法令上の制限 基礎編
宅地造成等規制法 §6 宅地造成工事規制区域の許可制 (iv) 許可の手続と工事規制
許可の条件,必要な措置,資格,技術的基準,完了検査,検査済証,
次のそれぞれの記述は,宅地造成等規制法の規定によれば○か,×か。なお,本問における都道府県知事とは,指定都市,中核市又は特例市にあっては,指定都市,中核市又は特例市の長をいうものとする。 |
1.「規制区域内において行われる宅地造成に関する工事の許可については,都道府県知事は,工事の施行に伴う災害を防止するため必要な条件を付することができる。」8-26-3 |
2.「宅地造成工事規制区域内における宅地造成に関する工事は,すべて崖崩れ又は土砂の流出を防止するため,必要な措置が講ぜられたものでなければならない。」59-25-4 |
3.「宅地造成工事規制区域内において許可を受けて行う宅地造成に関する工事は,すべて政令で定める一定の資格を有する者の設計によらなければならない。」59-25-3,同55-23-1 |
4.「造成主は,都道府県知事の許可を受けた規制区域内の宅地造成に関する工事を完了した場合においては,一定の技術的基準に従い必要な措置が講じられているかどうかについて,都道府県知事の検査を受けなければならない。」7-25-4 |
宅地造成工事に係る許可の申請〜検査済証の交付 |
造成主から都道府県知事へ許可申請書を提出 ↓ 技術的基準の審査 ↓ 文書による許可処分 ↓ 宅地造成工事 ↓ 都道府県知事による工事の完了検査 ↓ 都道府県知事から造成主へ検査済証の交付 |
【正解】
1 | 2 | 3 | 4 |
○ | ○ | × | ○ |
1.「規制区域内において行われる宅地造成に関する工事の許可については,都道府県知事は,工事の施行に伴う災害を防止するため必要な条件を付することができる。」8-26-3 |
【正解:○】平成8年,平成16年, ◆条件を付す 都道府県知事〔または指定都市等の長〕は,宅地造成工事規制区域内において行われる宅地造成に関する工事の許可について,工事の施行に伴う災害を防止するため必要な条件を付すことができます。(8条3項) |
●許可の基準と条件 |
1.「都道府県知事は,規制区域内において行われる宅地造成に関する工事について,当該工事の計画が宅地造成等規制法に基づく政令に定める技術的基準に適合しないと認めるときは,許可をしてはならない。」(不動産鑑定士・平成7年) |
【正解 :○】8条2項そのまま。 |
2.「都道府県知事は,宅地造成工事規制区域内において行われる宅地造成に関する工事についての許可に,当該工事の施行に伴う災害の防止その他良好な都市環境の形成のために必要と認める場合にあっては,条件を付することができる。」(平成16年・問23・肢2) |
【正解 :×】本肢では,<当該工事の施行に伴う災害の防止その他良好な都市環境の形成のために必要と認める場合に>とあり,赤字部分が余計です。良好な都市環境の形成という文言は宅地造成工事規制区域は都市計画区域外でも指定することができるのでオカシイということからもわかります。 |
2.「宅地造成工事規制区域内における宅地造成に関する工事は,すべてがけくずれ又は土砂の流出を防止するため,必要な措置が講ぜられたものでなければならない。」59-25-4 |
【正解:○】 ◆必要な措置 宅地造成工事規制区域内における宅地造成に関する工事は,政令または都道府県の規則で定める技術的基準に従い,擁壁・排水施設・政令で定める施設の設置その他宅地造成に伴う災害〔崖崩れ又は土砂の流出〕を防止するため,必要な措置が講ぜられたものでなければいけません。(9条1項) ▼昭和40年代の出題では,法令制限の問題だけでなく税法その他の「土地」の問題にも絡んで,政令等の技術的基準が相当細かいところまで出題されていましたが,本問題集では収録を見合わせました。 |
●宅地造成等規制法9条 |
(宅地造成に関する工事の技術的基準等)
第9条 宅地造成工事規制区域内において行われる宅地造成に関する工事は、政令(その政令で都道府県の規則に委任した事項に関しては、その規則を含む。)で定める技術的基準に従い、擁壁、排水施設その他の政令で定める施設(以下「擁壁等」という。)の設置その他宅地造成に伴う災害を防止するため必要な措置が講ぜられたものでなければならない。 2 前項の規定により講ずべきものとされる措置のうち政令(同項の政令で都道府県の規則に委任した事項に関しては、その規則を含む。)で定めるものの工事は、政令で定める資格を有する者の設計によらなければならない。 |
●施行令4条
第4条 法第9条第1項(法第12条第3項において準用する場合を含む。以下同じ。)の政令で定める施設は、擁壁、排水施設及び地滑り抑止ぐい並びにグラウンドアンカーその他の土留とする。 |
●技術的基準−施行令の抜粋 |
第6条(擁壁の設置に関する技術的基準) 法第9条第1項の政令で定める技術的基準のうち擁壁の設置に関するものは、次のとおりとする。(略) 第13条(排水施設の設置に関する技術的基準) 法第9条第1項の政令で定める技術的基準のうち排水施設の設置に関するものは、切土又は盛土をする場合においては、雨水その他の地表水を排除することができるように、必要に応じ、排水施設で次の各号のいずれにも該当するものを設置することとする。(略) |
第15条 都道府県知事(地方自治法(昭和22年法律第67号)第252条の19第1項の指定都市(以下「指定都市」という。)、同法第252条の22第1項の中核市(以下「中核市」という。)又は同法第252条の26の3第1項の特例市(以下「特例市」という。)の区域内の土地については、それぞれ指定都市、中核市又は特例市の長。次項及び第22条において同じ。)は、都道府県(指定都市、中核市又は特例市の区域内の土地については、それぞれ指定都市、中核市又は特例市。次項において同じ。)の規則で、災害の防止上支障がないと認められる土地において第6条の規定による擁壁の設置に代えて他の措置をとることを定めることができる。 2 都道府県知事は,その地方の気候、風土又は地勢の特殊性により,この章の規定のみによつては宅地造成に伴う崖くずれ又は土砂の流出の防止の目的を達し難いと認める場合においては,都道府県の規則で,この章に規定する技術的基準を強化し,又は必要な技術的基準を附加することができる。 |
●技術的基準 |
1.「宅地造成工事規制区域内において行われる宅地造成に関する工事は、擁壁、排水施設又は消防の用に供する貯水施設の設置その他宅地造成に伴う災害の発生を防止するため必要な措置が講じられたものでなければならない。」17-24-2 |
【正解 :×】消防の用に供する貯水施設の設置は,宅地造成に伴う災害とは関係ないのだから,災害の防止のため必要な措置には該当しません。 |
3.「宅地造成工事規制区域内において許可を受けて行う宅地造成に関する工事は,すべて政令で定める一定の資格を有する者の設計によらなければならない。」59-25-3,同55-23-1 |
【正解:×】昭和55年,59年,平成6年 ◆設計資格−災害防止のため必要な措置のうち政令で定める工事に必要 <宅地造成に関する工事は,すべて政令で定める一定の資格を有する者の設計によらなければならない>というのはウソです。宅地造成工事のうち,災害を防止するために必要な措置のうち一定のものについては政令で定める資格を有する者の設計によらなければいけませんが,宅地造成工事の全てについて必要なのではありません。 宅地造成工事規制区域内における宅地造成に関する工事は,もともと擁壁,排水施設その他の政令で定める施設の設置その他宅地造成に伴う災害を防止するため,必要な措置をとるものとされており(9条1項),その必要な措置のうち政令や都道府県の規則で定めるものの工事〔一定の擁壁の設置及び排水施設の設置〕については,政令で定める資格を有する者の設計によらなければいけません。(9条2項) ■設計資格を要する工事 (施行令16条) …『高さ5mを超える擁壁の設置』(平成6年出題) 『切土又は盛土をする土地の面積が1,500平方メートルを超える土地における排水施設の設置』 ■設計…その者の責任において設計図書〔必要な図面及び仕様書〕を作成すること。 |
●類題 |
1.「宅地造成工事規制区域内で宅地造成を行う場合において,高さ3mの擁壁の設置をするときは,一定の資格を有する者の設計によらなければならない。」6-25-2 |
【正解 :×】高さ5m以下ならば,資格者の設計は不要。 |
2.「規制区域内において宅地造成に伴う災害を防止するため設置される高さ5mを超える擁壁に関する工事は,一定の資格を有する者の設計によらなければならない。」(不動産鑑定士・平成9年) |
【正解 :○】 |
4.「造成主は,都道府県知事の許可を受けた規制区域内の宅地造成に関する工事を完了した場合においては,一定の技術的基準に従い必要な措置が講じられているかどうかについて,都道府県知事の検査を受けなければならない。」7-25-4 |
【正解:○】昭和62,平成元年,6年,7年,8年 ◆完了検査 造成主は,許可を受けた宅地造成工事が完了したとき,政令で定める技術的基準に従い災害を防止するための必要な措置が講じられているかどうかについて,国土交通省令で定めるところにより,都道府県知事の検査を受けなければいけません。(13条1項) ●検査済証 都道府県知事は,検査の結果工事が技術的基準に適合していると認めた場合は,国土交通省令で定める様式の検査済証を造成主に交付しなければなりません。(13条2項) |
●類題 |
1.「造成主は,宅地造成工事規制区域内において宅地造成に関する工事を完了したときは,その工事が技術的水準に適合しているかどうかについて,市町村長の検査を受けなければならない。」1-25-2 |
【正解 :×】市町村長ではなく,都道府県知事。 |
2.「宅地造成工事規制区域内において行われる法第8条第1項の工事が完了した場合,造成主は,都道府県知事の検査を受けなければならない。」18-23-2 |
【正解 :○】 |
3.「宅地造成工事規制区域内の宅地を購入した者は,都道府県知事の検査を受けなければならない。」6-25-3 |
【正解 :×】検査を受ける必要があるのは,規制区域内で宅地造成工事をした造成主です。(13条1項)
規制区域内の宅地を購入した者が,都道府県知事の検査を受ける必要はありません。 ▼都道府県知事等は,<必要がある場合に,当該宅地に立ち入り,当該宅地又は当該宅地において行われている宅地造成に関する工事の状況を検査することができる。>という立入検査の規定がありますが(18条),本肢での「検査」はこのことを訊ねているわけではありません。 |
4.「造成主は,宅地造成等規制法第8条第1項の許可を受けた宅地造成に関する工事を完了した場合,都道府県知事の検査を受けなければならないが,その前に建築物の建築を行おうとする場合,あらかじめ都道府県知事の同意を得なければならない。」17-24-3 |
【正解 :×】
造成主は,宅地造成に関する工事の技術的基準等に適合しているかどうかについて,都道府県知事の検査を受けなければなりません(宅地造成等規制法・13条1項,9条1項)。 しかし,その検査の前に建築物の建築を行おうとする場合,あらかじめ都道府県知事の同意を得なければならないとする規定は宅地造成等規制法にはありません。 |
●検査済証の問題 |
1.「規制区域内において許可を受けて行われた宅地造成に関する工事が検査に合格した場合,都道府県知事は,造成主に対して検査済証を交付しなければならない。」8-26-4 |
【正解 :○】 |
2.「規制区域内の宅地造成に関する工事の検査済証が交付された後,宅地造成に伴う災害防止上の必要性が認められるときは,都道府県知事は宅地の所有者に対して,当該宅地の使用を禁止又は制限をすることができる。」15-24-4 |
【正解 :×】検査済証が交付されたということは,その宅地造成工事が所定の技術的基準に適合したことを意味するので,宅地の使用を禁止又は制限を受けることはありません。 |
●改正により創設●宅地造成工事の変更の届出 |
工事の計画の変更をしようとするとき ⇒ 都道府県知事などの許可
軽微な変更のとき ⇒ 遅滞なく届出 |
(変更の許可等)第12条 2 第8条第1項本文の許可を受けた者は、前項ただし書の国土交通省令で定める軽微な変更をしたときは、遅滞なく、その旨を都道府県知事に届け出なければならない。 3 第8条第2項及び第3項並びに前3条の規定は、第1項の許可について準用する。4 第1項又は第2項の場合における次条の規定の適用については、第1項の許可又は第2項の規定による届出に係る変更後の内容を第8条第1項本文の許可の内容とみなす。 |
●施行規則
(変更の許可の申請) (軽微な変更) |
●宅地造成等規制法の過去問Archives −検索用− |
昭和50年,昭和51年,昭和52年,昭和53年,昭和55年,昭和56年,昭和57年,昭和58年,昭和59年,昭和60年,昭和61年,昭和62年,昭和63年,平成元年,平成2年,平成3年,平成4年,平成5年,平成6年,平成7年,平成8年,平成9年,平成10年〜平成14年,平成15年,平成16年,平成17年, |