法令上の制限 実戦篇
国土利用計画法の過去問アーカイブス 平成8年・問18♯
国土利用計画法第23条第1項の届出 (以下この問において「事後届出」という。) 及び同法第27条の4第1項の届出又は同法第27条の7第1項の届出(以下この問において「事前届出」という。) に関する次の記述のうち,正しいものはどれか。 (平成8年・問18改) |
1.「注視区域内にある一団の造成宅地を第一期,第二期に分けて分譲する場合において,それぞれの分譲面積が届出対象面積に達しないときは,その合計面積が届出対象面積に達する場合でも事前届出をする必要はない。」 |
2.「監視区域の指定を解除する旨の公告があった場合において,当該解除に係る区域内の土地について土地売買等の契約を締結したときは,一切事後届出を行う必要はない。なお,当該区域内には,監視区域の解除後において,注視区域,規制区域のいずれにも指定されていないものとする。」 |
3.「事前届出をして注視区域内にある土地の所有権を6ヵ月以内に移転する旨の売買契約を行い,所有権移転請求権を取得した者が,当該届出に係る事項を変更することなく当該請求権を行使して所有権を取得する場合,改めて事前届出を行う必要はない。」 |
4.「国土利用計画法27条の4第1項の規定に違反して,事前届出をしないで土地売買等の契約を締結した場合には,その契約が無効になるだけでなく,契約の当事者が懲役に処せられることがある。」 |
【正解】
1 | 2 | 3 | 4 |
× | × | ○ | × |
1.「注視区域内にある一団の造成宅地を第一期,第二期に分けて分譲する場合において,それぞれの分譲面積が届出対象面積に達しないときは,その合計面積が届出対象面積に達する場合でも事前届出をする必要はない。」 |
【正解:×】 ◆売りの一団 一回の取引での面積は届出対象にならなくても,複数回の取引を合計すると最終的に届出対象面積要件を満たしている『一団の土地』の取引は,個々の取引それぞれについて届出が必要です。 事後届出では権利取得者が届出義務者であり,事前届出では契約の両当事者が届出義務者でした。そのため,事前届出では,『買いの一団』だけでなく,『売りの一団』でも届出義務があります。〔事後届出は「買いの一団」のみ。〕 『買いの一団』では事後届出・事前届出とも権利取得者が取引する合計面積で判断しますが,事前届出の『売りの一団』では権利設定者が取引しようとする合計面積が基準に達していれば両当事者に届出義務があります。〔事後届出では「売りの一団」で届出義務はないことに注意。〕 したがって,<それぞれの分譲面積が届出対象面積に達しないときは,その合計面積が届出対象面積に達する場合でも事前届出をする必要はない>とする本肢は×です。 ●売りの一団の例 (市街化区域内の場合)
※監視区域・注視区域では,土地を分けて売る場合に,売ろうとしている土地の合計面積が届出対象面積であれば,個々の取引で買主が取得する土地のそれぞれが届出対象面積に達していなくても,契約の当事者(売主と買主)はそれぞれの取引について事前届出をしなければいけません。→監視区域の事前届出 |
2.「監視区域の指定を解除する旨の公告があった場合において,当該解除に係る区域内の土地について土地売買等の契約を締結したときは,一切事後届出を行う必要はない。なお,当該区域内には,監視区域の解除後において,注視区域,規制区域のいずれにも指定されていないものとする。」 |
【正解:×】 ◆監視区域の解除後 監視区域が解除されたとしても,利用目的をチェックする事後届出をしなくていいということではありません。事後届出の面積要件を満たす取引で利用目的の変更を伴う場合は事後届出が必要です。 ▼本肢は「監視区域の指定解除前に」事前届出をしていたということではなく,≪監視区域の指定を解除する旨の公告・・・ウンヌン≫というのはカザリ〔ノイズ〕に過ぎません。要するに,監視・注視・規制区域などに指定されていない区域では事後届出は必要なのかと当たり前のことを訊ねているのに過ぎません。 |
●関連問題 |
「監視区域の指定を解除する旨の公告があった場合においては,当該解除に係る区域内の土地の売買等の契約について解除前に事前届出をして勧告を受けなかった者が,当該解除後に土地の利用目的の変更をして当該契約を締結したときでも,事後届出をする必要はない。なお,監視区域の解除に伴い,規制区域や注視区域の指定はなされていないものとする。」 |
【正解:×】
監視区域が解除されて無指定区域〔事後届出が必要な区域〕になり,解除前に事前届出をして勧告を受けなかったとしても,解除後に土地の利用目的を変更して契約を締結したときは,改めて事後届出をしなければいけません。 事後届出の趣旨は土地の価格よりも土地の利用目的をチェックするということですから,この原則で考えれば難しいことではないでしょう。 ▼利用目的を変更しないで契約を締結する場合は事後届出をする必要はありません。(施行令・17条8号) |
●類題 |
「注視区域の指定が解除された際,当該区域に係る土地について国土利用計画法27条の4第1項の規定による届出がされていても,当該土地について契約を締結した場合には,改めて事後届出をしなければならない。なお,注視区域の解除に伴い,規制区域や監視区域の指定はなされていないものとする。」(不動産鑑定士・二次・平成12年) |
【正解:×】 注視区域が解除されて無指定区域〔事後届出が必要な区域〕になり,解除前に事前届出をして勧告を受けなかったとしても,解除後に土地の利用目的を変更して契約を締結したときは,確かに,改めて事後届出をしなければいけません。(施行令・17条8項) しかし,注視区域の指定解除前に事前届出をしていて,解除後に利用目的を変更しないで契約を締結する場合は事後届出をする必要はないので,<当該土地について契約を締結した場合には,改めて事後届出をしなければならない>として利用目的の変更の有無によって事後届出の要否が分かれることについて言及していない本肢は×です。 |
3.「事前届出をして注視区域内にある土地の所有権を6ヵ月以内に移転する旨の売買契約を行い,所有権移転請求権を取得した者が,当該届出に係る事項を変更することなく当該請求権を行使して所有権を取得する場合,改めて事前届出を行う必要はない。」 |
【正解:○】 ◆所有権移転請求権の行使 事前届出をして勧告を受けることなく所有権移転請求権を取得した者が,その所有権移転請求権を行使するのは届出の必要な「土地売買等の契約」には該当しないので,改めて事前届出を行う必要はありません。所有権移転請求権の行使によって土地の所有権を取得する者に変更はないからです。 ▼形成権(所有権移転請求権・予約完結権・買戻権・取消権・解除権)の行使,停止条件付売買で届出後に条件成就の場合は事前届出・事後届出とも必要はない。 ●届出の要不要の整理
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4.「国土利用計画法27条の4第1項の規定に違反して,事前届出をしないで土地売買等の契約を締結した場合には,その契約が無効になるだけでなく,契約の当事者が懲役に処せられることがある。」 |
【正解:×】平成13年出題 ◆無届で契約を締結した場合の罰則 監視区域・注視区域内において国土利用計画法の規定に違反して必要な届出をせず,土地売買等の契約を締結した場合には,契約は有効ですが,6月以下の懲役又は100万円以下の罰金に処せられます。(47条1項) したがって,<契約が無効になる>とする本肢は×です。 ●事前届出違反と勧告に従わなかったときのまとめ
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●国土利用計画法の過去問Archives |
【平成10年法施行後の過去問】 平成11年・問16,平成12年・問16,平成13年・問16,平成14年・問16,平成15年・問16,平成16年・問16,平成17年・問17,平成18年・問17,平成19年・問17,平成20年・問17, |
【平成10年法施行前の問題】法改正対応しているため事実上の新作問題 昭和50年,昭和50年,昭和54年,昭和55年,昭和56年,昭和57年,昭和58年,昭和59年,昭和60年,昭和61年,昭和62年,昭和63年,平成元年,平成2年問17,平成2年問18,平成3年,平成4年,平成5年,平成6年,平成7年,平成8年,平成9年,平成10年, |