法令上の制限 実戦篇

国土利用計画法の過去問アーカイブス 平成11年・問16 事後届出


国土利用計画法第23条の届出 (以下この問において「事後届出」という) に関する次の記述のうち,正しいものはどれか。(平成11年・問16)

1.「土地売買等の契約を締結した場合には,当事者双方は,その契約を締結した日から起算して2週間以内に,事後届出を行わなければならない。」

2.「一団の造成宅地を数期に分けて不特定多数の者に分譲する場合において,それぞれの分譲面積は事後届出の対象面積に達しないが,その合計面積が事後届出の対象面積に達するときは,事後届出が必要である。

3.「事後届出においては,土地に関する権利の移転等の対価の額を届出書に記載しなければならないが,当該対価の額が土地に関する権利の相当な価額に照らし著しく適正を欠くときでも,そのことをもって勧告されることはない。」

4.「事後届出に係る土地の利用目的について勧告を受けた場合において,その勧告を受けた者がその勧告に従わなかったときは,その旨及びその勧告の内容を公表されるとともに,罰金に処せられることがある。」

【正解】

× × ×

●事後届出

面積要件 都市計画区域 市街化区域 2,000平方メートル以上
非線引き都市計画区域 5,000平方メートル以上
市街化調整区域
都市計画区域外 準都市計画区域
両区域外
10,000平方メートル(1 ha)以上
1.「土地売買等の契約を締結した場合には,当事者双方は,その契約を締結した日から起算して2週間以内に,事後届出を行わなければならない。」

【正解:×

◆事後届出は,契約締結後2週間以内

 事後届出は,権利取得者〔買主など〕が届出対象となる契約を締結した日から起算して2週間以内に届け出なければならない。(23条1項)

 本肢は<当事者双方が届け出る>となっているため×になる。当事者双方が届け出るのは事前届出〔監視区域・注視区域〕である。

●類題
「事後届出の対象となる土地売買等の契約を締結した場合には,契約当事者双方が届出をしなければならない。」(不動産鑑定士・二次・平成13年)

【正解:×

2.「一団の造成宅地を数期に分けて不特定多数の者に分譲する場合において,それぞれの分譲面積は事後届出の対象面積に達しないが,その合計面積が事後届出の対象面積に達するときは,事後届出が必要である。

【正解:×

◆買いの一団〔買い進みの一団〕と売りの一団

 原則 : 事後届出では権利取得者〔買主等〕が届け出るのであり,分譲者〔権利設定者〕が届け出ることはない。

 一団の土地が分譲される場合,その合計面積が事後届出の対象面積に達していても,それぞれの分譲面積が事後届出の対象面積に達していないならば,それぞれの権利取得者は事後届出をする必要はない。(事後届出では,権利取得者が権利を取得した土地の面積が届出対象面積になっていれば,届け出なければいけない。)

買いの一団・市街化区域内

  一つ一つの土地が届出対象面積に達しなくても,最終的に権利取得者〔買主など〕が権利を取得する土地全体の面積が届出対象に達する場合は,取得目的が同じならば『買いの一団』となり,権利取得者は事後届出をしなければならない。下図のは事後届出をしなければならない。買いの一団の判断基準 ⇒ 買いの一団について(岡山県),

 売主A 600  ―→  買主D 2,000

 権利取得者が1人

 売主B 700  ―→
 売主C 700  ―→

監視区域・注視区域では,契約の当事者が届出義務者なので,が事前届出をしなければならない。

売りの一団・市街化区域内

 土地を分けて売る場合に,売る土地の合計面積が届出対象面積であっても,買主が取得した土地が届出対象面積に達していなければ,買主は事後届出をする必要はない。しかし,取得した土地が届出対象面積になる場合は,買主は事後届出をしなければならない。下図では,b,cは届出の必要はないが,aは事後届出をしなければならない。

 売主 d 合計5,000

 権利設定者が1人

 ―→  買主 a 2,000
 ―→  買主 b 1,500
 ―→  買主 c 1,500

監視区域・注視区域では,土地を分けて売る場合に,売ろうとしている土地の合計面積が届出対象面積であれば,買主が取得する土地のそれぞれが届出対象面積に達していなくても,契約の当事者(売主と買主)dabc,は事前届出をしなければならない。

3.「事後屈出においては,土地に関する権利の移転等の対価の額を届出書に記載しなければならないが,当該対価の額が土地に関する権利の相当な価額に照らし著しく適正を欠くときでも,そのことをもって勧告されることはない。」

【正解:

◆事後届出に対する勧告は土地利用に関するものに限られる

 事後届出では,届出のあった土地利用が土地利用基本計画その他の土地利用に関する計画に適合せず,当該土地を含む周辺の地域の適正かつ合理的な土地利用を図るために著しい支障があると認めるときは,都道府県知事〔または指定都市の長〕は,土地利用審査会の意見を聴いて,利用目的について必要な変更をすべきことを勧告することができる。(24条1項)

 『対価の額』は事後届出の記載事項になっているが(23条1項6号),事後届出に対しての勧告は土地利用に関するものに限られており,当該対価の額について勧告されることはない。

●関連問題
「都道府県知事は国土利用計画法第23条の規定による事後届出をした者に対し,勧告をする必要がないと認めたときは,遅滞なく,その旨を事後届出をした者に通知しなければならない。」(不動産鑑定士・平成12年)
【正解:×事前届出には不勧告について遅滞なく届出をした者に通知しなければいけないという規定があるが,事後届出にはこのような規定はない。

4.「事後届出に係る土地の利用目的について勧告を受けた場合において,その勧告を受けた者がその勧告に従わなかったときは,その旨及びその勧告の内容を公表されるとともに,罰金に処せられることがある。」

【正解:×

◆勧告に従わなかったときは公表されることがある。

 事前届出・事後届出とも都道府県知事〔または指定都市の長〕から勧告を受けたのにもかかわらず,従わなかったときはその旨及びその勧告内容について公表されることがある。〔罰則はない。また従わなかった場合でも契約は有効である。〕(26条,27条の5第4項,27条の8第2項)

事後届出での勧告=都道府県知事〔または指定都市の長〕が土地利用審査会の意見を聴いて,利用目的について必要な変更をすべきことを勧告。事後届出のあった日から起算して3週間以内に勧告しなければならないが,合理的な理由があるときは3週間の範囲内で勧告する期間を延長することができる。
事前届出での勧告=都道府県知事〔または指定都市の長〕が土地利用審査会の意見を聴いて,契約の締結を中止すべきことその他届出に係る事項について必要な措置〔予定対価の引き下げ利用目的の変更など〕を構ずべきことを勧告。事前届出のあった日から起算して6週間以内に勧告しなければならない。

事後届出での勧告と助言−従わなかった場合の比較

 勧告に従わなかったとき  罰則はないが,公表されることがある(平成11年,14年)
 助言に従わなかったとき  罰則も,公表されることもない。(平成12年出題)

 都道府県知事は,事後届出をした者に対して,土地の利用目的について,当該土地を含む周辺の地域の適正かつ合理的な土地利用を図るために必要な助言をすることができる。(27条の2)


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