法令上の制限 実戦篇

国土利用計画法の過去問アーカイブス 平成10年・問16♯


国土利用計画法第23条第1項の届出 (以下この問において「事後届出」という。) に関する次の記述のうち,正しいものはどれか。(平成10年・問16改)

1.「土地に関する賃借権の移転又は設定をする契約を締結したときは,対価として権利金その他の一時金の授受がある場合以外は,事後届出をする必要はない。」

2.「停止条件付きの土地売買等の契約については,その締結をしたときに事後届出をするとともに,停止条件の成就後改めて届出をする必要がある。

3.「土地売買等の契約の当事者の一方が国又は地方公共団体である場合は,その契約について事後届出をしなければならないが,勧告されることはない。」

4.「事後届出をして国土利用計画法第24条第1項の規定による勧告を受けた者が,その勧告に従わない場合は,罰金に処せられることがある。」

【正解】

× × ×

1.「土地に関する賃借権の移転又は設定をする契約を締結したときは,対価として権利金その他の一時金の授受がある場合以外は,事後届出をする必要はない。」

【正解:昭和57年,62年,平成6年,平成14年

◆対価のある地上権・賃借権の設定は届出対象

 権利金などの対価の授受のある地上権・賃借権の移転・設定についての契約は,届出対象となる「土地売買等の契約」に該当します。

地上権・賃借権の設定・移転についての契約で設定や移転に対価のないもの〔権利金などの授受を伴わないもの〕は届出対象ではありません

2.「停止条件付きの土地売買等の契約については,その締結をしたときに事後届出をするとともに,停止条件の成就後改めて届出をする必要がある。

【正解:×平成4年出題

◆停止条件付契約での条件成就は届出の必要はない

 停止条件付契約では契約した時に事後届出をする必要がありますが,停止条件の成就は届出対象となる「土地売買等の契約」には該当しないので改めて届出の必要はありません。停止条件付契約時点での届出で契約内容についてはすでにチェックしているからです。

停止条件付契約の契約  事前届出・事後届出とも必要
停止条件の成就  事前届出・事後届出とも不要

停止条件の成就だけではなく,所有権移転請求権の行使(平成8年)予約完結権の行使(平成2年)買戻し権の行使についても届出対象となる「土地売買等の契約」には該当しないため届出の必要はありません。これらも契約時点での届出で一度チェックされているためです。

 ただし,所有権移転請求権(平成2年・平成7年)・予約完結権・買戻し権を譲渡した場合には,改めて届出をしなければいけません。

届出の要不要の整理

所有権移転請求権・予約完結権・買戻権の契約  事前届出・事後届出とも必要
所有権移転請求権・予約完結権・買戻権を行使  事前届出・事後届出とも不要
所有権移転請求権・予約完結権・買戻権を譲渡  事前届出・事後届出とも必要
●関連問題
「予約契約を締結した場合には,事後届出を行う必要はないが,当該契約に基づく予約完結権を行使した場合には事後届出を行う必要がある。」(不動産鑑定士・平成11年)

【正解:×

3.「土地売買等の契約の当事者の一方が国又は地方公共団体である場合は,その契約について事後届出をしなければならないが,勧告されることはない。」

【正解:×昭和55年,59年,平成7年,15年

◆当事者の一方〔又は双方〕が国,地方公共団体,政令で定める法人のときは
 届出は不要

 土地の売買契約等で当事者の一方又は両方が国,地方公共団体,政令で定める法人のときは事前届出,事後届出とも不要です。(23条2項3号など)

 本肢の<事後届出をしなければならないが,勧告されることはない>は誤りです。

4.「事後届出をして国土利用計画法第24条第1項の規定による勧告を受けた者が,その勧告に従わない場合は,罰金に処せられることがある。」

【正解:×

◆勧告に従わなくても罰則はないが公表されることがある。

 事前届出・事後届出とも都道府県知事〔または指定都市の長〕から勧告を受けたのにもかかわらず,従わなかったときはその旨及びその勧告内容について公表されることがあります。〔罰則はない。従わなかった場合でも契約は有効。〕(26条,27条の5第4項,27条の8第2項)

事後届出での勧告と助言−従わなかった場合の比較

 勧告に従わなかったとき  罰則はないが,公表されることがある(平成11年,14年)
 助言に従わなかったとき  罰則も,公表されることもない。(平成12年出題)
●助言と勧告の違い
 事後届出制では,以下のように勧告と助言を使い分けています。
 勧告   土地の利用目的が,公表されている土地利用計画等に適合せず
 当該土地を含む周辺の地域の適正かつ合理的な土地利用を図るために
 著しい支障があると認めるとき
 助言  土地の利用目的について,当該土地を含む周辺の地域の
 適正かつ合理的な土地利用を図るために必要

勧告−(取引当事者にとって予見可能性が高いにもかかわらず)公表されている土地利用に関する計画に反した場合

助言−(取引当事者にとって予見可能性が高いとはいえない場合)土地の利用目的が公共施設〔道路・水道など〕・公益的施設〔学校など〕の整備の予定又は周辺の自然環境の保全上,明らかに不適当な場合に,適正かつ合理的な土地利用を図る上で取引段階で措置を講ずる必要があるとき

●勧告に従ったときのあっせん

<勧告により利用目的が変更になるときは・・・> ●事後届出

 知事(または指定都市の長)は、24条1項の勧告により、当該土地の利用目的が変更になった場合は、必要があると認めるときは、当該土地の関する権利の処分について、あっせんその他の措置を講ずるように努めなければならない。(国土利用計画法・27条)

<勧告により土地売買などの契約の締結が中止> ●注視区域・監視区域

 知事(または指定都市の長)は、勧告により、当該土地売買等の契約の締結が中止された場合は、必要があると認めるときは、当該土地の関する権利の処分について、あっせんその他の措置を講ずるように努めなければならない。(国土利用計画法・27条の5第4項 / 27条の8第2項)


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