法令上の制限 実戦篇

都市計画法の過去問アーカイブス 平成4年・問20 開発許可


市街化調整区域における開発行為の規制に関する次の記述のうち,都市計画法の規定によれば,正しいものはどれか。(平成4年・問20)

1.「市街化調整区域のうち開発許可を受けた開発区域以外の区域内において行う建築物の新築については,非常災害のため必要な応急措置として行うものであっても,都道府県知事の許可を受けなければならない。」

2.「用途地域の定められていない土地の区域内で都道府県知事が開発許可をするに当たって建築物の敷地構造及び設備に関する制限を定めた土地の区域内においても都道府県知事の許可を受ければこれらの制限を超える建築物を建築することができる。

3.「市街化調整区域におけるゴルフコース等の第二種特定工作物の建設の用に供する目的で行う開発行為については,都道府県知事は,開発許可の際,あらかじめ開発審査会の議を経なければならない。」

4.「市街化調整区域内で農業を営む者が建築物の建築の用に供する目的で行う開発行為については,その建築物がその者の居住の用に供するものであっても,都道府県知事の許可を受けなければならない。」

【正解】

× × ×

1.「市街化調整区域のうち開発許可を受けた開発区域以外の区域内において行う建築物の新築については,非常災害のため必要な応急措置として行うものであっても,都道府県知事の許可を受けなければならない。」

【正解:×昭和58年・問19,60年・問19,61年・問17,62年・問20,63年・問19,平成元年・問18,4年・問20,5年・問20,8年・問21,15年・問19,16年・問19

開発区域外の区域の建築制限

市街化調整区域のうち開発許可を受けた開発区域以外の区域において,建築物の建築は,『都道府県知事等の許可』がなければできませんが,非常災害のため必要な応急措置として行われる場合は許可は不要です。したがって,本肢は誤りの記述です。

 市街化調整区域では,開発行為を伴う場合は開発許可,開発行為を伴わない場合も建築許可を必要として,都道府県知事〔指定都市等の長〕の許可なく建築物の建築や用途変更ができないようになっています。無秩序な市街化を防止するためです。

 市街化調整区域のうち開発許可を受けた区域以外の区域内においては,都道府県知事の許可を受けなければ,建築物の新築,改築,用途変更第一種特定工作物の新設をすることができません(43条1項)

第二種特定工作物の新設には,市街化調整区域内の開発許可を受けた開発区域以外の区域内であっても,都道府県知事の許可は不要です。

しかし,どんな場合でも許可がなければできないのではなく,以下の場合は許可がなくてもできます。(43条1項各号)
農林漁業の用に供する政令で定める建築物〔農林漁業の生産・集荷,生産資材の貯蔵・保管などの用に供するもの〕又はその業務を行う者の居住の用に供する建築物の新築,改築,これらへの用途変更 (昭和60年,平成16年)

公益上必要な建築物の新築,改築,これらへの用途変更 (昭和60年,62年,平成元年)
 〔駅舎等の鉄道施設,図書館,博物館,公民館,変電所その他政令で定めるもの〕

都市計画事業の施行として行う建築物の新築,改築,用途変更,第一種特定工作物の新設(昭和62年,平成15年)

・政令で定める開発行為(都市計画事業,土地区画整理事業,市街地再開発事業,住宅街区整備事業として行われる開発行為)が行われた土地の区域内において行う建築物の建築,改築,用途変更,第一種特定工作物の新設(平成5年)

非常災害のため必要な応急措置として行う建築物の新築,改築,用途変更,第一種特定工作物の新設(平成元年,4年)

仮設建築物の新築 (昭和60年)

通常の管理行為,軽易な行為その他の行為で 政令で定めるもの

非常災害のため必要な応急措置で許可不要なものとしては,このほかに,“非常災害のため必要な応急措置として行う開発行為”の場合でも,開発許可は不要です。(平成8年・問20)

〔注意〕・国,都道府県等の地方公共団体が行う建築物の新築,改築,用途変更,第一種特定工作物の新設 も,原則として建築許可が必要ですが,国の機関,都道府県等と知事との協議が成立することをもって,建築許可があったものとみなされます。(都市計画法43条3項)

2.「用途地域の定められていない土地の区域内で都道府県知事が開発許可をするに当たって建築物の敷地構造及び設備に関する制限を定めた土地の区域内においても都道府県知事の許可を受ければこれらの制限を超える建築物を建築することができる。

【正解:昭和58年・問19,59年・問18,昭和61年・問17,62年・問20,63年・問19,平成2年・問20,4年・問20,6年・問20,9年・問19,12年・問20,16年・問19,

用途地域の定められていない区域での開発許可の際に定める建築制限

 都道府県知事〔指定都市等の区域では当該指定都市等の長〕は,用途地域の定められていない土地の区域における開発行為について開発許可をする場合に,必要があると認めるときは,当該開発区域内の土地について,建築物の建ぺい率建築物の高さ壁面の位置その他建築物の敷地,構造及び設備に関する制限を定めることができます。(41条1項)また,都道府県知事は,開発許可の際に定めた制限を開発登録簿に登録しなければなりません。(昭和59年,平成9年)(47条1項5号)

 この制限が定められると,都道府県知事が許可した場合(昭和62年,平成4年)を除いて,この制限に違反して建築物を建築することはできません。(41条2項)

●この制限が適用除外される場合
都道府県知事が当該区域及びその周辺の地域における環境の保全上支障がないと認め,又は公益上やむを得ないものとして許可したもの

●用途地域が定められていない土地の区域の規制

   市街化調整区域 非線引き都市計画区域 準都市計画区域 両区域外
開発許可の際に知事が定める        
工事完了公告後の開発区域での
予定建築物以外は建築禁止
       
地区計画の策定      ×  ×
特定用途制限地域  ×      ×
特定行政庁が定める制限        ×
知事指定区域  ×  ×  ×  

3.「市街化調整区域におけるゴルフコース等の第二種特定工作物の建設の用に供する目的で行う開発行為については,都道府県知事は,開発許可の際,あらかじめ開発審査会の議を経なければならない。」

【正解:×昭和56年・問18,57年・問18,平成元年・問18,4年・問20,5年・問18,

第二種特定工作物〔面積要件なしのゴルフコース以外は1ha以上〕

 確かに,市街化調整区域内の開発行為に対する34条の許可要件の中に開発審査の議を経たものという要件があります。(34条14号)

 しかし,この34条の許可要件は「市街化調整区域での建築物の建築・第一種特定工作物の建設の用に供する目的で行う開発行為」に対する許可要件であり,第二種特定工作物の建設の用に供する目的で行う開発行為には適用されないので,本肢は誤りです。 

開発審査会の議を経て開発許可処分が行われるのは,<開発区域の周辺における市街化を促進するおそれがなく,かつ,市街化区域内において行うことが困難又は著しく不適当と認める開発行為 >の場合です(34条14号)

●市街化調整区域の造成工事と開発許可
一般の建築物・第一種特定工作物  33条の許可基準に加えて,34条の許可要件を
 満たせば,開発許可を受けることができる。
第二種特定工作物  33条の許可基準を満たせば,
 開発許可を受けることができる。
第二種特定工作物の要件を
満たさないもの
 規模1ha未満のため第二種特定工作物に
 ならないものの建設の用に供する目的の
 造成工事は開発行為にならないので,
 開発許可は不要。

 市街化調整区域内で第二種特定工作物の建設の用に供する目的で行う開発行為は,開発許可を受けなければならず,33条の許可基準に該当すれば開発許可を受けることができます。〔34条の許可要件は適用されないことに注意。〕

●ゴルフコース以外の第二種特定工作物 (施行令・1条2項)
 野球場,庭球場,陸上競技場,遊園地,動物園その他の運動場・レジャー施設である工作物〔学校教育法の学校(大学・専修学校・各種学校を除く)の施設に該当するものなどを除く〕で1ha以上のもの

 墓園1ha以上のもの

  第二種特定工作物にならないとされるもの・・・博物館法に規定する施設・キャンプ場・ピクニック緑地・スキー場〔人口スキー場を除く。〕・マリーナ・モトクロス場

4.「市街化調整区域内で農業を営む者が建築物の建築の用に供する目的で行う開発行為については,その建築物がその者の居住の用に供するものであっても,都道府県知事の許可を受けなければならない。」

【正解:×

◆農林漁業を営む者の居住の用に供する建築物のための開発行為

 農林業を営む者の居住の用に供する建築物,農業・林業・漁業の用に供する政令で定める建築物〔生産・集荷,生産資材の貯蔵・保管〕の建築のための開発行為は,市街化調整区域非線引き都市計画区域準都市計画区域両区域外(都市計画区域及び準都市計画区域外)の区域では,開発許可は不要です。(都市計画法・29条1項2号,2項1号の政令で定める建築物,施行令20条)

●出題歴
〔居住の用〕 昭和55年・問17,62年・問19,63年・問19,平成4年・問20,
6年・問19,9年・問18(市街化区域),10年・問18,
11年・問18(非線引き区域),13年・問18(区域指定ナシ),
14年・問19(市街化区域)
〔生産・集荷の用〕 昭和55年・問18〔温室〕,56年・問18〔温室〕(市街化区域),
平成5年・問18〔畜舎〕(市街化区域)14年・問19,
農業・林業・漁業の用に供する政令で定める建築物
第20条(法第29条第1項第2号及び第2項第1号の政令で定める建築物)

 法第29条第1項第2号及び第2項第1号の政令で定める建築物は,次に掲げるものとする。

1.畜舎,蚕室,温室,育種苗施設,家畜人工授精施設,孵卵育雛施設,搾乳施設,集乳施設その他これらに類する農産物,林産物又は水産物の生産又は集荷の用に供する建築物

2.堆肥舎,サイロ,種苗貯蔵施設,農機具等収納施設その他これらに類する農業,林業又は漁業の生産資材の貯蔵又は保管の用に供する建築物

3.家畜診療の用に供する建築物

4.用排水機,取水施設等農用地の保全若しくは利用上必要な施設の管理の用に供する建築物又は索道の用に供する建築物

5.前各号に掲げるもののほか,建築面積が90平方メートル以内の建築物

   農産物生産・集荷の用・
生産資材貯蔵又は保管
農業を営む者の居住の用
に供する建築物

農産物処理・貯蔵・加工
に供する建築物

市街化区域             規模により許可必要
            (1,000 平方メートル以上)
市街化調整区域       常に不要 規模に関係なく許可必要
(市街化調整区域の許可要件)
非線引き都市計画区域 規模により許可必要
(3,000 平方メートル以上)
準都市計画区域 規模により許可必要
(3,000 平方メートル以上)
都市計画区域及び
準都市計画区域外
規模により許可必要
(10,000 平方メートル以上)

註 「生産資材貯蔵又は保管」の用に供するものとしては,
  サイロ・堆肥舎・農機具等の収納施設など。


●都市計画法の平成の過去問Archives
昭和63年問18昭和63年問19昭和63年問20平成元年問18平成元年問19平成元年問21平成2年問19平成2年問20平成3年問18平成3年問19平成3年問20平成4年問18平成4年問19,平成4年問20,平成5年問18平成5年問19平成5年問20平成6年問17平成6年問19平成6年問20平成7年問18平成7年問19平成7年問20平成8年問19平成8年問20平成8年問21平成9年問17平成9年問18平成9年問19平成10年問17平成10年問18平成10年問19平成11年問17平成11年問18平成11年問19平成12年問18平成12年問19平成12年問20平成13年問17平成13年問18平成13年問19平成14年問17平成14年問18平成14年問19平成15年問17平成15年問18平成15年問19平成16年問17平成16年問18平成16年問19

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