法令上の制限 実戦篇

都市計画法の過去問アーカイブス 昭和60年・問18 小問集合

開発許可・地区計画・都市計画施設・風致地区


都市計画法に関する次の記述のうち,正しいものはどれか。(昭和60年・問18)

1.「区域区分の定められていない都市計画区域内において,一定規模以上の開発行為をしようとする者は,原則として,都道府県知事の許可を受けなければならない。」

2.「地区計画の区域内において建築物の建築を行おうとする者は,原則として,市町村長の許可を受けなければならない。」

3.「都市計画施設の区域内において,建築物の建築をしようとする者は,原則として,都道府県知事等の許可を受けなければならないが,木造2階建てで地階を有しない建築物の建築については,あらかじめ都道府県知事等に届け出れば許可を要しないこととされている。」

4.「風致地区内においては,地方公共団体の条例で,都市の風致を維持するため必要な規制をすることができるが,規制の対象は建築物の建築に限られる。」

【正解】

× × ×

1.「区域区分の定められていない都市計画区域内において,一定規模以上の開発行為をしようとする者は,原則として,都道府県知事の許可を受けなければならない。」

【正解:昭和55年・問17,昭和57年問18,昭和58年問19,昭和60年問18, 

◆非線引き都市計画区域

 区域区分が定められていない都市計画区域〔非線引き都市計画区域〕で行う開発行為は,3,000平方メートル以上の場合は,原則として開発許可が必要です。(都市計画法・29条1項1号,施行令19条1項)

 ただし,都道府県知事〔指定都市等の長〕は,市街化の状況等により,特に必要があると認める場合は,都道府県の規則〔指定都市等の規則〕で,

 300平方メートル以上3,000平方メートル未満で,開発許可の必要な規模を別に定めることができます。(都市計画法施行令19条1項第4欄)

2.「地区計画の区域内において建築物の建築を行おうとする者は,原則として,市町村長の許可を受けなければならない。」

【正解:×地区計画 昭和57年問20,昭和60年問18,昭和61年問20,昭和62年問17

◆30日前までに市町村長に届出

 × 市町村長の許可 →  市町村長へ届出

 『施設の配置及び規模が定められている再開発等促進区もしくは開発整備促進区又は地区整備計画』が定められている地区計画の区域内において,土地の区画形質の変更建築物の建築その他政令で定める行為を行おうとする者は,着手する30日前までに,原則として市町村長に届け出なければならない。(58条の2第1項)

〔届出事項のうち国土交通省令で定める事項を変更する場合も,変更に着手する30日前までに,市町村長への届出なければならない。(58条の2第2項)

●届出対象−政令で定める行為
 建築物等の用途の変更 用途変更後の建築物等が地区計画において定められた用途の制限又は用途に応じた建築物等に関する制限に適合しない場合は用途変更でも届出義務がある。(施行令38条の4第1号) 

 建築物等の形態又は意匠の変更 地区計画において建築物等の形態又は意匠の制限が定められている土地の区域では,建築物等の形態又は意匠の変更にも届出義務がある。(施行令38条の4第2号)

 木材の伐採 地区計画において、<現に存する樹林地、草地等で良好な居住環境を確保するため必要なものの保全に関する事項> が定められている土地の区域では,木竹の伐採 にも届出義務がある。(施行令38条の4第3号)

 また,市町村長は,その届出に係る行為が地区計画に適合しないと認めるときは,その届出をした者に対し,その届出に係る行為に関し設計の変更その他の必要な措置をとることを勧告することができる。(58条の2第3項)

●届出事項
 行為の種類・場所・設計又は施行方法・着手予定日

 その他国土交通省令で定める事項

●届け出なくてもよいもの→届出義務が適用除外
・通常の管理行為,軽易な行為その他で政令で定めるもの

・非常災害のため必要な応急措置として行う行為

・国又は地方公共団体が行う行為

・都市計画事業として行う行為又はこれに準じる行為として政令で定める行為

・開発許可を要する行為その他政令で定める行為(開発許可を要する場合は届出の必要はありません。)

●地区計画の出題項目一覧

地区計画等(12条の4第1項) 平成7年・問18

地区計画の定義(12条の5第1項) 平成元年・問196年・問177年・問188年・問1915年・問17

地区計画の都市計画基準(13条1項14項) 平成3年・問18

都市計画で定めるもの(12条の4第2項,12条の5第2項) 昭和57年・問20

地区計画をどこに定めるか(12条の5第1項) 昭和57年・問20平成元年・問1910年・問17

地区整備計画で制限できるもの(12条の5第6項) 昭和57年・問20平成元年・問1911年・問1715年・問17

地区整備計画が定められている地区計画の区域内での建築等の届出(58条2)
 
昭和57年・問2060年・問1861年・問2062年・問17平成元年・問193年・問199年・問1712年・問18

3.「都市計画施設の区域内において,建築物の建築をしようとする者は,原則として,都道府県知事等の許可を受けなければならないが,木造2階建てで地階を有しない建築物の建築については,あらかじめ都道府県知事等に届け出れば許可を要しないこととされている。」

【正解:×昭和56年問19,昭和59年・問20,昭和60年・問18,昭和62年問17
      
【参考問題】昭和45年昭和50年

都市計画施設の区域内の建築制限

 都市計画の告示(20条1項)があった日以降は,(都市計画事業の認可の告示がされるまでの間に,)都市計画施設の区域又は市街地開発事業の施行区域内建築物の建築〔新築・増築・改築・移転〕をしようとする者は,都道府県知事等(市の区域内では市長)の許可を受けなければいけません。(都市計画法53条1項)

 ⇒ 「将来の事業実施の支障とならない建築物」(54条の許可基準を満たしている)について許可されます。

 都市計画では,都市施設〔公共施設・公益施設〕の位置,規模,構造などを定め,計画的に整備していきます。

 都市計画として決定された都市施設(「都市計画施設」)の区域内では,都市施設を整備する事業が進行していくので,事業が円滑に実施できるように,建築物の建築が制限されます。⇒ 事業の妨げになるような建築物の建築は制限され,54条の許可基準を満たすものでなければ許可を受けられません。

 本肢の<木造2階建てで地階を有せず,かつ,容易に移転又は除却できると認められる建築物>は,54条の許可基準の一つであり〔下記参照〕,許可を受けなければならないので,<あらかじめ都道府県知事に届け出れば許可を要しない>とする本肢は誤りです。

 当該建築物が次に掲げる要件に該当し、かつ、容易に移転し、又は除却することができるものであると認められること。(都市計画法54条3号)

イ 階数が2以下で、かつ、地階を有しないこと。

ロ 主要構造部(建築基準法第2条第5号に定める主要構造部をいう。)が木造、鉄骨造、コンクリートブロック造その他これらに類する構造であること。

 ⇒ <階数が2階以下でかつ地階を有しない木造の建築物の改築・移転>ならば,政令で定める軽易な行為として許可がなくてもできますが(施行令37条),本肢では<階数が2階以下でかつ地階を有しない木造の建築物の建築>なので許可が必要です。

許可がなくてもできるもの(53条1項)

一.政令で定める軽易な行為 (階数が2階以下でかつ地階を有しない木造の建築物の改築・移転)

二.非常災害のため必要な応急措置として行う行為

三.都市計画事業の施行として行う行為又はこれに準ずる行為として政令で定める行為

四.第11条第3項後段の規定により離隔距離の最小限度及び載荷重の最大限度が定められている都市計画施設の区域内において行う行為であつて、当該離隔距離の最小限度及び載荷重の最大限度に適合するもの

五.第12条の11に規定する都市計画施設である道路の区域のうち建築物等の敷地として併せて利用すべき区域内において行う行為であつて、当該都市計画施設である道路を整備する上で著しい支障を及ぼすおそれがないものとして政令で定めるもの

●間違えないでください

階数が2階以下でかつ地階を有しない
木造の建築物の
改築・移転
 軽易な行為として許可不要
階数が2階以下でかつ地階を有しない
木造の建築物の
新築
 許可が必要

●都市計画制限の出題歴●

都市計画施設の区域 昭和56年・問19,57年・問28公,59年・問20,60年・問18,
60年・問27公,62年・問17,
平成3年・問19,7年・問18,9年・問17,12年・問18
市街地開発事業の施行区域 昭和56年・問19,62年・問17,
平成3年・問19,7年・問18,9年・問17,12年・問18
市街地開発事業等予定区域 昭和59年・問28,62年・問17,平成3年・問19,
都市計画事業の事業地 昭和56年・問19,平成10年・問17,12年・問18,16年・問17

4.「風致地区内においては,地方公共団体の条例で,都市の風致を維持するため必要な規制をすることができるが,規制の対象は建築物の建築に限られる。」

【正解:×昭和56年問19,60年問18,61年問21,

◆風致地区内での地方公共団体の条例による規制

 風致地区は『都市の風致を維持するために定める地区』で都市計画で定めていますが(都市計画法8条1項7号,9条20号),都市の風致の維持に影響を及ぼすおそれのある行為については規制をする必要があります。

 風致地区内における建築物等の建築建築物等の色彩の変更宅地の造成木竹の伐採屋外における土石,廃棄物又は再生資源の堆積その他の行為については,政令で定める基準に従い,地方公共団体の条例で都市の風致を維持するため必要な規制をすることができます。(58条1項)

 本肢は<規制の対象は建築物の建築に限られる>としているため,誤りです。

風致地区は都市計画で定める

風致地区の規制は条例で定める

 10ha以上の風致地区で
 2以上の市町村の区域
 にわたるもの
 都道府県の条例
 その他の風致地区  市町村〔都の特別区を含む〕の条例

※10ha以内の風致地区の全部と10ha以上の風致地区で一の市町村内にあるもの

 また,それらの行為をしようとする場合は,許可を受けなければいけません。(風致地区内における建築等の規制に係る条例の制定に関する基準を定める政令3条)

風致地区での許可権者

 10ha以上の風致地区で
 2以上の市町村の区域
 にわたるもの
 都道府県知事の許可
 その他の風致地区  市町村〔都の特別区を含む〕の長の許可

●都市計画法の昭和の過去問Archives
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