法令上の制限 実戦篇

都市計画法の過去問アーカイブス 昭和57年・問20・地区計画


都市計画法に規定する地区計画に関する次の記述のうち,誤っているものはいくつあるか。(昭和57年・問20)

1.「地区計画に関する都市計画は,市街化調整区域内においては定めることができない。」

2.「地区計画については,当該地区計画の目標その他当該区域の整備,開発及び保全に関する方針を都市計画に定めなくてはならない。」

3.「地区計画については,建築物の敷地面積の最低限度を都市計画に定めることができる。」

4.「地区計画の区域内において建築物の建築を行おうとする者は,市町村長の許可を受けなければならない。」

【正解】出題後の法改正により誤りが1肢だけではなくなったため,個数問題にしました。

× ×

誤っているものは2つある。

1.「地区計画に関する都市計画は,市街化調整区域内においては定めることができない。」〔出題後の法改正により正誤が変更になっています。〕

【正解:×平成元年問19肢3

◆地区計画の策定対象区域

 地区計画等に関する都市計画は,すべて市町村が定めることとされています。

地区計画=建築物の建築形態,公共施設その他の施設の配置等からみて,一体としてそれぞれの区域の特性にふさわしい態様を備えた良好な環境の各街区を整備し,開発し,及び保全するための計画
 ⇒ 簡単に言えば、

 地区計画とは,その地区の特性にふさわしい良好な環境の市街地を形成するために,土地利用を計画的に誘導してコントロールしていく「地区レベルでの都市計画」です。

建設省・都市局長通達(昭和56.10.6)

 「地区計画制度は、それぞれの地区の特性に応じたきめ細かな街作りの手段として有効に機能することを意図して創設された制度」

 地区計画制度は、昭和55年の法改正により創設されたものです。

 地区計画は,都市計画区域内で,(準都市計画区域には定めることができない。)

用途地域の定められている土地の区域

用途地域の定められていない土地の区域のうち,開発・整備事業区域不良街区環境形成防止区域優れた街区環境保全区域に該当する区域

 に策定することができます。

用途地域の
定められている土地の区域
 区域区分の定められた
 都市計画区域
 区域要件

 なし〔どこでも策定可能〕

 区域区分の定められていない
 都市計画区域
用途地域の
定められていない土地の区域
 市街化調整区域  区域要件

開発・整備事業区域

不良街区環境形成防止区域

優れた街区環境保全区域

 区域区分の定められていない
 都市計画区域

 したがって,市街化調整区域でも区域要件を満たしているならば,地区計画を策定することができるので,本肢は誤りです。

 市街化調整区域内の地区計画の例-スプロール防止型(浜松市・PDF)

●地区計画の定義と立地 (都市計画法12条の5)
第12条の5(地区計画)  地区計画は、建築物の建築形態、公共施設その他の施設の配置等からみて、一体としてそれぞれの区域の特性にふさわしい態様を備えた良好な環境の各街区を整備し、開発し、及び保全するための計画とし、次の各号のいずれかに該当する土地の区域について定めるものとする。

一  用途地域が定められている土地の区域

二  用途地域が定められていない土地の区域のうち次のいずれかに該当するもの

イ 住宅市街地の開発その他建築物若しくはその敷地の整備に関する事業が行われる、又は行われた土地の区域(開発・整備事業区域)

ロ 建築物の建築又はその敷地の造成が無秩序に行われ、又は行われると見込まれる一定の土地の区域で、公共施設の整備の状況、土地利用の動向等からみて不良な街区の環境が形成されるおそれがあるもの(不良街区環境形成防止区域)

ハ 健全な住宅市街地における良好な居住環境その他優れた街区の環境が形成されている土地の区域(優れた街区環境保全区域)

2.「地区計画については,当該地区計画の目標その他当該区域の整備,開発及び保全に関する方針を都市計画に定めなくてはならない。」

【正解:

◆地区計画の目標,区域の整備・開発・保全の方針

 地区計画では,名称・位置及び区域・区域の面積(12条の4第2項)のほか,「地区計画の目標」,「区域の整備・開発・保全の方針」,「地区整備計画」も都市計画に定めます。(12条の5第2項)

位置の指定等 名称・位置及び区域・区域の面積
地区計画の方針 地区計画の目標や,区域の整備・開発・保全の方針
(地区の目標や将来像)
地区整備計画 地区計画の区域内の全部または一部について、
地区計画の方針に従って整備していく計画のこと
(公共施設の配置,建築物の建て方のルール)

●都市計画基準−地区計画

▼都市計画法13条1項14号

 地区計画は,公共設備の整備,建築物の建築その他の土地利用の現状及び将来の見通しを勘案し,当該地区の各街区における防災安全衛生等に関する機能が確保されかつその良好な環境の形成又は保持のためその区域の特性に応じて合理的な土地利用が行われることを目処として,当該計画に従って秩序ある開発行為,建築又は施設の整備が行われることとなるように定めること。

3.「地区計画については,建築物の敷地面積の最低限度を都市計画に定めることができる。」

【正解:昭和57年・問20,平成元年・問19,11年・問17,15年・問17,

◆地区整備計画

 地区計画では,「地区整備計画」を都市計画に定めます。(12条の5第2項)

 この地区整備計画では,地区施設の配置及び規模のほか,地区計画の目的を達成するために必要な建築物等の用途の制限,建築物・工作物・敷地についての制限事項を定めることができます。これにより地区計画の区域の街作りを誘導・整備していくことになります。(12条の5第6項)

建築物等の用途の制限,建築物の容積率の最高限度又は最低限度(平成元年・問19),建築物の建ぺい率の最高限度,建築物の敷地面積又は建築面積の最低限度(昭和57年・問20)壁面の位置の制限,壁面後退区域における工作物の設置の制限,建築物等の高さの最高限度又は最低限度建築物等の形態又は色彩その他の意匠の制限建築物の緑化率の最低限度,その他建築物等に関する事項で政令で定めるもの〔垣・さくの構造の制限〕

 地区整備計画にどんな内容を盛り込んでいいかを定めているのが12条の5第6項です。

地区整備計画においては,次に掲げる事項(市街化調整区域内において定められる地区整備計画については,建築物の容積率の最低限度,建築物の建築面積の最低限度及び建築物等の高さの最低限度を除く。[11年・問17]のうち,地区計画の目的を達成するため必要な事項を定めるものとする。

1.地区施設の配置及び規模

2.建築物等の用途の制限,建築物の容積率の最高限度又は最低限度,建築物の建ぺい率の最高限度,建築物の敷地面積又は建築面積の最低限度壁面の位置の制限,壁面後退区域における工作物の設置の制限,建築物等の高さの最高限度又は最低限度建築物等の形態又は色彩その他の意匠の制限建築物の緑化率の最低限度その他建築物等に関する事項で政令で定めるもの〔垣・さくの構造の制限〕

3.現に存する樹林地、草地等で良好な居住環境を確保するため必要なものの保全に関する事項

4.前3号に掲げるもののほか,土地の利用に関する事項で政令で定めるもの

●参考知識

地区施設・・・主として街区内の居住者等の利用に供される道路,公園その他の
          政令で定める施設(12条の5第2項3号)

地区整備計画を定めない地区計画・・・地区計画を都市計画に定める際に,区域の全部又は一部について地区整備計画を定めることができない特別な事情があるときは,当該区域の全部又は一部について地区整備計画を定めなくてもよいことになっています。(12条の5第7項)

地区整備計画と市町村の条例・・・地区整備計画等が定められている区域内における建築物の制限に関する事項を,地区整備計画の内容に基づいて市町村の条例で定めることができます。(建築基準法・68条の2・第1項)

4.「地区計画の区域内において建築物の建築を行おうとする者は,市町村長の許可を受けなければならない。」

【正解:×昭和57年問20,昭和60年問18,昭和61年問20,昭和62年問17

◆30日前までに市町村長に届出

 × 市町村長の許可 →  市町村長へ届出

 地区計画の区域〔施設の配置及び規模が定められている再開発等促進区もしくは開発整備促進区,又は地区整備計画が定められている区域に限る。〕内において,土地の区画形質の変更,建築物の建築その他政令で定める行為を行おうとする者は,着手する30日前までに,原則として市町村長に届け出なければならない。(58条の2第1項)

●届出対象−政令で定める行為
 建築物等の用途の変更 用途変更後の建築物等が地区計画において定められた用途の制限又は用途に応じた建築物等に関する制限に適合しない場合は用途変更でも届出義務がある。(施行令38条の4第1号) 

 建築物等の形態又は意匠の変更 地区計画において建築物等の形態又は意匠の制限が定められている土地の区域では,建築物等の形態又は意匠の変更にも届出義務がある。(施行令38条の4第2号)

 木材の伐採 地区計画において、<現に存する樹林地、草地等で良好な居住環境を確保するため必要なものの保全に関する事項> が定められている土地の区域では,木竹の伐採 にも届出義務がある。(施行令38条の4第3号)

●届出事項
 行為の種類・場所・設計又は施行方法・着手予定日

 その他国土交通省令で定める事項

●届け出なくてもよいもの→届出が適用除外
・通常の管理行為,軽易な行為その他で政令で定めるもの

・非常災害のため必要な応急措置として行う行為

・国又は地方公共団体が行う行為

・都市計画事業として行う行為又はこれに準じる行為として政令で定める行為

開発許可を要する行為その他政令で定める行為(開発許可を要する場合は届出の必要はありません。)

●地区計画の出題項目一覧

地区計画等(12条の4第1項) 平成7年・問18

地区計画の定義(12条の5第1項) 平成元年・問196年・問177年・問188年・問1915年・問17

地区計画の都市計画基準(13条1項14項) 平成3年・問18

都市計画で定めるもの(12条の4第2項,12条の5第2項) 昭和57年・問20

地区計画をどこに定めるか(12条の5第1項) 昭和57年・問20平成元年・問1910年・問17

地区整備計画で制限できるもの(12条の5第6項) 昭和57年・問20平成元年・問1911年・問1715年・問17

地区整備計画が定められている地区計画の区域内での建築等の届出(58条2)
 
昭和57年・問2060年・問1861年・問2062年・問17平成元年・問193年・問199年・問1712年・問18

●参考知識

◆33条の開発許可基準

 開発許可を要する行為が届出を要しないとされているのは,次のように開発許可基準の中に,地区整備計画の内容に即しているかチェックする項目があるので,二重テマを防ぐためです。

 都市計画法・第33条1項5号では, 開発許可基準として,開発許可申請に係わる開発区域内の土地について,地区整備計画などが定められている地区計画等が定められているときは,予定建築物等の用途又は開発行為の設計が当該地区計画等に定められた内容に即して定められていなければならない,とされています。

 このように,地区整備計画が定められているときは,開発許可申請にあたっても注意しなければいけません。


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