法令上の制限 実戦篇
都市計画法の過去問アーカイブス 平成12年・問20 開発許可の要否と手続
次の記述のうち,正しいものはどれか。(平成12年・問20) |
1.「図書館又は公民館の建築の用に供する目的で行う開発行為は,市街化調整区域内におけるものであっても,その規模の大小を問わず,開発許可を受けることなく,行うことができる。」 |
2.「市街化調整区域内における開発行為であっても,その区域内で生産される農産物の加工に必要な建築物の建築の用に供する目的で行うものについては,開発許可を受けることなく,行うことができる。」 |
3.「都道府県知事は,用途地域の定められていない土地の区域における開発行為について開発許可をするときは,建築物の建ぺい率に関する制限を定めることができるが,建築物の高さに関する制限を定めることはできない。」改 |
4.「都道府県知事は,市街化区域内の土地について開発許可をしたときは,当該許可に係る開発区域内において予定される建築物の用途,構造及び設備を開発登録簿に登録しなければならない。」 |
【正解】
1 | 2 | 3 | 4 |
○ | × | × | × |
1.「図書館又は公民館の建築の用に供する目的で行う開発行為は,市街化調整区域内におけるものであっても,その規模の大小を問わず,開発許可を受けることなく,行うことができる。」(改) |
【正解:○】 ◆図書館・公民館の建築目的は開発許可不要 図書館・公民館の建築を目的として行う開発行為は,『公益上必要な建築物の建築』の用に供する目的で行う開発行為には該当し,区域・規模によらず,開発許可を受ける必要はありません。(29条1項3号,2項2号) ●公益上必要な建築物〜設置主体には関係なく,開発許可は不要〜 「公益上必要な建築物のうち開発区域及びその周辺の地域における適正かつ合理的な土地利用及び環境の保全を図る上で支障がないものとして政令で定める建築物」(29条1項3号,施行令21条) |
2.「市街化調整区域内における開発行為であっても,その区域内で生産される農産物の加工に必要な建築物の建築の用に供する目的で行うものについては,開発許可を受けることなく,行うことができる。」 |
【正解:×】平成12年・問20,15年・問18 ◆34条許可基準〔許可要件〕−農産物の加工 ┌─市街化調整区域以外(33条のみ)
確かに,市街化区域を除いて,農林水産物の生産・集荷または生産資材の貯蔵・保管の用に供する建築物の建築を目的とした開発行為は,政令で定める農林漁業の用に供する建築物のためのものとして,開発許可は不要です。(29条1項2号,施行令20条1項,2項) しかし,マチガイやすいのですが,農林漁業の用に供する建築物の全てが開発許可不要だということではないのです。生産される農水林産物の処理・貯蔵・加工に必要な「建築物の建築・第一種特定工作物の建設」のための開発行為は,開発許可不要ではありません。 これは市街化調整区域での開発許可基準の一つになっています。〔ほかの区域でも規模により開発許可が必要になる。〕したがって,本肢は誤りの記述です。(34条4号)
|
農産物の生産・集荷の用・ 生産資材の貯蔵又は保管・ 農業を営む者の居住の用 に供する建築物 |
農産物の処理・貯蔵・加工 |
|
市街化区域 | 規模により許可必要 (1,000 平方メートル以上) |
|
市街化調整区域 | 常に不要 | 規模に関係なく許可必要 (市街化調整区域の許可要件) |
非線引き都市計画区域 | 規模により許可必要 (3,000 平方メートル以上) |
|
準都市計画区域 | 規模により許可必要 (3,000 平方メートル以上) |
|
都市計画区域及び 準都市計画区域外 |
規模により許可必要 (10,000 平方メートル以上) |
註 「生産資材の貯蔵又は保管」の用に供するものとしては,
サイロ・堆肥舎・農機具等の収納施設など。
3.「都道府県知事は,用途地域の定められていない土地の区域における開発行為について開発許可をするときは,建築物の建ぺい率に関する制限を定めることができるが,建築物の高さに関する制限を定めることはできない。」改 |
【正解:×】昭和58年・問19,59年・問18,昭和61年・問17,62年・問20,63年・問19,平成2年・問20,4年・問20,6年・問20,9年・問19,12年・問20,16年・問19, ◆用途地域の定められていない区域での開発許可の際に定める建築制限
都道府県知事〔指定都市等の区域では当該指定都市等の長〕は,用途地域の定められていない土地の区域における開発行為について開発許可をする場合に,必要があると認めるときは,当該開発区域内の土地について,建築物の建ぺい率,建築物の高さ,壁面の位置その他建築物の敷地,構造及び設備に関する制限を定めることができます。(41条1項)また,都道府県知事は,開発許可の際に定めた制限を開発登録簿に登録しなければなりません。(昭和59年,平成9年)(47条1項5号) この制限が定められると,都道府県知事が許可した場合(昭和62年,平成4年)を除いて,この制限に違反して建築物を建築することはできません。(41条2項)
|
●用途地域が定められていない土地の区域の規制
市街化調整区域 | 非線引き都市計画区域 | 準都市計画区域 | 両区域外 | |
開発許可の際に知事が定める | ○ | ○ | ○ | ○ |
工事完了公告後の開発区域での 予定建築物以外は建築禁止 |
○ | ○ | ○ | ○ |
地区計画の策定 | ○ | ○ | × | × |
特定用途制限地域 | × | ○ | ○ | × |
特定行政庁が定める制限 | ○ | ○ | ○ | × |
知事指定区域 | × | × | × | ○ |
4.「都道府県知事は,市街化区域内の土地について開発許可をしたときは,当該許可に係る開発区域内において予定される建築物の用途,構造及び設備を開発登録簿に登録しなければならない。」 |
【正解:×】昭和59年・問18,平成元年・問21,9年・問19,12年・問20 ◆開発登録簿の記載事項 「予定される建築物の用途」〔用途地域等の区域内の建築物及び第一種特定工作物を除く〕は開発登録簿の登録事項ですが,「予定される建築物の構造及び設備」は登録事項ではありません。確かに,用途地域の定められていない土地の区域で開発許可をした際に知事が定めた建築物の敷地,構造,設備の制限があればその内容を登録することになっていますが,このことと分けて考えるべきです。 都道府県知事は,開発許可をしたときは,当該許可に係る土地についての事実関係を明らかにしておくために,一定の事項を開発登録簿に必ず登録しなければなりません。(47条1項) このほか,完了検査を行って開発許可の内容に適合すると認めたときは,登録簿にその旨を附記することにもなっています。(47条2項) また,都道府県知事〔指定都市等の長〕は,開発登録簿を常に公衆の閲覧に供するように保管し,請求があったときはその写しを交付しなければいけません。(47条5項)→出題・平成2年・問20,平成6年・問20 ※用途地域等内では,建築物・第一種特定工作物の用途については,開発登録簿に登録する必要がないので,市街化区域内(必ず用途地域が定められている)で開発許可をした際に,建築物・第一種特定工作物の用途が開発登録簿に登録されることはありません。
|
過去問アーカイブス・法令制限に戻る 都市計画法の過去問アーカイブス