法令上の制限 実戦篇

都市計画法の過去問アーカイブス 平成9年・問18 開発許可の要否


次に掲げる開発行為を行う場合に,都市計画法に基づく開発許可が常に不要なものはどれか。なお,開発行為の規模は1,000平方メートル以上であるものとする。 (平成9年・問18)

1.「市街化区域内において行う開発行為で,図書館の建築の用に供する目的で行うもの 」(改)

2.「市街化区域内において行う開発行為で,農業者の居住用住宅の建築の用に供する目的で行うもの

3.「市街化調整区域内において行う開発行為で,周辺地域における日常生活に必要な物品の販売を営む店舗の建築の用に供する目的で行うもの」

4.「市街化調整区域内において行う開発行為で,私立大学である建築物の建築の用に供する目的で行うもの」

【正解】

× × ×

1.「市街化区域内において行う開発行為で,図書館の建築の用に供する目的で行うもの 」(改)

【正解:

◆図書館の建築目的は開発許可不要

 図書館の建築を目的として行う開発行為は,『公益上必要な建築物のうち開発区域及びその周辺の地域における適正かつ合理的な土地利用及び環境の保全を図る上で支障がないものとして政令で定める建築物』の用に供する目的で行う開発行為なので,区域・規模を問わず,開発許可を常に受ける必要がありません(29条1項3号,2項2号,施行令21条)

●関連知識●公益上必要な建築物は建築許可は不要 〔開発区域外の区域〕
市街化調整区域のうち開発区域外の区域での建築には都道府県知事の建築許可が必要だが,公益上必要な建築物には建築許可は不要とされている。(43条1項)
公民館(昭和60年・問19)

※以下は改正により建築許可が必要になった。

医療施設(昭和62年・問20)社会福祉施設(平成元年・問18)

2.「市街化区域内において行う開発行為で,農業者の居住用住宅の建築の用に供する目的で行うもの

【正解:×

◆農林漁業を営む者の居住の用に供する建築物のための開発行為

 市街化区域では農業者の居住用住宅の建築の用に供する目的であっても,規模が1,000平方メートル以上では開発許可は必要なので,常に開発許可が必要とは言えません。

 農林業を営む者の居住の用に供する建築物,農業・林業・漁業の用に供する政令で定める建築物〔生産・集荷,生産資材の貯蔵・保管〕の建築のための開発行為は,市街化調整区域非線引き都市計画区域準都市計画区域両区域外(都市計画区域及び準都市計画区域外)の区域では,開発許可は不要です。(都市計画法・29条1項2号,2項1号の政令で定める建築物,施行令20条)

●出題歴
〔居住の用〕 昭和55年・問17,62年・問19,63年・問19,平成4年・問20,
6年・問19,9年・問18(市街化区域),10年・問18,
11年・問18(非線引き区域),13年・問18(区域指定ナシ),
14年・問19(市街化区域)
〔生産・集荷の用〕 昭和55年・問18〔温室〕,56年・問18〔温室〕(市街化区域),
平成5年・問18〔畜舎〕(市街化区域)14年・問19,
農業・林業・漁業の用に供する政令で定める建築物
第20条(法第29条第1項第2号及び第2項第1号の政令で定める建築物)

 法第29条第1項第2号及び第2項第1号の政令で定める建築物は,次に掲げるものとする。

1.畜舎,蚕室,温室,育種苗施設,家畜人工授精施設,孵卵育雛施設,搾乳施設,集乳施設その他これらに類する農産物,林産物又は水産物の生産又は集荷の用に供する建築物

2.堆肥舎,サイロ,種苗貯蔵施設,農機具等収納施設その他これらに類する農業,林業又は漁業の生産資材の貯蔵又は保管の用に供する建築物

3.家畜診療の用に供する建築物

4.用排水機,取水施設等農用地の保全若しくは利用上必要な施設の管理の用に供する建築物又は索道の用に供する建築物

5.前各号に掲げるもののほか,建築面積が90平方メートル以内の建築物

   農産物生産・集荷の用・
生産資材貯蔵又は保管
農業を営む者の居住の用
に供する建築物

農産物処理・貯蔵・加工
に供する建築物

市街化区域             規模により許可必要
            (1,000 平方メートル以上)
市街化調整区域       常に不要 規模に関係なく許可必要
(市街化調整区域の許可要件)
非線引き都市計画区域 規模により許可必要
(3,000 平方メートル以上)
準都市計画区域 規模により許可必要
(3,000 平方メートル以上)
都市計画区域及び
準都市計画区域外
規模により許可必要
(10,000 平方メートル以上)

註 「生産資材貯蔵又は保管」の用に供するものとしては,
  サイロ・堆肥舎・農機具等の収納施設など。

3.「市街化調整区域内において行う開発行為で,周辺地域における日常生活に必要な物品の販売を営む店舗の建築の用に供する目的で行うもの」

【正解:×平成元年・問18,平成9年・問18,

◆34条許可基準〔許可要件〕−物品販売店舗

           ┌─市街化調整区域以外(33条のみ)
開発許可の基準┤            ┌─建築物 or 第一種特定工作物(33条+34条)
          └─市街化調整区域┤
                        └─第二種特定工作物(33条)

 市街化調整区域内で行う開発行為で開発許可が不要なものに,『通常の管理行為,軽易な行為その他の行為で政令で定めるもの』(第29条第1項第11号)として施行令22条6号に掲げられている物品販売店舗の特例がありますが,規模が限られており,一定規模以上は当然開発許可が必要になります。

 市街化調整区域内での34条許可基準の一つに以下のものがあります。

 主として当該開発区域の周辺の地域において居住している者の日常生活のため必要な物品の販売,加工,修理等の業務を営む店舗,事業場その他これらに類する建築物の建築の用に供する目的で行う開発行為(都市計画法34条1号)

 したがって,<開発許可が常に不要>とはいえません。

●34条許可基準の出題歴
 物品販売店舗  平成元年・問18,9年・問18,
 観光資源活用  昭和55年・問18,
 農産物の処理・貯蔵・加工・  平成12年・問20,15年・問18,
 開発審査会の議を経たもの  昭和57年・問18,63年・問19,
 平成元年・問21,9年・問19,

施行令22条6号物品販売店舗の特例は開発許可が不要というだけで,後で建築許可は受けなければいけません。

●29条第1項第11号の政令で定める開発行為
第22条 法第29条第1項第11号の政令で定める開発行為は次に掲げるものとする。

六.主として当該開発区域の周辺の市街化調整区域内に居住している者の日常生活のため必要な物品の販売加工修理等の業務を営む店舗事業場その他これらの業務の用に供する建築物でその延べ面積(同一敷地内に2以上の建築物を新築する場合においてはその延べ面積の合計。以下この条及び第35条において同じ。)が50平方メートル以内のもの(これらの業務の用に供する部分の延べ面積が全体の延べ面積の50パーセント以上のものに限る。)の新築の用に供する目的で当該開発区域の周辺の市街化調整区域内に居住している者が自ら当該業務を営むために行う開発行為でその規模が100平方メートル以内であるもの

4.「市街化調整区域内において行う開発行為で,私立大学である建築物の建築の用に供する目的で行うもの」

【正解:×

◆大学の建築の目的の場合は,原則として開発許可が必要

 大学の建築を目的として行う開発行為には,開発許可が必要です。

●出題歴
〔私立大学〕 昭和60年・問19,平成5年・問18,9年・問18,13年・問18


●都市計画法の平成の過去問Archives
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