法令上の制限 基礎編
農地法のアウトライン
出題歴とアウトラインをまとめました。問題を解く前に、ご覧下さい。
農地法は、短期攻略が可能なところです。
【農地法の出題歴】
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4 年 |
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14 年 |
15 年 |
農地・採草放牧地の定義 | - | - | ○ | ○ | - | ○ | ○ | - | - | - | ○ | - | ○ | - | - |
3条:権利異動の制限 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | - | ○ | - | ○ | - | ○ |
遺産分割・相続 | - | - | ○ | - | - | - | - | ○ | - | ○ | - | - | - | - | ○ |
2項8号不許可 | - | - | - | ○ | - | - | - | - | - | - | - | - | - | - | - |
4条:農地の転用の制限 | - | ○ | - | ○ | ○ | - | - | - | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
5条:転用の目的の 権利異動の制限 |
○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
契約の効力 | - | ○ | - | - | - | - | - | - | - | - | - | - | ○ | - | - |
罰則・処分 | - | - | - | - | - | - | - | - | - | - | - | - | - | ○ | - |
・農地法の改正 (2009.12.15施行)
3条の3 (農地又は採草放牧地についての権利取得の届出)
遺産分割,相続,財産の分与に関する裁判若しくは調停,相続財産の分与に関する裁判によって,権利が設定または移転された場合, 3条の許可は不要であるが,遅滞なく,農地・採草放牧地のある市町村の農業委員会に,その旨の届出をしなければならない。 |
5条 国や都道府県が道路,農業用用排水施設その他の地域振興上または農業振興上の必要性が高いと認められる施設で農林水産省令で定めるものに供するために,転用目的で農地や採草放牧地を取得する場合は,農地法5条の許可は不要。
→ (農地法4条) 国・都道府県が上記の施設用地に農地を転用する場合,農地法4条の許可は不要。 |
5条4項 国や都道府県が,農地を農地以外のものにするため又は採草放牧地を採草放牧地以外のものにするため〔具体的には,学校,社会福祉施設,病院,診療所,庁舎,宿舎の用に供するために〕,これらの土地について権利を取得しようとする場合(許可不要のいずれかに該当する場合を除く。)は,国又は都道府県と都道府県知事との協議(4 ha を超える農地又はその農地と併せて採草放牧地について権利を取得する場合には、農林水産大臣との協議)が成立することをもつて5条の許可があったものとみなす。
→ (農地法4条) 国・都道府県が上記の施設用地に農地を転用する場合も,同じ。 |
19条 農地又は採草放牧地の賃貸借の存続期間
農地又は採草放牧地の賃貸借の存続期間は50年になった。 |
67条 法人の代表者,代理人,使用人その他の従業者が,その法人の業務又は財産に関し,4条1項,5条1項,原状回復命令等に違反した場合,行為者を罰するほか〔3年以下の懲役または300万円以下の罰金刑〕,その法人に対して,1億円以下の罰金刑を科する(両罰規定の強化)。 |
農地法の目的 |
第1条 この法律は、国内の農業生産の基盤である農地が現在及び将来における国民のための限られた資源であり、かつ、地域における貴重な資源であることにかんがみ、耕作者自らによる農地の所有が果たしてきている重要な役割も踏まえつつ、農地を農地以外のものにすることを規制するとともに、農地を効率的に利用する耕作者による地域との調和に配慮した農地についての権利の取得を促進し、及び農地の利用関係を調整し、並びに農地の農業上の利用を確保するための措置を講ずることにより、耕作者の地位の安定と国内の農業生産の増大を図り、もつて国民に対する食料の安定供給の確保に資することを目的とする。 旧第1条 この法律は、農地はその耕作者みずからが所有することを最も適当であると 認めて、耕作者の農地の取得を促進し、及びその権利を保護し、並びに土地の 農業上の効率的な利用を図るためその利用関係を調整し、もって耕作者の地位 の安定と農業生産力の増進とを図ることを目的とする。 【農地法の機能】 昭和27年7月15日 法律229号として農地法は生まれました。 この当時は、農地改革の直後であり、地主制度の復活を阻む意味もありましたが、現在では、以下のような面が主体となっています。 ・3条の許可制度 →誰が耕作者なのか把握する ・投機的目的など適正に耕作しない者の農地の取得の防止 →投機目的の取引排除 ・農地の無秩序な転用の防止等 → 転用の防止 (農地は一旦転用されると復元することは困難です) (農地は水資源の一つとしても、環境面で重要な働きをしています) (農業上の土地利用と農業以外の土地利用との調整) ・経営規模を細分化せずに、農地の効率的な利用促進 ↓ 耕作者の地位安定 生産力の増進(食料を確保) を図る 【農林水産省のホームページ】http://www.maff.go.jp/j/kanbo/index.html |
農地・採草放牧地の定義→客観的な土地の現況で判断する |
●農地の定義
耕作の目的に供される土地 ・現況で判断する。 ・登記簿上の地目とは関係ない。 →土地登記簿の地目が仮に「山林」や「原野」等であっても、現況が農地なら農地。 ・一時的な休耕地、休閑地も農地とみなす。 →現に耕作されていない農地でも耕作しようと思えばいつでも耕作できるような土地。 ・土地に「肥培管理」を行って作物を栽培しているか否か。 ・家庭菜園は農地には該当しない。 ●採草放牧地の定義 農地以外の土地で、 主として耕作又は養畜の事業のための 採草又は家畜の放牧の目的に供せられる土地 ●転用の定義 「農地を転用する」とは、農地に区画形質の変更を加えて住宅、工場等の施設用地や山林等の用地にするほか、農地の形質等にはなんら変更を加えなくても、資材置き場、駐車場にする場合等、人為的に農地を耕作の目的に供されない状態にすることも含まれます。 ▼農地転用の許可に当たっては、市街地に近接した農地又は生産力の低い農地についてはその事情を考慮し、転用を許可することとされています。 |
各制度の比較 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
●概略と許可不要の要件
●許可権者
※届出…都市部では農地を宅地化して優良な宅地供給を増やしたいため。 ●無許可の場合 農地法上の許可を受けずに農地の売買契約を締結したとしても、罰則の適用はあるが契約は無効とはならない。→×
※両罰規定 法人の代表者、法人・営農者である個人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人・営農者である個人の業務・財産に関し、上記の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、両罰規定として、営農者であるその個人に対しても上記の罰金刑が科せられるが、法人に対しては1億円以下の罰金が課せられる(農地法67条)。 |
農地法・第3条の手続→耕作人のchangeの監視 |
●3条のポイント 権利移動とは、所有権の移転や地上権・永小作権・質権・使用貸借権・賃借権などの設定、移転のことをいいます。 贈与・競売による取得にも許可必要。 抵当権の設定は、許可不要です。 ●国土法との関連 3条許可申請をするものについては、国土法の事前届出(監視区域・注視区域)、事後届出とも、必要ありません。 ●農地の賃借 農地または採草放牧地の賃貸借は、登記がなくても、引渡しがあったときは、第3者に対抗できる。 ⇒ 平成21年改正 農地又は採草放牧地の賃貸借の存続期間は50年 ●農地の賃借の解消 農地の賃借関係は法定更新され、解約は両者合意により農業委員会に通知する。 (農地法第20条6項届出) |
●3条の許可基準
以下の場合は、3条の許可をすることができない。 (1) 権利を取得しようとする者又はその世帯員が,取得後の農地を耕作や養畜等の事業に供すると認められない場合。また、取得後の農地を耕作や養畜等の事業に必要な農作業に常時従事すると認められない場合。 (2)原則として、農業生産法人以外の法人が農地などを取得しようとする場合。 (3)取得後において、耕作等の事業に供すべき農地等の合計が 都府県では50a未満 北海道では2ha未満 (ただし、知事がこれらの面積の範囲内で別段の定めをして、公示したときはその面積に達しない場合。) |
●農地を売買・貸借(許可) 農地法第3条の許可申請書を提出 ↓ 農業委員会による審議 ↓ 農業委員会の許可 |
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▼平成21年の農地法改正点に注意 遺産分割,財産分与・相続財産の分与の裁判・調停,包括遺贈)では,3条の許可は不要ですが,平成21年の改正によって,農業委員会への権利取得の届出をしなければならないという制度が創設されました(農地法3条の3)。 |
農地法・第4条の手続→無秩序な転用・使用目的のchangeの監視 |
●4条のポイント
○自己所有の農地を、宅地、植林地への転用は、農地法第4条の許可が必要です。 ○農地→採草放牧地 は「農地の転用」とみなされます。 ○自己所有の採草放牧地の転用は、4条の許可は不要です。 ○「農業振興地域」の中の「農用地区域」内の農地は原則として転用できません。 ○第5条の許可を受ければ第4条の許可は不要です。 ○面積要件 同一事業に供するための農地4ha以下・・・都道府県知事の許可 (採草放牧地の面積に係らず、農地が4ha以下) (農地が2ha超のときは農林水産大臣と協議) 同一事業に供するための農地4ha超える・・・農林水産大臣の許可 (採草放牧地の面積に係らず、農地が4ha超える) |
●農地を自分で転用(許可)
農地法第4条の許可申請書の提出 ↓ 農業委員会からの意見進達(農業委員会を経由) ↓ (県審議会での審議後) 都道府県知事許可 |
●市街化区域の農地を自分で転用(届出)
農地法第4条の届出 ↓ 農業委員会 受理通知書の交付 |
農地法・第5条の手続→転用目的の所有者のchangeの監視 |
●5条のポイント
○採草放牧地→農地のための権利移動は、3条許可になります。 ○面積要件 同一事業に供するための農地4ha以下・・・都道府県知事の許可 (採草放牧地の面積に係らず、農地が4ha以下) (農地が2ha超のときは農林水産大臣と協議) 同一事業に供するための農地4ha超える・・・農林水産大臣の許可 (採草放牧地の面積に係らず、農地が4ha超える) 採草放牧地のみの転用の為の権利移動は面積無関係に、都道府県知事 ○「農業振興地域」の中の「農用地区域」内の農地は原則として転用できません。 ○土地収用法により、収用または使用される場合は許可不要 その取得が土地収用法20条に基づく認定を受けて、強制的に収用または使用する(許可不要)のではなく、単に事業用地として売買(任意取得等)によるときは許可必要に。 ●国土法との関連 5条許可申請をするものについては、国土法の事前届出(監視区域・注視区域)、事後届出とも、必要です。注意してください。 |
●農地を非農家が転用(許可)
農地法第5条の許可申請書の提出 ↓ 農業委員会からの意見進達(農業委員会を経由) ↓ (県審議会での審議後) 都道府県知事の許可 【例題】 「都道府県が農地を取得する場合には、その取得の目的を問わず、農地法の 許可を受ける必要はない」 【正解 : ×】 国・都道府県が、農業用用排水施設その他の地域振興上又は農業振興上の必要性が高いと認められる施設であって農林水産省令で定めるものの用に供するため(転用目的)に農地や採草放牧地の権利を取得する場合は許可は不要ですが、 それ以外のもの (学校,社会福祉施設,病院,診療所,庁舎,宿舎の用に供するために転用目的で権利取得する場合には農地法5条の許可が原則として必要です。 ⇒ ただし,都道府県知事(4ha超は 農林水産大臣)との協議 が成立することにより 農地法5条の許可が あったものとみなされます。 |
●市街化区域の農地を非農家が転用(届出)
農地法第5条の届出 ↓ 農業委員会 受理通知書の交付 【例題】 「市街化区域内において4ha を超える農地を住宅建設のために取得する場合には、 農林水産大臣へ農地法第5条の届出をする必要がある」 【正解 : ×】 市街化区域の農地の「転用のための権利移動」では、農業委員会に届出ればよく、 この場合、面積要件はありません。市街化区域でない農地との混同を狙った問題です。 |
番外知識・農地転用の実際 | ||||||||||||
●農地転用(4条、5条)
転用については、上でみてきましたが、実は、農地の転用は簡単ではありません。 まず、農地には、市街化区域内農地、市街化調整区域内農地、その他区域内農地がありました。 市街化区域にある場合は、農業委員会に届出すればいいわけですが、市街化区域にない農地の場合は、二通りに分けられます。 ・「農用地区域内の農地」ではない場合・・・転用許可(4条、5条)申請 ▼農地転用の許可に当たっては、市街地に近接した農地又は生産力の低い農地についてはその事情を考慮し、転用を許可することとされています。 ・「農用地区域内の農地」の場合・・・除外の申請→転用許可(4条、5条)申請 ▼市街化調整区域とその他区域内の中に、「農業振興地域」があり、さらにその中に「農用地区域」があります。この「農用地区域」の農地の転用は、厄介です。 ●農業振興地域内の農用地区域にある農地 「農業振興地域の整備に関する法律」(農振法、昭和44年)によって都道府県知事が指定した「農用地区域内の農地」のことで、農業以外には利用できない農地のことです。この指定を受けて市町村が農用地利用計画を定めています。 この「農用地区域内の農地」(農振法指定農地とも言います)を農地以外に転用する場合は、その農地を指定から除外することが必要です。それを農用地区域の除外手続(農振除外とも言います)といい、その申請をして許可が下りてから、農地法に基づく「転用許可申請」を行うことになります。 「農用地区域内の農地」の除外申請が許可されるかどうかは、市町村によって大きく異なります。市町村が定めている農用地利用計画による上に、又、この除外申請自体、年に何回も受け付けてはいないからです。申請から除外の認可までには相当の長期間になります。また、申請したからといって必ずしも、「農用地区域内の農地」の指定が除外されるわけでもありません。 これは、「農業振興地域の整備に関する法律」で、「農地等の転用の制限」として 第17条 農林水産大臣及び都道府県知事は、 とあるからです。 また、農地法でも、農地の転用は、「農業振興地域の整備に関する法律」の達成に 支障を及ぼす恐れがないと認められるものであることという条件つきで認められています。 このように、「農用地区域内の農地」の転用については、相当難しい面があることを知っておいてください。 ●農地転用(4条・5条)
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▼実戦チェック−過去問で力試し−
●農地法の過去問Archives |
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