法令上の制限 実戦篇

国土利用計画法の過去問アーカイブス 平成9年・問16♯


国土利用計画法23条の届出 (以下この問において「事後届出」という。) 及び同法第27条の4の届出 (以下この問において「事前届出」という。) に関する次の記述のうち,正しいものはどれか。(平成9年・問16改)

1.「金銭消費貸借契約の締結に伴い,債務者の所有する土地に債権者のために抵当権を設定した場合,事後届出が必要である。」

2.「信託契約によって土地の所有権の移転を受けた受託者 (信託銀行) が,信託財産である当該土地を売却した場合,当該土地の買主は,事後届出をする必要はない。

3.「市街化区域に所在する3,000平方メートルの土地を,及びが共有 (持分均一) する場合に,のみがその持分を売却したとき,事後届出が必要である。」

4.「注視区域内の土地の売買契約について,事前届出をして勧告を受けなかった場合に,予定対価の額を減額するだけの変更をして,当該事前届出に係る契約を締結するとき,改めて届出をする必要はない。」

【正解】

× × ×

1.「金銭消費貸借契約の締結に伴い,債務者の所有する土地に債権者のために抵当権を設定した場合,事後届出が必要である。」

【正解:×昭和57年,平成2年問18

◆抵当権設定

 抵当権や質権の設定は「土地の売買等の契約」に該当しないので,届出は不要です。

2.「信託契約によって土地の所有権の移転を受けた受託者 (信託銀行) が,信託財産である当該土地を売却した場合,当該土地の買主は,事後届出をする必要はない。

【正解:×類題・平成3年

◆受託財産の有償処分

 信託契約は信託財産を受託者が運用するものなので対価性がないため,信託契約の締結については事前届出・事後届出とも不要です。しかし,受託者 (信託銀行) が,受託財産を売却したとなると話は別です。この場合は,土地の売買になりますから,土地の買主は事後届出〔監視区域・注視区域内では買主・売主の事前届出〕をする必要があります。〔受託した財産を勝手に売払ってしまっていいの?という疑問をお持ちの方は下記参照。↓〕

信託行為は法律行為によって設定されます。土地の場合は受託者への所有権移転という形〔委託者が地主でないときには地上権の移転登記〕をとり,受託者は(土地を担保にして資金を借りて)建物を建てて賃貸し必要経費等除いて利益を配当という形で委託者・受益者に還元します。〔管理信託〕このとき建物を賃貸ではなく分譲にする場合〔マンション等〕があり,その場合に土地の売却がされることがあります。〔処分信託〕本肢の例としてはこの処分信託が代表的です。

3.「市街化区域に所在する3,000平方メートルの土地を,及びが共有 (持分均一) する場合に,のみがその持分を売却したとき,事後届出が必要である。」

【正解:×類題・平成4年

◆共有の持分

 共有になっている土地の持分の譲渡は「土地の売買等の契約」に該当し,届出の面積要件は,土地の面積に共有持分を乗じて得たもので判断します。

 本肢の場合は,全体が3,000平方メートルなので,その2分の1〔共有者が2人で持分は均一〕の1,500平方メートルということになります。

 市街化区域の面積要件は2,000平方メートル以上ですから,届出の必要はありません。

4.「注視区域内の土地の売買契約について,事前届出をして勧告を受けなかった場合に,予定対価の額を減額するだけの変更をして,当該事前届出に係る契約を締結するとき,改めて届出をする必要はない。」

【正解:類題・昭和55年,60年,平成元年

◆減額の場合は再届出不要

 監視区域・注視区域では,すでに事前届出をして勧告を受けなかった場合に,予定対価を増額したり利用目的の変更をして契約を締結しようとするときには,改めて事前届出が必要です。

 しかし,減額するだけの変更をして売買契約を締結しようとするときには再び届出をする必要はありません。

●関連問題
「注視区域内の土地の売買契約を締結しようとして事前届出をしたところ,その予定対価の額を減額するようにとの勧告を受けた場合において,勧告に従い予定対価の額を減額して契約を締結しようするときは,改めて事前届出をする必要がある。」(不動産鑑定士・平成7年・改)
【正解:×】「不勧告の通知を受けた後に減額するだけの変更の場合」,「減額せよとの勧告を受けて減額する場合」,どちらも改めて事前届出をする必要はありません。

●国土利用計画法の過去問Archives
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【平成10年法施行前の問題】法改正対応しているため事実上の新作問題
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