法令上の制限 実戦篇

都市計画法の過去問アーカイブス 昭和61年・問21 地域地区


都市計画法に定める地域地区に関する次の記述のうち,誤っているものはどれか。(昭和61年・問21)

1.「第二種中高層住居専用地域は,主として中高層住宅に係る良好な住居の環境を保護するため定める地域である。」

2.「準工業地域は,主として環境の悪化をもたらすおそれのない工業の利便を増進するため定める地域である。」

3.「高度利用地区は,用途地域内において市街地の環境を維持し,又は土地利用の増進を図るため,建築物の高さの最高限度又は最低限度を定める地区とする。」

4.「風致地区は,都市の風致を維持するため定める地区である。」

【正解】

×

※出題類型が本問題と似ているのは,平成3年・問18平成14年・問18平成15年・問17

1.「第二種中高層住居専用地域は,主として中高層住宅に係る良好な住居の環境を保護するため定める地域である。」

【正解:

◆第二種中高層住居専用地域(9条4項)

第一種中高層住居専用地域

中高層住宅に係る良好な住居の環境を保護するため
定める地域

第二種中高層住居専用地域 主として
中高層住宅に係る良好な住居の環境を保護するため
定める地域
●主として・・・で始まる用途地域
 用途地域の定義で「主として」で始まるのは六つある。

 第二種低層住居専用地域・・・『主として低層住宅に係る良好な住居の環境を保護するために定める地域

 第二種中高層住居専用地域・・・『主として中高層住宅に係る良好な住居の環境を保護するために定める地域

 第二種住居地域・・・『主として住居の環境を保護するために定める地域

 商業地域・・・『主として商業その他の業務利便を増進するために定める地域

 準工業地域・・・『主として環境の悪化をもたらすおそれのない工業利便を増進するため定める地域

 工業地域・・・『主として工業利便を増進するため定める地域

●用途地域の変遷
 昭和25年では,住居地域,商業地域,準工業地域工業地域の四つしかなかったが〔それまでは,大正時代からの住居地域,商業地域,工業地域,無指定地域〕,昭和43年に8に増え〔第一種住居専用地域第二種住居専用地域,住居地域, 近隣商業地域,商業地域,準工業地域工業地域工業専用地域〕,平成4年に現在の12になりました。

 ちなみに,本問題での肢1は『第二種住居専用地域』〔現在の第一種・第二種中高層住居専用地域に該当する。〕として出題されています。

2.「準工業地域は,主として環境の悪化をもたらすおそれのない工業の利便を増進するため定める地域である。」

【正解:昭和61年問21,昭和63年問20,

◆準工業地域(9条10項)

準工業地域 主として
環境の悪化をもたらすおそれのない工業の
利便を増進するため定める地域
工業地域 主として
工業の利便を増進するため定める地域
工業専用地域 工業の利便を増進するため定める地域
●用途地域の都市計画で定めるもの
 すべての用途地域では(建築基準法で用途地域ごとに決められている範囲内〔複数の候補のうち〕のどれを指定するのか)容積率を必ず都市計画で定める。(各地域とも,建築物の敷地面積の最低限度は必要ならば定める。)

 建ぺい率商業地域を除く用途地域の各地域で都市計画で定める。〔建築基準法で用途地域ごとに決められている範囲内〔複数の候補のうち〕のどれを指定するのかを都市計画で定める。〕

 ⇒ 「商業地域を除く」というのは,商業地域で建ぺい率の指定が都市計画にはないということではないので注意。都市計画で決められている商業地域の建ぺい率は日本全国どこでも8/10です。商業地域の建ぺい率は8/10と建築基準法で定められているので,商業地域の建ぺい率は都市計画では8/10以外の数値を定めることはできないということです。)

第一種・第二種低層住居専用地域 容積率建ぺい率

高さの限度

(必要ならば)外壁後退距離の限度

(必要ならば)敷地面積の最低限度

低層住居専用地域,商業地域を除く地域 容積率建ぺい率

(必要ならば)敷地面積の最低限度

商業地域 容積率

(必要ならば)敷地面積の最低限度

3.「高度利用地区は,用途地域内において市街地の環境を維持し,又は土地利用の増進を図るため,建築物の高さの最高限度又は最低限度を定める地区とする。」

【正解:×昭和61年・問21,平成15年・問17,

◆高度利用地区

 高度利用地区は,用途地域内の市街地における土地の合理的かつ健全な高度利用と都市機能の更新とを図る地区で, 

 容積率の最高限度及び最低限度
 建ぺい率の最高限度
 建築物の建築面積の最低限度
 壁面の位置の制限

を都市計画に定めます。(8条3項2号チ,9条18項)

 本肢の記述は『高度地区』のものです。

高度地区は,用途地域内において市街地の環境を維持し,又は土地利用の増進を図るため,建築物の高さの最高限度又は最低限度準都市計画区域内にあつては,建築物の高さの最高限度。)を定める地区を都市計画に定める。(8条3項2号ト,9条16項)

都市計画法で用途地域の中で定めることになっているものは以下の五つです。

 区域  都市計画で定めるもの
 特別用途地区  特に規定はない。
*特例容積率適用地区  建築物の高さの最高限度

 (当該地区における市街地の環境を確保するために必要な
 場合に限る。)

 〔第一種・第二種低層住居専用地域,工業専用地域を除く

*高層住居誘導地区  必要な場合は以下のものを定める。
 容積率の最高限度
 建ぺい率の最高限度・
 建築物の敷地面積の最低限度

〔第一種・第二種住居地域,準住居地域,近隣商業地域,
 準工業地域で容積率が40/10,50/10と定められている
 場合に定めることができる。〕

 高度地区  高さの最高限度又は最低限度

 (準都市計画区域では,高さの最高限度。)

 高度利用地区  容積率の最高限度及び最低限度
 建ぺい率の最高限度
 建築物の建築面積の最低限度
 壁面の位置の制限

 *高層住居誘導地区は,住居と住居以外の用途とを適正に配分し,利便性の高い高層住宅の建設を誘導するための地区。第一種・第二種住居地域,準住居地域,近隣商業地域,準工業地域の各地域のうち,容積率が40/10又は50/10と定められたものの中で定める。(9条16項)

用途地域が定められているのが要件になっているのは,このほかには,地区計画での再開発等促進区(12条の5第3項4号)がある。

 平成18年の改正によって,地区計画に,開発整備促進区〔第二種住居地域,準住居地域,工業地域,用途地域の定められていない土地の区域〕が創設された(12条の5第4項4号)。

●特定街区
 特定街区 市街地の整備改善を図るため街区の整備又は造成が行われる地区について,その街区内における建築物の容積率の最高限度,高さの最高限度,壁面の位置の制限を定める街区とする。(都市計画法8条1項4号,3項2号リ,9条19号)

 →特定街区 現在は,札幌,さいたま市習志野市東京横浜川崎,名古屋,京都市(JR京都駅),大阪神戸,など多くの都市で指定されている。(現在は18都市で指定。)

4.「風致地区は,都市の風致を維持するため定める地区である。」

【正解:昭和56年問19,60年問18,61年問21,

◆風致地区内での地方公共団体の条例による規制

 風致地区は『都市の風致を維持するために定める地区』で都市計画で定めていますが(都市計画法8条1項7号,9条20号),都市の風致の維持に影響を及ぼすおそれのある行為については規制をする必要があります。

 風致地区内における建築物等の建築建築物等の色彩の変更宅地の造成木竹の伐採屋外における土石,廃棄物又は再生資源の堆積その他の行為については,政令で定める基準に従い,地方公共団体の条例で都市の風致を維持するため必要な規制をすることができます。(58条1項)

風致地区は都市計画で定める

風致地区の規制は条例で定める

 10ha以上の風致地区  都道府県〔指定都市の区域では指定都市〕の条例
 その他の風致地区  市町村〔都の特別区を含む〕の条例

 また,それらの行為をしようとする場合は,許可を受けなければいけません。(風致地区内における建築等の規制に係る条例の制定に関する基準を定める政令3条)

風致地区での許可権者

 10ha以上の風致地区  都道府県知事の許可
〔指定都市・中核市・特例市にあってはそれぞれその長の許可〕
 その他の風致地区  市町村〔都の特別区を含む〕の長の許可
●景観地区(旧・美観地区)と風致地区
 景観地区=市町村は,都市計画区域又は準都市計画区域内の土地の区域については,市街地の良好な景観の形成を図るため,都市計画に,景観地区を定めることができる。(景観法61条1項)旧・美観地区。全国では,千代田区皇居周辺,大阪市の御堂筋・中之島(建築美観誘導地区),三重県の伊勢市(伊勢神宮周辺),静岡県の沼津市(条例),京都市(種別),岡山県の倉敷市(倉敷美観地区)などにある。〕→改正前の美観地区は改正後の景観地区とみなす。(平成16年6月18日法律111号・附則2条1項)

 風致地区都市の風致を維持するため定める地区。→ 風致地区の指定状況

※美観地区・風致地区とも,大正8年から都市計画制度として存在している。

●生産緑地地区と緑地保全地域,特別緑地保全地区,緑化地域
 生産緑地地区市街化区域内の農地等で一定の要件に該当する一団のものの区域。(生産緑地法3条1項,都市計画法8条1項14号), 
生産緑地法=この法律は、生産緑地地区に関する都市計画に関し必要な事項を定めることにより、農林漁業との調整を図りつつ、良好な都市環境の形成に資することを目的とする。(生産緑地法第1条)

 緑地保全地域(都市緑地法5条1項,都市計画法8条1項12号),

都市計画区域または準都市計画区域内の緑地で次のいずれかに該当する相当規模の土地の区域について都市計画で定めることができる。

1 無秩序な市街地化の防止又は公害若しくは災害の防止のため適正に保全する必要があるもの

2 地域住民の健全な生活環境を確保するため適正に保全する必要があるもの

 特別緑地保全地区(都市緑地法12条1項,都市計画法8条1項12号),→ 指定状況

都市計画区域内の緑地で次のいずれかに該当する土地の区域について都市計画で定めることができる。

1 無秩序な市街地化の防止,公害又は災害の防止等のため必要な遮断地帯又は避難地帯として適切な位置,規模及び形態を有するもの

2 神社,寺院等の建造物,遺跡等と一体となって,又は伝承若しくは風俗慣習と結びついて当該地域において伝統的又は文化的意義を有するもの

3 次のいずれかに該当し,かつ,当該地域の住民の健全な生活環境を確保するため必要なもの
イ 風致又は景観が優れていること。
ロ 動植物の生息地又は生育地として適正に保全する必要があること。 

 緑化地域(都市緑地法34条1項,都市計画法8条1項12号)

用途地域のうち,良好な都市環境の形成に必要な緑地が不足し,建築物の敷地内において緑化を推進する必要がある区域については,都市計画に,緑化地域を定めることができる。

  都市計画法での「緑地」と都市緑地法での「都市における緑地」には多少ニュアンスの違いがある。

■都市計画法の「緑地(都市施設の種類として定義されている)(都市計画法第11条第1項2号)

■都市緑地法における緑地(樹林地、草地、水辺地、岩石地若しくはその状況がこれらに類する土地が、単独で、若しくは一体となつて、又はこれらに隣接している土地が、これらと一体となつて、良好な自然的環境を形成しているものをいう。)(都市緑地法第3条第1項)

●平成18年の出題範囲 
景観にかかわる法令

「景観法」 (平成16年6月11日成立,6月18日公布)

 旧・美観地区は『景観地区』(市町村が指定)に変更になりました。このほか景観行政団体により「景観計画区域」を定められることになっています。


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