法令上の制限 実戦篇

都市計画法の過去問アーカイブス 平成15年・問18 開発許可の要否


開発許可に関する次の記述のうち,都市計画法の規定によれば,誤っているものはどれか。 (平成15年・問18)

1.「市街化調整区域における農産物の加工に必要な建築物の建築を目的とした500平方メートルの土地の区画形質の変更には,常に開発許可が不要である。」

2.「市街化区域における市街地再開発事業の施行として行う3,000平方メートルの土地の区画形質の変更には,常に開発許可が不要である。」

3.「都市計画区域でも準都市計画区域でもない区域内における住宅団地の建設を日的とした6,000平方メートルの土地の区画形質の変更には,常に開発許可が不要である。」

4.「準都市計画区域における公民館の建築を目的とした5,000平方メートルの土地の区画形質の変更には,常に開発許可が不要である。」(改)

【正解】

×

1.「市街化調整区域における農産物の加工に必要な建築物の建築を目的とした500平方メートルの土地の区画形質の変更には,常に開発許可が不要である。」

【正解:×平成12年・問20,15年・問18

◆34条許可基準〔許可要件〕−農産物の加工

           ┌─市街化調整区域以外(33条のみ)
開発許可の基準┤            ┌─建築物 or 第一種特定工作物(33条+34条)
          └─市街化調整区域┤
                        └─第二種特定工作物(33条)

 33条   都道府県知事は33条に適合していれば,開発許可をしなければならない。
 34条   都道府県知事は33条に適合し,かつ,34条に該当しなければ,
 開発許可をしてはならない。

 確かに,市街化区域を除いて,農林水産物の生産・集荷または生産資材の貯蔵・保管の用に供する建築物の建築を目的とした開発行為は,政令で定める農林業の用に供する建築物のためのものとして,開発許可は不要です。(29条1項2号,施行令20条1項,2項)

 しかし,マチガイやすいのですが,農林魚業の用に供する建築物の全てが開発許可不要だということではないのです。生産される農水林産物の処理・貯蔵・加工に必要な「建築物の建築・第一種特定工作物の建設」のための開発行為は,開発許可不要ではありません

 これは市街化調整区域での開発許可基準の一つになっています。〔ほかの区域でも規模により開発許可が必要になる。〕したがって,本肢は誤りの記述です。(34条4号)  

●34条許可基準の出題歴
 物品販売店舗  平成元年・問18,9年・問18,
 観光資源活用  昭和55年・問18,
 農産物の処理・貯蔵・加工・  平成12年・問20,15年・問18,
 開発審査会の議を経たもの  昭和57年・問18,63年・問19,
 平成元年・問21,9年・問19,

   農産物生産・集荷の用・
生産資材貯蔵又は保管
農業を営む者の居住の用
に供する建築物

農産物処理・貯蔵・加工
に供する建築物

市街化区域             規模により許可必要
            (1,000 平方メートル以上)
市街化調整区域       常に不要 規模に関係なく許可必要
(市街化調整区域の許可要件)
非線引き都市計画区域 規模により許可必要
(3,000 平方メートル以上)
準都市計画区域 規模により許可必要
(3,000 平方メートル以上)
都市計画区域及び
準都市計画区域外
規模により許可必要
(10,000 平方メートル以上)

註 「生産資材貯蔵又は保管」の用に供するものとしては,
  サイロ・堆肥舎・農機具等の収納施設など。

2.「市街化区域における市街地再開発事業の施行として行う3,000平方メートルの土地の区画形質の変更には,常に開発許可が不要である。」

【正解:

◆市街地再開発事業の施行として行う開発行為は許可不要

 (都市再開発法による)市街地再開発事業の施行として行われる開発行為は,市街化区域・非線引き都市計画区域の区域を問わず,また規模を問わず,開発許可は不要です。(都市計画法・29条1項6号)

 都市計画区域内で開発許可不要のもの 両区域外の扱い
 都市計画事業の施行として行う開発行為
(都市計画区域及び準都市計画区域)
開発許可不要
 土地区画整理事業の施行として行う開発行為  −
 市街地再開発事業の施行として行う開発行為  −
 住宅街区整備事業の施行として行う開発行為  −
 防災街区整備事業の施行として行う開発行為  −

平成15年の都市計画法改正により,開発許可不要なものとして防災街区整備事業の施行として行われる開発行為が追加されたので注意したい。(都市計画法・29条1項8号)

●都市計画事業等の開発許可不要な開発行為
都市計画事業 平成14年・問19,
土地区画整理事業 昭和55年・問17,62年・問19,平成7年・問20,10年・問18,
【関連問題】平成13年・問18,
市街地再開発事業 平成15・問18,

3.「都市計画区域でも準都市計画区域でもない区域内における住宅団地の建設を日的とした6,000平方メートルの土地の区画形質の変更には,常に開発許可が不要である。」

【正解:昭和56年・問18,58年・問20,平成6年・問19,14年・問19,15年・問18,【関連問題】平成5年・問18,

◆都市計画区域及び準都市計画区域外の区域〔両区域外〕

 都市計画区域及び準都市計画区域外の区域内〔両区域外〕では,1 ha〔10,000平方メートル〕以上の開発行為に開発許可が必要になります。(29条2項,施行令20条)

 住宅団地の建設を日的とした6,000平方メートルの土地の区画形質の変更は許可が必要な規模には達していないので,開発許可は常に不要です。

4.「準都市計画区域における公民館の建築を目的とした5,000平方メートルの土地の区画形質の変更には,常に開発許可が不要である。」(改)

【正解:×

◆公民館の建築目的は開発許可不要

 公民館の建築を目的として行う開発行為は,『公益上必要な建築物の建築』※の用に供する目的で行う開発行為には該当し,区域・規模に関係なく,開発許可は不要です

正確には,「公益上必要な建築物のうち開発区域及びその周辺の地域における適正かつ合理的な土地利用及び環境の保全を図る上で支障がないものとして政令で定める建築物

公益上必要な建築物〜設置主体には関係なく,開発許可は不要〜

 公民館・図書館・駅舎その他の鉄道の施設・変電所・その他これらに類する政令で定める公益上必要な建築物(29条1項3号,施行令21条)

●公益上必要な建築物の用に供する開発行為の出題歴
〔駅舎〕 昭和55年・問18,
●改正により開発許可の適用除外ではなくなったもの
〔社会福祉施設〕 昭和62年・問19,平成9年・問18,12年・問20,
〔医療施設〕 平成12年・問20,13年・問18,15年・問18

●関連知識●公益上必要な建築物は建築許可は不要 〔開発区域外の区域〕
市街化調整区域のうち開発区域外の区域での建築には都道府県知事の建築許可が必要だが,公益上必要な建築物には建築許可は不要とされている。(43条1項)
公民館(昭和60年・問19)

※以下は改正により建築許可が必要になった。

医療施設(昭和62年・問20)社会福祉施設(平成元年・問18)

●都市計画法29条1項3号
 駅舎その他の鉄道の施設、図書館、公民館、変電所その他これらに類する公益上必要な建築物のうち開発区域及びその周辺の地域における適正かつ合理的な土地利用及び環境の保全を図る上で支障がないものとして政令で定める建築物の建築の用に供する目的で行う開発行為

 ⇒ 改正により,医療施設,社会福祉施設,幼稚園・小学校・中学校・高校は,開発許可が不要ではなくなり,区域・規模により,開発許可が必要になりました。


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