法令上の制限 実戦篇
都市計画法の過去問アーカイブス 平成15年・問17 地域地区
都市計画法に関する次の記述のうち,正しいものはどれか。(平成15年・問17) |
1.「高層住居誘導地区は,住居と住居以外の用途とを適正に配分し,利便性の高い高層住宅の建設を誘導するため定める地区である。 」 |
2.「第一種住居地域は,低層住宅に係る良好な住居の環境を保護するため定める地域であり,第二種住居地域は,中高層住宅に係る良好な住居の環境を保護するため定める地域である。」 |
3.「高度利用地区は,用途地域内において市街地の環境を維持し,又は土地利用の増進を図るため,建築物の高さの最高限度又は最低限度を定める地区である。」 |
4.「地区計画は,市街地の整備改善を図るため街区の整備又は造成が行われる地区について,その地区内における建築物の容積率並びに建築物の高さの最高限度及び壁面の位置の制限を定める計画である。」 |
【正解】
1 | 2 | 3 | 4 |
○ | × | × | × |
※出題類型が本問題と似ているのは,昭和61年・問21,平成3年・問18,平成14年・問18,
1.「高層住居誘導地区は,住居と住居以外の用途とを適正に配分し,利便性の高い高層住宅の建設を誘導するため定める地区である。 」 |
【正解:○】 ◆高層住居誘導地区 高層住居誘導地区は,住居と住居以外の用途とを適正に配分し,利便性の高い高層住宅の建設を誘導するための地区。第一種・第二種住居地域,準住居地域,近隣商業地域,準工業地域の各地域のうち,容積率が40/10又は50/10と定められたものの中で定めます。(9条16項) |
2.「第一種住居地域は,低層住宅に係る良好な住居の環境を保護するため定める地域であり,第二種住居地域は,中高層住宅に係る良好な住居の環境を保護するため定める地域である。」 |
【正解:×】 ◆第一種・第二種住居地域 第一種住居地域と第二種住居地域の違いは,第二種住居地域には<主として>がついていることです。(9条5項,6項)
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●用途地域の変遷 |
昭和25年では,住居地域,商業地域,準工業地域,工業地域の四つしかなかったが〔それまでは,大正時代からの住居地域,商業地域,工業地域,無指定地域〕,昭和43年に8に増え〔第一種住居専用地域,第二種住居専用地域,住居地域, 近隣商業地域,商業地域,準工業地域,工業地域,工業専用地域〕,平成4年に現在の12になりました。
上の肢2が誤りだということは誰でもわかります。しかし,平成4年改正前は「第一種住居専用地域」〔=現行の第一種住居地域とは異なる。当時は,“低層住宅に係る良好な住居の環境を保護するため定める地域”。現在の第一種・第二種低層住居専用地域に該当する。〕,「第二種住居専用地域」〔=現行の第二種住居地域とは異なる。当時は,“中高層住宅に係る良好な住居の環境を保護するため定める地域”。現在の第一種・第二種中高層住居専用地域に該当する。〕というものがありました。本肢はこの平成4年改正前の規定から作問したことは間違いないでしょう。改正前の類似の記述を出題するというのが宅建試験ではよくありますが,マサカ,その当時のことを知っている人をヒッカケようということではないと思います。 |
●用途地域の都市計画で定めるもの | ||||||
すべての用途地域では(建築基準法で用途地域ごとに決められている範囲内〔複数の候補のうち〕のどれを指定するのか)容積率を必ず都市計画で定める。(各地域とも,建築物の敷地面積の最低限度は必要ならば定める。)
建ぺい率は商業地域を除く用途地域の各地域で都市計画で定める。〔建築基準法で用途地域ごとに決められている範囲内〔複数の候補のうち〕のどれを指定するのかを都市計画で定める。〕 ⇒ 「商業地域を除く」というのは,商業地域で建ぺい率の指定が都市計画にはないということではないので注意。都市計画で決められている商業地域の建ぺい率は日本全国どこでも8/10です。商業地域の建ぺい率は8/10と建築基準法で定められているので,商業地域の建ぺい率は都市計画では8/10以外の数値を定めることはできないということです。)
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3.「高度利用地区は,用途地域内において市街地の環境を維持し,又は土地利用の増進を図るため,建築物の高さの最高限度又は最低限度を定める地区である。」 |
【正解:×】昭和61年・問21,平成15年・問17 ◆高度利用地区 高度利用地区は,用途地域内の市街地における土地の合理的かつ健全な高度利用と都市機能の更新とを図る地区で, 容積率の最高限度及び最低限度 を都市計画に定めます。(8条3項2号チ,9条18項) 本肢の記述は『高度地区』のものです。
●都市計画法で用途地域の中で定めることになっているものは以下の五つです。
▼用途地域が定められているのが要件になっているのは,このほかには,地区計画での再開発等促進区がある(12条の5第3項4号)。 なお,開発整備促進区は,第二種住居地域,準住居地域,工業地域,非線引き都市計画区域内で用途地域の定められていない区域に定める(12条の5第4項4号)。 ⇒本肢は,昭和61年・問21・肢3,と全く同じ問題です。 |
●平成17年6月より施行 |
▼特例容積率適用地区→平成16年の改正で,創設。第一種・第二種低層住居専用地域,工業専用地域の2つの用途地域を除く用途地域内の適正な配置及び規模の公共施設を備えた土地の区域において,容積率の限度から見て未利用となっている建築物の容積の活用を促進して土地の高度利用を図るため定める地区とする。(9条15号) この地区内では,当該地区内における市街地の環境を確保するために必要な場合に限り,建築物の高さの最高限度を定める。(8条3項2号ホ) |
4.「地区計画は,市街地の整備改善を図るため街区の整備又は造成が行われる地区について,その地区内における建築物の容積率並びに建築物の高さの最高限度及び壁面の位置の制限を定める計画である。」 |
【正解:×】昭和57年・問20,平成元年・問19,11年・問17,15年・問17, ◆地区計画 本肢は,紛らわしいですが,『特定街区』の記述です。(9条19号)地区計画の定義をしっかり把握しておく必要があります。(地区計画は,平成16年3月末時点で,全国で4,200地区が定められています。) ●地区計画は,建築物の建築形態,公共施設その他の施設の配置等からみて,一体としてそれぞれの区域の特性にふさわしい態様を備えた良好な環境の各街区を整備し,開発し,及び保全するための計画で,市町村が定めます。(12条の5第1項) ●地区計画では,「地区整備計画」を都市計画に定めます。(12条の5第2項) この地区整備計画では,地区施設の配置及び規模のほか,地区計画の目的を達成するために必要な建築物等の用途の制限,建築物・工作物・敷地についての制限事項を定めることができます。これにより地区計画の区域の街作りを誘導・整備していくことになります。(12条の5第6項)
地区整備計画にどんな内容を盛り込んでいいかを定めているのが12条の5第6項です。
※市街化調整区域の地区整備計画では,このうち<建築物の容積率の最低限度,建築物の建築面積の最低限度及び建築物等の高さの最低限度>を定めることはできない。(11年・問17)市街化調整区域はもともと市街化を抑制する区域なので,容積率・敷地面積・高さの最低限度を定めるのは好ましくない。 |
●都市計画基準−地区計画 |
▼都市計画法13条1項14号 地区計画は,公共設備の整備,建築物の建築その他の土地利用の現状及び将来の見通しを勘案し,当該地区の各街区における防災,安全,衛生等に関する機能が確保され,かつ,その良好な環境の形成又は保持のためその区域の特性に応じて合理的な土地利用が行われることを目処として,当該計画に従って秩序ある開発行為,建築又は施設の整備が行われることとなるように定めること。 |
●地区計画の出題項目一覧 |
▼地区計画等(12条の4第1項) 平成7年・問18, ▼地区計画の定義(12条の5第1項) 平成元年・問19,6年・問17,7年・問18,8年・問19,15年・問17, ▼地区計画の都市計画基準(13条1項14項) 平成3年・問18, ▼都市計画で定めるもの(12条の4第2項,12条の5第2項) 昭和57年・問20, ▼地区計画をどこに定めるか(12条の5第1項) 昭和57年・問20,平成元年・問19,10年・問17, ▼地区整備計画で制限できるもの(12条の5第6項) 昭和57年・問20,平成元年・問19,11年・問17,15年・問17, ▼地区整備計画が定められている地区計画の区域内での建築等の届出(58条2) |
●特定街区 | ||||||||||||
特定街区 市街地の整備改善を図るため街区の整備又は造成が行われる地区について,その街区内における建築物の容積率の最高限度,高さの最高限度,壁面の位置の制限を定める街区とする。(都市計画法8条1項4号,3項2号リ,9条19号)
→特定街区 現在は,札幌,さいたま市,習志野市,東京,横浜,川崎,名古屋,京都市,大阪,神戸,など18都市で指定されている。
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