法令上の制限 実戦篇

都市計画法の過去問アーカイブス 昭和59年・問20 小問集合

都市計画制限・都市施設・開発許可・建築制限


都市計画法に関する次の記述のうち,正しいものはどれか。(昭和59年・問20)

1.「都市計画施設の区域内において,木造2階建てで地階を有せず,かつ,容易に移転又は除却できると認められる建築物の建築をしようとするときは,都道府県知事等の許可を受ける必要はない。」

2.「学校・図書館・研究施設その他の教育文化施設等の都市施設について,特に必要があるときは,都市計画区域外においても,都市計画に定めることができる。」

3.「市街化区域において開発行為を行う場合には,都道府県知事の許可を受ける必要はない。」

4.「開発許可を受けた開発区域内においては,当該開発区域の工事完了の公告があった後は,制限を受けることなく建築物の建築又は特定工作物の建設をおこなうことができる。」

【正解】

× × ×

1.「都市計画施設の区域内において,木造2階建てで地階を有せず,かつ,容易に移転又は除却できると認められる建築物の建築をしようとするときは,都道府県知事等の許可を受ける必要はない。」

【正解:×昭和56年問19,昭和59年・問20,昭和60年・問18,昭和62年問17
      
【参考問題】昭和45年昭和50年

◆都市計画施設の区域内の建築制限

 都市計画の告示(20条1項)があった日以降は,(都市計画事業の認可の告示がされるまでの間に,)都市計画施設の区域又は市街地開発事業の施行区域内建築物の建築〔新築・増築・改築・移転〕をしようとする者は,都道府県知事の許可を受けなければいけません。(都市計画法53条1項)

 ⇒ 「将来の事業実施の支障とならない建築物」(54条の許可基準を満たしている)について許可されます。

 都市計画では,都市施設〔公共施設・公益施設〕の位置,規模,構造などを定め,計画的に整備していきます。

 都市計画として決定された都市施設(「都市計画施設」)の区域内では,都市施設を整備する事業が進行していくので,事業が円滑に実施できるように,建築物の建築が制限されます。⇒ 事業の妨げになるような建築物の建築は制限され,54条の許可基準を満たすものでなければ許可を受けられません。

 本肢の<木造2階建てで地階を有せず,かつ,容易に移転又は除却できると認められる建築物>は,54条の許可基準の一つであり〔下記参照〕,許可を受けなければならないので,<都道府県知事等の許可を受ける必要はない。>とする本肢は誤りです。

 当該建築物が次に掲げる要件に該当し、かつ、容易に移転し、又は除却することができるものであると認められること。(都市計画法54条3号)

イ 階数が2以下で、かつ、地階を有しないこと。

ロ 主要構造部(建築基準法第2条第5号に定める主要構造部をいう。)が木造、鉄骨造、コンクリートブロック造その他これらに類する構造であること。

 ⇒ <階数が2階以下でかつ地階を有しない木造の建築物の改築・移転>ならば,政令で定める軽易な行為として許可がなくてもできますが(施行令37条),本肢では<階数が2階以下でかつ地階を有しない木造の建築物の建築>なので許可が必要です。

許可がなくてもできるもの(53条1項)

一.政令で定める軽易な行為 (階数が2階以下でかつ地階を有しない木造の建築物の改築・移転)

二.非常災害のため必要な応急措置として行う行為

三.都市計画事業の施行として行う行為又はこれに準ずる行為として政令で定める行為

四.第11条第3項後段の規定により離隔距離の最小限度及び載荷重の最大限度が定められている都市計画施設の区域内において行う行為であつて、当該離隔距離の最小限度及び載荷重の最大限度に適合するもの

五.第12条の11に規定する都市計画施設である道路の区域のうち建築物等の敷地として併せて利用すべき区域内において行う行為であつて、当該都市計画施設である道路を整備する上で著しい支障を及ぼすおそれがないものとして政令で定めるもの

●間違えないでください

階数が2階以下でかつ地階を有しない
木造の建築物の
改築・移転
 軽易な行為として許可不要
階数が2階以下でかつ地階を有しない
木造の建築物の
新築
 許可が必要

●条文チェック
第53条(建築の許可) 都市計画施設の区域又は市街地開発事業の施行区域内において建築物の建築をしようとする者は、国土交通省令で定めるところにより、都道府県知事等の許可を受けなければならない。ただし、次に掲げる行為については、この限りでない。

一.政令で定める軽易な行為(施行令37条・階数が2階以下でかつ地階を有しない木造の建築物の改築・移転)

二.非常災害のため必要な応急措置として行う行為

三.都市計画事業の施行として行う行為又はこれに準ずる行為として政令で定める行為

四.第11条第3項後段の規定により離隔距離の最小限度及び載荷重の最大限度が定められている都市計画施設の区域内において行う行為であつて、当該離隔距離の最小限度及び載荷重の最大限度に適合するもの

五.第12条の11に規定する都市計画施設である道路の区域のうち建築物等の敷地として併せて利用すべき区域内において行う行為であつて、当該都市計画施設である道路を整備する上で著しい支障を及ぼすおそれがないものとして政令で定めるもの

2 第42条第2項の規定は、前項の規定による許可について準用する。

3 第1項の規定は、第65条第1項に規定する告示があつた後は、当該告示に係る土地の区域内においては、適用しない。

第54条(許可の基準) 都道府県知事等は、前条第1項の規定による許可の申請があつた場合において、当該申請が次の各号のいずれかに該当するときは、その許可をしなければならない。

一.当該建築が、都市計画施設又は市街地開発事業に関する都市計画のうち建築物について定めるものに適合するものであること。

二.当該建築が、第11条第3項の規定により都市計画施設の区域について都市施設を整備する立体的な範囲が定められている場合において、当該立体的な範囲外において行われ、かつ、当該都市計画施設を整備する上で著しい支障を及ぼすおそれがないと認められること。ただし、当該立体的な範囲が道路である都市施設を整備するものとして空間について定められているときは、安全上、防火上及び衛生上支障がないものとして政令で定める場合に限る。

三.当該建築物が次に掲げる要件に該当し、かつ、容易に移転し、又は除却することができるものであると認められること。

イ 階数が2以下で、かつ、地階を有しないこと。

ロ 主要構造部(建築基準法第2条第5号に定める主要構造部をいう。)が木造、鉄骨造、コンクリートブロック造その他これらに類する構造であること。

●都市計画制限の出題歴●

都市計画施設の区域 昭和56年・問19,57年・問28公,59年・問20,60年・問18,
60年・問27公,62年・問17,
平成3年・問19,7年・問18,9年・問17,12年・問18
市街地開発事業の施行区域 昭和56年・問19,62年・問17,
平成3年・問19,7年・問18,9年・問17,12年・問18
市街地開発事業等予定区域 昭和59年・問28,62年・問17,平成3年・問19,
都市計画事業の事業地 昭和56年・問19,平成10年・問17,12年・問18,16年・問17

2.「学校・図書館・研究施設その他の教育文化施設等の都市施設について,特に必要があるときは,都市計画区域外においても,都市計画に定めることができる。」

【正解:昭和55年問19,58年問20,59年問20,平成5年問19,14年問17

◆区域外都市施設

 都市施設は,特に必要があるときは,当該都市計画区域外においても,定めることができます。(11条1項後段)

 都市計画区域外に定める都市施設を『区域外都市施設』といい,当該都市計画区域の整備,開発及び保全の方針〔マスタープラン〕に即したものでなければいけません。(6条の2第3項)

都市計画区域外−準都市計画区域,両区域外(都市計画区域及び準都市計画区域外の区域)にある都市施設は,都市計画区域での都市計画で定められたものであり,準都市計画区域の都市計画で定められたものではないことに注意してください。

3.「市街化区域において開発行為を行う場合には,都道府県知事の許可を受ける必要はない。」

【正解:×昭和55年・問17肢2と同工異曲

◆市街化区域

 市街化区域内において行う開発行為は,1,000平方メートル以上の場合,原則として開発許可が必要です。本肢は,<開発許可を受ける必要はない>としているので誤りです。(都市計画法・29条1項1号,施行令19条1項)

●市街化区域1,000平方メートル以上の例外−施行令19条1項第4欄,2項−
都道府県知事〔指定都市等の長〕は,市街化の状況により,無秩序な市街化を防止するため,特に必要があると認める場合は,

 都道府県の規則〔指定都市等の規則〕で,
 300平方メートル以上1,000平方メートル未満で,
 開発許可の必要な規模を別に定めることができる。

都の特別区・市町村の全部又は一部が

 三大都市圏の近郊整備地帯(首都圏),
 近郊整備区域(近畿圏),都市整備区域(中部圏)

 の区域内にあるときは,300平方メートル以上500平方メートル未満で,
 開発許可の必要な規模を別に定めることができる。

4.「開発許可を受けた開発区域内においては,当該開発区域の工事完了の公告があった後は,制限を受けることなく建築物の建築又は特定工作物の建設をおこなうことができる。」

【正解:×昭和58年・問19,59年・問20,昭和61年・問17,平成元年・問21,5年・問20,7年・問19,11年・問18,15年・問19,16年・問19,

◆工事完了公告後の建築制限

本肢の<制限を受けることなく>という部分が着目点です。用途地域が定められていない開発区域内では,予定建築物以外は原則として禁止されているので〔制限を受ける〕,本肢は誤りです。

 工事完了公告があった後は,用途地域が定められていない開発区域内で,予定建築物以外の建築物を新築することは,都道府県知事が支障がないと認めて許可した場合を除き,禁止されています。(42条1項)

 このほかには,『国が行う行為については,当該国の機関と都道府県知事との協議が成立したことをもって,許可があったものとみなす』(42条2項)(→平成5年・問20・肢3で出題。)という規定があります。

開発区域 工事完了公告後に禁止されているもの
用途地域が
定められていない場合
(都道府県知事が支障がないと認めて許可した場合を除く。)

・予定建築物以外の建築物又は特定工作物の新築・新設

・建築物の改築又は用途変更して
 予定建築物以外の建築物とすること

用途地域が
定められている場合
用途地域の内容に適合しているものであれば,
土地の利用目的には反していないので,
予定建築物以外の建築物の建築は可能。

開発区域が「市街化調整区域」,「非線引き都市計画区域」,「準都市計画区域」,「両区域外」にあるときには,当該開発区域に用途地域が定められていない場合があります。

●用途地域が定められていない土地の区域の規制

   市街化調整区域 非線引き都市計画区域 準都市計画区域 両区域外
開発許可の際に知事が定める        
工事完了公告後の開発区域での
予定建築物以外は建築禁止
       
地区計画の策定      ×  ×
特定用途制限地域  ×      ×
特定行政庁が定める制限        ×
知事指定区域  ×  ×  ×  

●都市計画法の昭和の過去問Archives
昭和55年問17昭和55年問18昭和55年問19昭和56年問18昭和56年問19昭和56年問20昭和57年問18昭和57年問19昭和57年問20昭和58年問18昭和58年問19昭和58年問20昭和59年問18昭和59年問19,昭和59年問20,昭和60年問17昭和60年問18昭和60年問19昭和61年問17昭和61年問20昭和61年問21昭和62年問17昭和62年問19昭和62年問20昭和63年問18昭和63年問19昭和63年問20

過去問アーカイブス・法令制限に戻る 都市計画法の過去問アーカイブスのトップに戻る

宅建1000本ノック・都市計画法/概要に戻る

宅建1000本ノック・開発許可のトップに戻る

宅建1000本ノック・開発での建築制限のトップに戻る

宅建1000本ノック・法令上の制限に戻る