法令上の制限 実戦篇

都市計画法の過去問アーカイブス 昭和60年・問17 区域区分


市街化区域及び市街化調整区域に関する次の記述のうち,都市計画法の規定によれば,誤っているものはどれか。(昭和60年・問17)

1.「市街化調整区域は,おおむね,10年以内に優先的かつ計画的に市街化を図るべき土地である。」

2.「区域区分に関する都市計画は,都道府県が定める。」

3.「地域地区について都市計画を定める場合,市街化区域については,少なくとも用途地域を定めるものとし,市街化調整区域については,原則として用途地域を定めないものとする。」

4.「都道府県の定める都市計画区域のマスタープラン(都市計画区域の整備,開発及び保全の方針)には,区域区分の決定の有無及び当該区域区分を定めるときはその方針について定めるものとされている。

【正解】

×

1.「市街化調整区域は,おおむね,10年以内に優先的かつ計画的に市街化を図るべき土地である。」

【正解:×昭和57年・問19,60年・問17,5年・問19,14年・問17,16年・問17,

◆市街化調整区域

 市街化区域,市街化調整区域の定義をしっかり押さえておきましょう。

市街化区域 すでに市街地を形成している区域及び
おおむね10年以内に優先的かつ計画的に市街化を図るべき区域
 (7条2項)
市街化調整区域 市街化を抑制すべき区域 (×禁止)  (7条3項)

 ⇒ 区域区分についての都市計画基準,技術的基準については,昭和57年・問19の解説の後の『●区域区分についてのFurther Study』を参照してください。

2.「区域区分に関する都市計画は,都道府県が定める。」

【正解:

◆区域区分をするかどうかは,原則として,都道府県が選択する

 区域区分とは,都市計画区域を「市街化区域」と「市街化調整区域」の2つのエリアに分けることです。

 都市計画区域の指定権者は原則として都道府県であり〔例外として国土交通大臣〕,都道府県は,都市計画区域について無秩序な市街化を防止し,計画的な市街化を図るため必要があるときは,都市計画に,市街化区域と市街化調整区域との区分(「区域区分」という。)を定めることができます。(都市計画法7条1項,15条1項2号)

 したがって,区域区分をするかどうかは,原則として,都市計画区域を指定する都道府県が地域の実情に応じて判断します。

 しかし,以下の都市計画区域〔「三大都市圏の一定の都市」及び「政令指定都市」〕については,区域区分を定めなければいけません。(都市計画法7条1項)

1.次の区域の全部又は一部を含む都市計画区域
 イ 首都圏整備法に規定する既成市街地又は近郊整備地帯
 ロ 近畿圏整備法に規定する既成都市区域又は近郊整備区域
 ハ 中部圏開発整備法に規定する都市整備区域

2.大都市に係る都市計画区域として政令で定めるもの〔指定都市の区域の全部又は一部を含む都市計画区域〕

都道府県は,都市計画区域に区域区分を定めないことができますが,都市計画区域のマスタープラン〔都市計画区域の整備,開発及び保全の方針〕は,すべての都市計画区域について定めなければいけません。(都市計画法6条の2第1項,15条1項1号)

3.「地域地区について都市計画を定める場合,市街化区域については,少なくとも用途地域を定めるものとし,市街化調整区域については,原則として用途地域を定めないものとする。」

【正解:昭和60年問17,昭和63年問20,

◆用途地域

 市街化区域  地域地区のうち少なくとも用途地域を定める(13条1項7号)
 市街化調整区域  原則として定めないが,定めることもできる。(13条1項7号)

 用途地域は,区域区分が定められていない都市計画区域,準都市計画区域でも,都市計画に定めることができる。

用途地域の決定は,上記の「三大都市圏の一定の都市」及び「政令指定都市」については都道府県,それ以外では市町村になっています。(都市計画法15条1項5号,施行令9条1項1号)

用途地域の決定

区域区分が定められている都市計画区域  三大都市圏の一定の都市
 及び「政令指定都市
 都道府県
 上記以外  市町村
区域区分が定められていない都市計画区域
 〔非線引き都市計画区域〕
 市町村

注意 2以上の都府県の区域にわたる都市計画区域に係る都市計画は国土交通大臣と市町村が定めることになっている。このうち,国土交通大臣が定める都市計画は都府県の作成した案に基づいて国土交通大臣が定める。(22条1項,2項)

 一の市町村の区域を超える広域の見地から決定すべき地域地区として政令で定めるものは都道府県が都市計画で定める。(都市計画法15条1項5号)

・「三大都市圏の一定の都市」及び「政令指定都市」の都市計画区域内の『用途地域』,『高層住居誘導地区』(施行令9条1項1号)

・10 ha以上の『風致地区』(施行令9条1項2号)

・『緑地保全地区』のうち10 ha以上で一定のもの(施行令9条1項3号)

4.「都道府県の定める都市計画区域のマスタープラン(都市計画区域の整備,開発及び保全の方針)には,区域区分の決定の有無及び当該区域区分を定めるときはその方針について定めるものとされている。

【正解:

◆「都市計画区域の整備,開発及び保全の方針」と「区域区分」

 都市計画区域については,都市計画に『都市計画区域の整備,開発及び保全の方針』〔都市計画区域のマスタープラン〕を定めることになっています。(都市計画法6条の2第1項)

●『都市計画区域の整備,開発及び保全の方針』で定めるもの(6条の2第2項)
1.都市計画の目標

2.区域区分の決定の有無及び当該区域区分を定めるときはその方針

3.土地利用,都市施設の整備及び市街地開発事業に関する主要な都市計画の決定の方針

 都市計画区域について定められる都市計画は,当該『都市計画区域の整備,開発及び保全の方針』に即したものでなければいけません。(都市計画法6条の2第3項)

●原題
市街化区域及び市街化調整区域については,その区分及び各区域の整備,開発又は保全の方針を都市計画に定めるものとされている。
【コメント】平成12年の改正で『区域区分は原則として都道府県の任意になったこと』により,原題の規定〔旧・7条4項〕は削除されていることから,原題の出題意図と思われるものに基づき全く新たに作問しました。

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