では持家系合計は増加貸家系合計は減少

利用関係の用語の定義

 持 家 建築主が自分で居住する目的で建築するもの。
 分譲住宅 建て売り、または分譲の目的で建築するもの。
この下位分類としては、1戸建住宅、分譲マンション
 貸 家 建築主が賃貸する目的で建築するもの。
 給与住宅 会社、官公署、学校等がその社員、職員、教員等を居住させる
目的で建築するもの。

利用関係別の着工戸数 (単位 : 千戸) [年間集計]

  11年 12年 13年 14年 15年 16年 17年 18年 19年 20年 21年 22年 23年
持家 475 452 387 368 373 370 353 359 315 319 285 305 306
分譲住宅 303 345 339 324 327 346 369 379 295 300 169 202 235
持家系合計 778 797 726 692 699 716 722 738 610 619 454 507 540
貸家系合計 437 433 448 459 461 474 514 553 451 475 334 306 294
貸家 424 421 438 450 452 465 504 543 442 465 321 298 286
給与住宅  13  12  9.7 9 9.2 8.7 9.5 9.2 9.4 10.1 13  8  8

3.住宅・土地統計調査(総務省)によると,全国の総住宅数は,総世帯数よりも少ない。(関連・昭和63年,平成7年,平成11年)

【正解:×

◆全国の総住宅数

 住宅・土地統計調査(総務省)の直近の平成20年調査では、

 平成20年10月1日現在における全国の総住宅数 (住宅総数) は5,759万戸,総世帯数は約4,997万世帯となっており,総住宅数が総世帯数を約760万上回っています(平成22年度版・国土交通白書p.297)。

        総世帯数 < 住宅総数

平成20年10月1日現在の全国の住宅数は、一世帯あたり1.15戸← 平成11年出題
(平成10年の調査では、一世帯あたり1.13戸)

世帯数及び住宅戸数の推移 

   昭63 平成5 平成10 15 平成20
総世帯数
(千)
 37,812  41,159  44,360  47,255  49,973
住宅総数
(千戸)
 42,007  45,879  50,246  53,891  57,586
空家(千戸)   3,940   4,476   5,764   6,593  7,568
一世帯当たり
の住宅戸数
 1.11  1.11  1.13  1.14  1.15 

4.地価公示(国土交通省)及び国民経済計算(内閣府)によると,全国平均の地価が下落した年には,実質国内総生産(GDP)も常に下落している。

【正解:×

◆公示地価と実質国内総生産

年→ 平成9年 平成10年 平成11年 平成12年
実質GDP(兆円) 521.3 517.27 527.0 535.7
前期比(%) 0.2 0.8 1.9 1.7
公示地価(全用途平均) 2.9 2.4 4.6 4.9

(実質GDPは年度。公示地価はその年の1/1現在のものの前年との年別変動率。)

 地価の下落と実質GDP(Real Gross Domestic Product)の下落は一致しているとは限らないので,誤りです。
 本設問は,平成5年以来のマクロ経済からの出題ですが,専門的な知識を必要とはしていないので,恐れるに足りません。

(東京圏の住宅地の地価の指数名目GNPの指数比較が平成5年に出題)

国内総生産(GDP) : 一定期間での、国内で生産されたモノ・サービスの付加価値の合計額。付加価値とは,生産金額から原材料費を差し引いたもの。

実質GDPと名目GDPの違い : 名目GDPから,名目価額の変動を修正して求めたもの
                    が実質GDP。詳しくは,下記参照。

  http://www.nomura.co.jp/terms/ka-gyo/gdp.html

名目国内総生産(GDP)については,公示地価との対比の推移グラフがよく統計資料で掲載されています。

(参考) 土地白書 平成13年度版では、p.249 図表28 公示地価と名目国内総生産の推移 

▼「国民経済計算年報」は,内閣府経済社会総合研究所・国民経済計算部が毎年発行しています。


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