法令上の制限 実戦篇

国土利用計画法の過去問アーカイブス 平成元年・問17 ♯


国土利用計画法第27条の4及び同法第27条の7に規定する土地に関する権利の移転等の届出〔以下この問において『事前届出』という。〕に関する次の記述のうち,正しいものはどれか。(平成元年・問17)改

1.「事前届出をして勧告を受けなかった場合において,予定対価の額を減額して土地売買等の契約を締結しようとするときは,その事前届出に係る土地の利用目的を変更しない限り,再度の事前届出をする必要はない。」

2.「一団の造成団地を第一期,第二期に分けて分譲する場合において,それぞれの分譲面積が届出対象面積に達しないときは,常に届出をする必要はない。」

3.「事前届出は,原則として契約の当事者が行うべきであるが,譲受人が定まっていない場合は,譲渡人が単独で行うことができる。」

4.「監視区域に所在する土地について土地に関する権利を有している者は,事前届出をした場合において,契約の中止の勧告を受けたときは,都道府県知事に対し,当該土地に関する権利を買い取るべきことを請求することができる。」

【正解】

× × ×

1.「事前届出をして勧告を受けなかった場合において,予定対価の額を減額して土地売買等の契約を締結しようとするときは,その事前届出に係る土地の利用目的を変更しない限り,再度の事前届出をする必要はない。」

【正解:平成9年

減額の場合は再届出不要

 監視区域・注視区域では,すでに事前届出をして勧告を受けなかった場合に,予定対価を増額したり利用目的の変更をして契約を締結しようとするときには,改めて事前届出が必要です

 しかし,減額するだけの変更をして売買契約を締結しようとするときには再び届出をする必要はありません。

 本肢は<減額して契約を締結しようとするときは,土地の利用目的を変更しない限り,再度の届出をする必要はない。>とマダルッコしい言い方をしていますが,要するに≪減額するのみの変更で契約を締結しようとするときには,再度の事前届出をする必要はない≫と言っているのでです。

2.「一団の造成団地を第一期,第二期に分けて分譲する場合において,それぞれの分譲面積が届出対象面積に達しないときは,常に届出をする必要はない。」

【正解:×

◆事前届出での一団の土地の考え方

 事前届出(監視区域・注視区域)では契約の両当事者に届出義務があるので,当事者の一方または双方において,一回の取引での面積は届出対象にならなくても,複数回の取引を合計すると最終的に届出対象面積要件を満たしている『一団の土地』の取引は,個々の取引それぞれについて事前届出が必要です。

 したがって,個々の取引での土地の面積が届出面積要件に達しなくても,下記のどちらになる場合は事前届出が必要になります。

売りの一団  売主が複数回の取引をすることによって
 売却する土地の合計面積が面積要件に達する場合
買いの一団  買主が複数回の取引をすることによって
 取得する土地の合計面積が面積要件に達する場合

 本肢では,<売主が2回にわたって分譲する場合に,それぞれの分譲面積が届出対象面積に達しないときは,常に届出をする必要はない>としていますが,次の2つのケースの場合は事前届出をしなければならないので×になります。

・第一期・第二期ともそれぞれ届出要件を満たさなくても,第一期・第二期の合計面積では届出要件を満たす場合には,第一期・第二期の全ての取引で事前届出を必要とする。→売りの一団

・第一期・第二期ともそれぞれ届出要件を満たさず,また第一期・第二期の合計面積でも届出要件を満たさないが,買主の中に,この分譲で取得する土地を含めて最終的に取得する面積が届出要件を満たしている者がいる場合には,その買主との取引については事前届出を必要とする。〔買主に計画の同一性があるとする。〕→買いの一団

3.「事前届出は,原則として契約の当事者が行うべきであるが,譲受人が定まっていない場合は,譲渡人が単独で行うことができる。」

【正解:×昭和56年,昭和59年

◆事前届出は両当事者

 事前届出は,売買における譲渡人と譲受人のように,両当事者がしなければいけません。したがって,譲受人が定まっていないときには事前届出そのものができないので,本肢は×です。

●関連問題
「注視区域又は監視区域に所在する土地についての事前届出は,原則として契約の両当事者が行うべきであるが,譲受人が定まっていない場合には,譲渡人が単独で行うことも可能である。」(不動産鑑定士・平成9年・改)
【正解:×

4.「監視区域に所在する土地について土地に関する権利を有している者は,事前届出をした場合において,契約の中止の勧告を受けたときは,都道府県知事に対し,当該土地に関する権利を買い取るべきことを請求することができる。」

【正解:×類・昭和50年

◆監視区域・注視区域での中止勧告に対して買取請求はできない

 監視区域・注視区域内の土地について事前届出があった場合において,契約の中止勧告を受けて契約が中止されたときは,『都道府県知事〔または指定都市の長〕は,必要と認めたときは処分についてのあっせんその他の措置を講じることができる』という規定(27条の5第4項,27条の8第2項)はありますが,中止勧告を受けて契約を中止した者が知事〔または指定都市の長〕に対して買取請求することができるという規定はありません。

 したがって,本肢は×です。〔本肢は以下の規制区域での買取請求と混同している人を狙い撃ちにした問題です。〕

規制区域での買取請求

 規制区域内の土地の売買等の契約について不許可の処分を受けた者は,都道府県知事に対して,当該土地に関する権利を買い取るべきことを請求することができる。(19条1項)


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