法令上の制限 実戦篇

都市計画法の過去問アーカイブス 昭和58年・問19 開発許可と建築制限


次の記述のうち,都市計画法上正しいものはどれか。(昭和58年・問19)

1.「市街化調整区域であっても,いったん開発許可を受けた開発区域内であれば,予定されていた以外のどのような建築物でも自由に新築することができる。」

2.「都道府県知事は,用途地域の定められていない土地の区域における開発行為について開発許可をする場合において必要があると認めるときは,建築物の建ぺい率,建築物の高さ等の制限を定めることができる。」

3.「区域区分の定められていない都市計画区域内において開発行為を行う場合には,どのような開発行為であっても許可を受ける必要はない。」

4.「市街化調整区域のうち開発許可を受けた区域以外の区域内においては,一切の建築行為が禁止されている。」

【正解】

× × ×

1.「市街化調整区域であっても,いったん開発許可を受けた開発区域内であれば,予定されていた以外のどのような建築物でも自由に新築することができる。」

【正解:×昭和58年・問19,59年・問20,昭和61年・問17,平成元年・問21,5年・問20,7年・問19,11年・問18,15年・問19,16年・問19,

◆開発区域内の建築制限

本肢は工事完了公告前,工事完了公告後のどちらを言っているのか不明瞭ですが,『予定されていた以外の・・・建築物』とあることから工事完了公告後のことを言っていると考えられます。

 (1) 工事完了公告前

 開発許可を受けた開発区域内の土地では,工事完了公告があるまでの間は,原則として建築物の建築や特定工作物の建設は禁止されています。(37条1項)

●工事完了公告までの間でも建築・建設できる場合
・当該開発行為に関する工事用の仮設建築物・特定工作物の建築・建設

・都道府県知事〔指定都市等の区域では当該指定都市等の長〕が支障ないと認めたとき

・開発行為に同意していない者が,その権利行使として建築物を建築又は特定工作物を建設

 (2) 工事完了公告後

 工事完了公告があった後は,用途地域が定められていない開発区域内で,予定建築物以外の建築物を新築することは,都道府県知事〔指定都市等の区域では当該指定都市等の長〕が支障がないと認めて許可した場合を除き,禁止されています。(42条1項)

開発区域 工事完了公告後に禁止されているもの
用途地域が
定められていない場合
(都道府県知事が支障がないと認めて許可した場合を除く。)

・予定建築物以外の建築物又は特定工作物の新築・新設

・建築物の改築又は用途変更して
 予定建築物以外の建築物とすること

用途地域が
定められている場合
用途地域の内容に適合しているものであれば,
土地の利用目的には反していないので,
予定建築物以外の建築物の建築は可能。

開発区域が「市街化調整区域」,「非線引き都市計画区域」,「準都市計画区域」,「両区域外」にあるときには,当該開発区域に用途地域が定められていない場合があります。

2.「都道府県知事は,用途地域の定められていない土地の区域における開発行為について開発許可をする場合において必要があると認めるときは,建築物の建ぺい率,建築物の高さ等の制限を定めることができる。」

【正解:昭和58年・問19,59年・問18,昭和61年・問17,62年・問20,63年・問19,平成2年・問20,4年・問20,6年・問20,9年・問19,12年・問20,16年・問19,

◆用途地域の定められていない区域での開発許可の際に定める建築制限

 都道府県知事〔指定都市等の区域では当該指定都市等の長〕は,用途地域の定められていない土地の区域における開発行為について開発許可をする場合に,必要があると認めるときは,当該開発区域内の土地について,建築物の建ぺい率建築物の高さ壁面の位置その他建築物の敷地,構造及び設備に関する制限を定めることができます。(41条1項)また,都道府県知事は,開発許可の際に定めた制限を開発登録簿に登録しなければなりません。(昭和59年,平成9年)(47条1項5号)

 この制限が定められると,都道府県知事が許可した場合(昭和62年,平成4年)を除いて,この制限に違反して建築物を建築することはできません。(41条2項)

●この制限が適用除外される場合
都道府県知事が当該区域及びその周辺の地域における環境の保全上支障がないと認め,又は公益上やむを得ないものとして許可したもの

用途地域の定められていない土地の区域

 「用途地域の定められていない土地の区域」があるところは,具体的にイメージすると以下のようになります。

 市街化調整区域,区域区分が定められていない都市計画区域,準都市計画区域,

 都市計画区域及び準都市計画区域外の区域〔←もともとこの区域では用途地域がない〕

用途地域が定められている土地の区域

 ⇒ 上記の規定は「用途地域の定められていない土地の区域における開発行為」についてのものなので,用途地域の定められている区域内では適用されません。

 市街化区域  地域地区のうち少なくとも用途地域を定める(13条1項7号)
 市街化調整区域  原則として定めないが,定めることもできる。(13条1項7号)

 用途地域は,区域区分が定められていない都市計画区域,準都市計画区域でも,市町村が都市計画に定めることができる。

●原題
都道府県知事は,市街化調整区域における開発行為について開発許可をする場合において必要があると認めるときは,建築物の建ぺい率,建築物の高さ等の制限を定めることができる。」
【経緯】本肢は,改正前の41条1項です。改正前は,知事が開発許可に際して建築制限を定めることができるのは,本則41条1項の市街化調整区域と附則第5項の未線引き都市計画区域のうち用途地域の定められていない区域でした。平成12年の改正により,準都市計画区域,両区域外で開発許可が適用されることになったため,改正後の41条1項では<用途地域の定められていない区域>という表現になりました。
●用途地域が定められていない土地の区域
 用途地域が定められていない土地の区域での建築物等の規制には,都市計画法・建築基準法とも,次のようなメニューを用意している。〔『用途地域が定められていない区域』は,条文により指し示す区域が微妙にスライドしているので,注意しないといけません。〕

用途地域の定められていない土地の区域について開発許可をする際に,都道府県知事が建築物の敷地,構造及び設備に関する制限を定める。(都市計画法・41条1項)

・工事完了公告があった後は,用途地域が定められていない開発区域内で,予定建築物以外の建築物を新築することは,都道府県知事が支障がないと認めて許可した場合を除き,禁止されている。(都市計画法・42条1項)

・地区計画〔用途地域が定められていない土地の区域(市街化調整区域・非線引都市計画区域)のうち,開発・整備事業区域不良街区環境形成防止区域優れた街区環境保全区域に該当する区域に策定することができます。〕(都市計画法・12条の5第1項)

特定用途制限地域用途地域が定められていない区域(市街化調整区域を除く)・(非線引き都市計画区域・準都市計画区域)〕(都市計画法・9条14項)→市町村の都市計画で決定し(15条1項),「用途の概要」は都市計画で定めるが(都市計画法・8条3項2号ホ),「用途の制限」や「建築物の敷地,構造及び設備に関する制限」は,地方公共団体の条例で定める。(建築基準法49条の2,50条)

用途地域の指定のない区域(市街化調整区域・非線引き都市計画区域・準都市計画区域)特定行政庁が当該区域を区分して都道府県都市計画審議会の議を経て定めるもの(建ぺい率・容積率・高さ制限など)

都市計画区域及び準都市計画区域外の区域であっても,都道府県知事が関係市町村の意見を聴いて指定する区域内においては,地方公共団体は,必要と認めるときは,条例で建築物の敷地,構造及び設備に関する制限を定めることができる。(建築基準法68条の9)

●用途地域が定められていない土地の区域の規制

   市街化調整区域 非線引き都市計画区域 準都市計画区域 両区域外
開発許可の際に知事が定める        
工事完了公告後の開発区域での
予定建築物以外は建築禁止
       
地区計画の策定      ×  ×
特定用途制限地域  ×      ×
特定行政庁が定める制限        ×
知事指定区域  ×  ×  ×  

3.「区域区分の定められていない都市計画区域内において開発行為を行う場合には,どのような開発行為であっても許可を受ける必要はない。」

【正解:×昭和55年問17,57年問18,58年問19,60年問18,

◆区域区分の定められていない都市計画区域

 区域区分の定められていない都市計画区域〔非線引き都市計画区域〕内で行う開発行為の規模が3,000平方メートル以上の場合,原則として開発許可が必要です。

 ただし,都道府県知事〔指定都市等の長〕は,市街化の状況等により,特に必要があると認める場合は,都道府県の規則〔指定都市等の規則〕で,

 300平方メートル以上3,000平方メートル未満で,開発許可の必要な規模を別に定めることができます。(都市計画法施行令19条1項第4欄)

4.「市街化調整区域のうち開発許可を受けた区域以外の区域内においては,一切の建築行為が禁止されている。」

【正解:×昭和58年問19,60年問19,61年問17,62年問20,63年問19, 

◆市街化調整区域:開発許可を受けた開発区域以外の土地での建築制限

 市街化調整区域では,開発行為を伴う場合は開発許可,開発行為を伴わない場合も建築許可を必要として,都道府県知事〔指定都市等の長〕の許可なく建築物の建築や用途変更ができないようになっています。無秩序な市街化を防止するためです。

 市街化調整区域のうち開発許可を受けた区域以外の区域内においては,都道府県知事の許可を受けなければ,建築物の新築,改築,用途変更第一種特定工作物の新設をすることができません(43条1項)

 しかし,どんな場合でもできないのではなく,以下の場合は許可がなくてもできます。したがって,一切の建築行為が禁止されているのではありません。

農林漁業の用に供する政令で定める建築物〔農林漁業の生産・集荷,生産資材の貯蔵・保管などの用に供するもの〕又はその業務を行う者の居住の用に供する建築物の新築,改築,これらへの用途変更 (昭和60年,平成16年)

公益上必要な建築物の新築,改築,これらへの用途変更 (昭和60年,62年,平成元年)
 〔駅舎等の鉄道施設,図書館,博物館,公民館,変電所その他政令で定めるもの〕

都市計画事業の施行として行う建築物の新築,改築,用途変更,第一種特定工作物の新設(昭和62年,平成15年)

政令で定める開発行為(都市計画事業,土地区画整理事業,市街地再開発事業,住宅街区整備事業として行われる開発行為)が行われた土地の区域内において行う建築物の建築,改築,用途変更,第一種特定工作物の新設(平成5年)

非常災害のため必要な応急措置として行う建築物の新築,改築,用途変更,第一種特定工作物の新設(平成元年,平成4年)

仮設建築物の新築 (昭和60年)

通常の管理行為,軽易な行為その他の行為で政令で定めるもの

〔注意〕・国,都道府県等の地方公共団体が行う建築物の新築,改築,用途変更,第一種特定工作物の新設 も,原則として建築許可が必要ですが,国の機関,都道府県等と知事との協議が成立することをもって,建築許可があったものとみなされます。(都市計画法43条3項)

註 市街化調整区域のうち開発許可を受けた区域以外の区域内では,第二種特定工作物は,許可がなくても建設できます。


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