法令上の制限 実戦篇

都市計画法の過去問アーカイブス 平成元年・問19 地区計画


都市計画法に規定する地区計画に関する次の記述のうち,誤っているものはどれか。(平成元年・問19)

1.「地区計画は,建築物の建築形態,公共施設その他の施設の配置等からみて,一体としてそれぞれの区域の特性にふさわしい態様を備えた良好な環境の各街区を整備し,及び保全するための計画である。」

2.「地区計画の区域〔施設の配置及び規模が定められている再開発等促進区もしくは開発整備促進区,又は地区整備計画が定められている区域に限る。〕内において,土地の区画形質の変更,建築物の建築等を行った者は,当該行為の後30日以内に,行為の種類,場所等一定の事項を市町村長に届け出なければならない。

3.「地区計画に関する都市計画は,都市計画区域外においては定めることができない。」

4.「地区計画については,建築物の容積率の最高限度又は最低限度を都市計画に定めることができる。」

【正解】

×

●地区計画の出題項目一覧

地区計画等(12条の4第1項) 平成7年・問18

地区計画の定義(12条の5第1項) 平成元年・問196年・問177年・問188年・問1915年・問17

地区計画の都市計画基準(13条1項14項) 平成3年・問18

都市計画で定めるもの(12条の4第2項,12条の5第2項) 昭和57年・問20

地区計画をどこに定めるか(12条の5第1項) 昭和57年・問20平成元年・問1910年・問17

地区整備計画で制限できるもの(12条の5第6項) 昭和57年・問20平成元年・問1911年・問1715年・問17

地区整備計画が定められている地区計画の区域内での建築等の届出(58条2)
 
昭和57年・問2060年・問1861年・問2062年・問17平成元年・問193年・問199年・問1712年・問18

1.「地区計画は,建築物の建築形態,公共施設その他の施設の配置等からみて,一体としてそれぞれの区域の特性にふさわしい態様を備えた良好な環境の各街区を整備し,及び保全するための計画である。」

【正解:

◆地区計画

地区計画=建築物の建築形態,公共施設その他の施設の配置等からみて,一体としてそれぞれの区域の特性にふさわしい態様を備えた良好な環境の各街区を整備し,開発し,及び保全するための計画(12条の5第1項)
 ⇒ 簡単に言えば、

 地区計画とは,その地区の特性にふさわしい良好な環境の市街地を形成するために,土地利用を計画的に誘導してコントロールしていく「地区レベルでの都市計画」です。

建設省・都市局長通達(昭和56.10.6)

 「地区計画制度は、それぞれの地区の特性に応じたきめ細かな街作りの手段として有効に機能することを意図して創設された制度」

 地区計画制度は、昭和55年の法改正により創設されたものです。

●都市計画基準−地区計画

▼都市計画法13条1項14号

 地区計画は,公共設備の整備,建築物の建築その他の土地利用の現状及び将来の見通しを勘案し,当該地区の各街区における防災安全衛生等に関する機能が確保されかつその良好な環境の形成又は保持のためその区域の特性に応じて合理的な土地利用が行われることを目処として,当該計画に従って秩序ある開発行為,建築又は施設の整備が行われることとなるように定めること。

2.「地区計画の区域〔施設の配置及び規模が定められている再開発等促進区もしくは開発整備促進区,又は地区整備計画が定められている区域に限る。〕内において,土地の区画形質の変更,建築物の建築等を行った者は,当該行為の後30日以内に,行為の種類,場所等一定の事項を市町村長に届け出なければならない。」

【正解:×

◆市町村長への建築・土地の区画形質の変更の届出

 市町村長へ届け出るのは,<当該行為の後30日以内>ではなく<着手する30日前まで>です。

 地区計画の区域〔施設の配置及び規模が定められている再開発等促進区,もしくは,開発整備促進区,又は地区整備計画が定められている区域に限る。〕内において,土地の区画形質の変更建築物の建築その他政令で定める行為を行おうとする者は,着手する30日前までに,原則として市町村長に届け出なければならない。(58条の2第1項)

●届出対象−政令で定める行為
 建築物等の用途の変更 用途変更後の建築物等が地区計画において定められた用途の制限又は用途に応じた建築物等に関する制限に適合しない場合は用途変更でも届出義務がある。(施行令38条の4第1号) 

 建築物等の形態又は意匠の変更 地区計画において建築物等の形態又は意匠の制限が定められている土地の区域では,建築物等の形態又は意匠の変更にも届出義務がある。(施行令38条の4第2号)

 木材の伐採 地区計画において、<現に存する樹林地、草地等で良好な居住環境を確保するため必要なものの保全に関する事項> が定められている土地の区域では,木竹の伐採 にも届出義務がある。(施行令38条の4第3号)

 また,市町村長は,その届出に係る行為が地区計画に適合しないと認めるときは,その届出をした者に対し,その届出に係る行為に関し設計の変更その他の必要な措置をとることを勧告することができる。(58条の2第3項)

●届出事項
 行為の種類・場所・設計又は施行方法・着手予定日

 その他国土交通省令で定める事項

●届け出なくてもよいもの→届出が適用除外
・通常の管理行為,軽易な行為その他で政令で定めるもの

・非常災害のため必要な応急措置として行う行為

・国又は地方公共団体が行う行為

・都市計画事業として行う行為又はこれに準じる行為として政令で定める行為

・開発許可を要する行為その他政令で定める行為(開発許可を要する場合は届出の必要はありません。)

3.「地区計画に関する都市計画は,都市計画区域外においては定めることができない。」

【正解:

◆地区計画をどこに定めるか

 地区計画は,都市計画区域内で,(準都市計画区域や両区域外には定めることができない。)

用途地域の定められている土地の区域

用途地域の定められていない土地の区域のうち,開発・整備事業区域不良街区環境形成防止区域優れた街区環境保全区域に該当する区域

 に策定することができます。

用途地域の
定められている土地の区域
 区域区分の定められた
 都市計画区域
 区域要件

 なし〔どこでも策定可能〕

 区域区分の定められていない
 都市計画区域
用途地域の
定められていない土地の区域
 市街化調整区域  区域要件

開発・整備事業区域

不良街区環境形成防止区域

優れた街区環境保全区域

 区域区分の定められていない
 都市計画区域

4.「地区計画については,建築物の容積率の最高限度又は最低限度を都市計画に定めることができる。」

【正解:昭和57年・問20,平成元年・問19,11年・問17,15年・問17,

◆地区整備計画

 地区計画では,「地区整備計画」を都市計画に定めます。(12条の5第2項)

 この地区整備計画では,地区施設の配置及び規模のほか,地区計画の目的を達成するために必要な建築物等の用途の制限,建築物・工作物・敷地についての制限事項を定めることができます。これにより地区計画の区域の街作りを誘導・整備していくことになります。(12条の5第6項)

建築物等の用途の制限,建築物の容積率の最高限度又は最低限度(平成元年・問19),建築物の建ぺい率の最高限度,建築物の敷地面積又は建築面積の最低限度(昭和57年・問20)壁面の位置の制限,壁面後退区域における工作物の設置の制限,建築物等の高さの最高限度又は最低限度建築物等の形態又は色彩その他の意匠の制限建築物の緑化率の最低限度,その他建築物等に関する事項で政令で定めるもの〔垣・さくの構造の制限〕

 地区整備計画にどんな内容を盛り込んでいいかを定めているのが12条の5第6項です。

地区整備計画においては,次に掲げる事項(市街化調整区域内において定められる地区整備計画については,建築物の容積率の最低限度,建築物の建築面積の最低限度及び建築物等の高さの最低限度を除く。[11年・問17]のうち,地区計画の目的を達成するため必要な事項を定めるものとする。

1.地区施設の配置及び規模

2.建築物等の用途の制限,建築物の容積率の最高限度又は最低限度,建築物の建ぺい率の最高限度,建築物の敷地面積又は建築面積の最低限度壁面の位置の制限,壁面後退区域における工作物の設置の制限,建築物等の高さの最高限度又は最低限度建築物等の形態又は色彩その他の意匠の制限建築物の緑化率の最低限度その他建築物等に関する事項で政令で定めるもの〔垣・さくの構造の制限〕

3.現に存する樹林地、草地等で良好な居住環境を確保するため必要なものの保全に関する事項

4.前3号に掲げるもののほか,土地の利用に関する事項で政令で定めるもの

●参考知識

地区施設・・・主として街区内の居住者等の利用に供される道路,公園その他の
          政令で定める施設(12条の5第2項3号)

地区整備計画を定めない地区計画・・・地区計画を都市計画に定める際に,区域の全部又は一部について地区整備計画を定めることができない特別な事情があるときは,当該区域の全部又は一部について地区整備計画を定めなくてもよいことになっています。(12条の5第7項)

地区整備計画と市町村の条例・・・地区整備計画等が定められている区域内における建築物の制限に関する事項を,地区整備計画の内容に基づいて市町村の条例で定めることができます。(建築基準法・68条の2・第1項)


●都市計画法の平成の過去問Archives
昭和63年問18昭和63年問19昭和63年問20平成元年問18,平成元年問19,平成元年問21平成2年問19平成2年問20平成3年問18平成3年問19平成3年問20平成4年問18平成4年問19平成4年問20平成5年問18平成5年問19平成5年問20平成6年問17平成6年問19平成6年問20平成7年問18平成7年問19平成7年問20平成8年問19平成8年問20平成8年問21平成9年問17平成9年問18平成9年問19平成10年問17平成10年問18平成10年問19平成11年問17平成11年問18平成11年問19平成12年問18平成12年問19平成12年問20平成13年問17平成13年問18平成13年問19平成14年問17平成14年問18平成14年問19平成15年問17平成15年問18平成15年問19平成16年問17平成16年問18平成16年問19

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