法令上の制限 実戦篇

都市計画法の過去問アーカイブス 平成12年・問18 都市計画制限・都市計画事業


建築物の建築の制限に関する次の記述のうち,都市計画法の規定によれば,誤っているものはどれか。 (平成12年・問18)

1.「都市計画施設の区域内において建築物の建築を行おうとする者は,一定の場合を除き,都道府県知事等の許可を受けなければならない。」

2.「市街地開発事業の施行区域内において建築物の建築を行おうとする者は,一定の場合を除き,都道府県知事等の許可を受けなければならない。

3.「地区計画の区域のうち,地区整備計画が定められている区域内において,建築物の建築を行おうとする者は,一定の場合を除き,都道府県知事等の許可を受けなければならない。」

4.「都市計画事業の認可等の告示があった後に,当該事業地内において都市計画事業の施行の障害となるおそれがある建築物の建築を行おうとする者は,一定の場合を除き,都道府県知事等の許可を受けなければならない。」

【正解】

×

1.「都市計画施設の区域内において建築物の建築を行おうとする者は,一定の場合を除き,都道府県知事等の許可を受けなければならない。」

2.「市街地開発事業の施行区域内において建築物の建築を行おうとする者は,一定の場合を除き,都道府県知事等の許可を受けなければならない。

【正解:2つとも

都市計画施設の区域又は市街地開発事業の施行区域での建築制限

 都市計画の告示(20条1項)があった日以降は,(都市計画事業の認可の告示がされるまでの間に,)都市計画施設の区域又は市街地開発事業の施行区域内建築物の建築〔新築・増築・改築・移転〕をしようとする者は,都道府県知事等(市の区域内では市長)の許可を受けなければいけません。(都市計画法53条1項)

 ⇒ 「将来の事業実施の支障とならない建築物」(54条の許可基準を満たしている)について許可されます。

 <54条の許可要件>

 ・都市計画に適合,支障がないもの等。 

 ・階数が2以下で,かつ,地階を有しないもので,
 主要構造部が木造・鉄骨造・コンクリートブロック造などの
 容易に移転・除却できるもの。

許可がなくてもできるもの(53条1項)

一.政令で定める軽易な行為 (階数が2階以下でかつ地階を有しない木造の建築物の改築・移転)

二.非常災害のため必要な応急措置として行う行為

三.都市計画事業の施行として行う行為又はこれに準ずる行為として政令で定める行為

四.第11条第3項後段の規定により離隔距離の最小限度及び載荷重の最大限度が定められている都市計画施設の区域内において行う行為であつて、当該離隔距離の最小限度及び載荷重の最大限度に適合するもの

五.第12条の11に規定する都市計画施設である道路の区域のうち建築物等の敷地として併せて利用すべき区域内において行う行為であつて、当該都市計画施設である道路を整備する上で著しい支障を及ぼすおそれがないものとして政令で定めるもの

■参考■ 都市計画施設,市街地開発事業,予定区域,都市計画事業の全体像

●都市計画制限の出題歴●

都市計画施設の区域 昭和56年・問19,57年・問28公,59年・問20,60年・問18,
60年・問27公,62年・問17,
平成3年・問19,7年・問18,9年・問17,12年・問18
市街地開発事業の施行区域 昭和56年・問19,62年・問17,
平成3年・問19,7年・問18,9年・問17,12年・問18
市街地開発事業等予定区域 昭和59年・問28,62年・問17,平成3年・問19,
都市計画事業の事業地 昭和56年・問19,平成10年・問17,12年・問18,16年・問17

3.「地区計画の区域のうち,地区整備計画が定められている区域内において,建築物の建築を行おうとする者は,一定の場合を除き,都道府県知事等の許可を受けなければならない。」

【正解:×

◆市町村長への建築・土地の区画形質の変更の届出

 <都道府県知事等の許可>ではなく<市町村長への届出>です。誤りの記述です。

 地区計画の区域〔施設の配置及び規模が定められている再開発等促進区・開発整備促進区又は地区整備計画が定められている区域に限る。〕内において,土地の区画形質の変更建築物の建築その他政令で定める行為を行おうとする者は,着手する30日前までに,原則として市町村長に届け出なければならない。(58条の2第1項)

●届出対象−政令で定める行為
 建築物等の用途の変更 用途変更後の建築物等が地区計画において定められた用途の制限又は用途に応じた建築物等に関する制限に適合しない場合は用途変更でも届出義務がある。(施行令38条の4第1号) 

 建築物等の形態又は意匠の変更 地区計画において建築物等の形態又は意匠の制限が定められている土地の区域では,建築物等の形態又は意匠の変更にも届出義務がある。(施行令38条の4第2号)

 木材の伐採 地区計画において、<現に存する樹林地、草地等で良好な居住環境を確保するため必要なものの保全に関する事項> が定められている土地の区域では,木竹の伐採 にも届出義務がある。(施行令38条の4第3号)

また,市町村長は,その届出に係る行為が地区計画に適合しないと認めるときは,その届出をした者に対し,その届出に係る行為に関し設計の変更その他の必要な措置をとることを勧告することができる。(58条の2第3項)

●届出事項
 行為の種類・場所・設計又は施行方法・着手予定日

 その他国土交通省令で定める事項

●届け出なくてもよいもの→届出が適用除外
・通常の管理行為,軽易な行為その他で政令で定めるもの

・非常災害のため必要な応急措置として行う行為

・国又は地方公共団体が行う行為

・都市計画事業として行う行為又はこれに準じる行為として政令で定める行為

・開発許可を要する行為その他政令で定める行為(開発許可を要する場合は届出の必要はありません。)

●記憶の節約●地区計画等での届出義務

 『地区計画等に関する都市計画』には,地区計画再開発等促進区は地区計画について都市計画で定めることができる〕・防災整備地区計画沿道地区計画集落地区計画の四つがある。(12条の4)

 各区域とも,整備計画等が定められていれば,建築物の建築・土地の区画形質の変更等を行おうとする者は,着手する30日前までに,原則として市町村長に届け出なければならない。〔地区計画等の各区域とも過去問で出題例がある。〕

 地区計画 施設の配置及び規模が定められている再開発等促進区
 又は地区整備計画』が定められている地区計画の区域内

 (都市計画法)

 防災街区整備地区計画  防災街区整備地区整備計画が定められている区域

 (密集市街地における防災街区の整備の促進に
 関する法律)

 沿道地区計画  施設の配置及び規模が定められている沿道再開発等促進区又は
 沿道地区整備計画が定められている区域

 (幹線道路の沿道の整備に関する法律)

 集落地区計画  集落地区整備計画が定められている区域

 (集落地域整備法)

 KEY WORD  着手する30日前までに,市町村長に届出
●地区計画の出題項目一覧

地区計画等(12条の4第1項) 平成7年・問18

地区計画の定義(12条の5第1項) 平成元年・問196年・問177年・問188年・問1915年・問17

地区計画の都市計画基準(13条1項14項) 平成3年・問18

都市計画で定めるもの(12条の4第2項,12条の5第2項) 昭和57年・問20

地区計画をどこに定めるか(12条の5第1項) 昭和57年・問20平成元年・問1910年・問17

地区整備計画で制限できるもの(12条の5第6項) 昭和57年・問20平成元年・問1911年・問1715年・問17

地区整備計画が定められている地区計画の区域内での建築等の届出(58条2)
 
昭和57年・問2060年・問1861年・問2062年・問17平成元年・問193年・問199年・問1712年・問18

4.「都市計画事業の認可等の告示があった後に,当該事業地内において都市計画事業の施行の障害となるおそれがある建築物の建築を行おうとする者は,一定の場合を除き,都道府県知事等の許可を受けなければならない。」

【正解:平成10年・問17,12年・問18,16年・問17

◆都市計画事業の事業地内の規制

 都市計画事業の認可の告示(62条1項)後は本格的な実行段階に入り,都市計画事業の事業地では,施行の障害のおそれのあるものは,都道府県知事等(市の区域内では市長)の許可が必要になります。(65条1項)

 ⇒建築物の建築,工作物の建設,土地の形質の変更,物件の設置・堆積等

●事業地内で国が行う行為
 事業地内で国が行う行為については,当該国の機関と都道府県知事等との協議が成立することをもって,都道府県知事の許可があったものとみなします(都市計画法・65条3項,52条の2第2項)


●都市計画法の過去問Archives
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