法令上の制限 実戦篇
国土利用計画法の過去問アーカイブス 平成3年・問17♯
国土利用計画法に関する次の記述のうち,正しいものはどれか。(平成3年・問17)改 |
1.「信託契約によって土地の所有権の移転を受けた受託者〔信託銀行〕が,信託財産である当該土地を売却した場合,当該土地の買主は,国土利用計画法第23条の事後届出をする必要はない。」 |
2.「注視区域内の土地の売買を行おうとする者は,事前届出をした日以後は契約を締結してもよく,当該届出の内容について勧告された場合は,勧告にしたがって契約を変更すれば足りる。」 |
3.「監視区域に所在する土地について売買契約を締結した者は,その土地が届出対象面積未満のものであっても,当該契約の対価,利用目的等について,都道府県知事から報告を求められることがある。」 |
4.「規制区域に所在する土地について,都道府県知事の許可を受けずに売買契約を締結した場合,刑罰を課されることはあるが,当該契約は効力を有する。」 |
【正解】
1 | 2 | 3 | 4 |
× | × | ○ | × |
1.「信託契約によって土地の所有権の移転を受けた受託者〔信託銀行〕が,信託財産である当該土地を売却した場合,当該土地の買主は,国土利用計画法第23条の事後届出をする必要はない。」 |
【正解:×】平成9年 ◆受託財産の有償処分 信託契約は信託財産を受託者が運用するものなので対価性がないため,信託契約の締結については事前届出・事後届出とも不要です。しかし,受託者 (信託銀行) が,受託財産を売却したとなると話は別です。この場合は,土地の売買になりますから,土地の買主は事後届出〔監視区域・注視区域内では買主・売主の事前届出〕をする必要があります。〔受託した財産を勝手に売払ってしまっていいの?という疑問をお持ちの方は下記参照。↓〕 ▼信託行為は法律行為によって設定されます。土地の場合は受託者への所有権移転という形〔委託者が地主でないときには地上権の移転登記〕をとり,受託者は(土地を担保にして資金を借りて)建物を建てて賃貸し必要経費等除いて利益を配当という形で委託者・受益者に還元します。〔管理信託〕このとき建物を賃貸ではなく分譲にする場合〔マンション等〕があり,その場合に土地の売却がされることがあります。〔処分信託〕本肢の例としてはこの処分信託が代表的です。 |
●関連問題 |
「Aは,市街化区域内に面積2,000平方メートルの一団の土地(甲地)を所有している。Aが甲地についてBを受託者とする信託契約を締結した場合には,事後届出をする必要がある。」(昭和61年・問19改) |
【正解:×】 |
2.「注視区域内の土地の売買を行おうとする者は,事前届出をした日以後は契約を締結してもよく,当該届出の内容について勧告された場合は,勧告にしたがって契約を変更すれば足りる。」 |
【正解:×】 ◆事前届出後の6週間以内 監視区域内では都道府県の規則で定められた面積以上,注視区域内では国土利用計画法に定められた面積以上の土地売買等の契約を締結しようとする場合に事前届出が必要であり,原則として,事前届出をした後6週間を経過するまでの間は契約を締結することはできません。ただし,勧告しない旨の通知を受けたときは,届出後6週間以内でも契約を締結することができます。不勧告の通知が届いているのに6週間が経過するのを待つ意味がないからです。(27条の7第1項,27条の4第3項) 監視区域・注視区域とも,事前届出後6週間以内に,勧告も勧告しない旨の通知も受けていないのに契約が締結されると50万円以下の罰金に処せられます。しかし,契約は有効です。(48条)→勧告に従わなかったときに公表はされるが罰則がないことと対比してみましょう。 したがって本肢は×です。<勧告されたら,契約を変更すればいい>というものではないのです。 ▼監視区域・注視区域とも,都道府県知事は,勧告をする必要がないと認めたときは遅滞なくその旨を事前届出をした者に通知しなければいけません。(27条の8第2項,27条の5第3項) |
3.「監視区域に所在する土地について売買契約を締結した者は,その土地が届出対象面積未満のものであっても,当該契約の対価,利用目的等について,都道府県知事から報告を求められることがある。」 |
【正解:○】 ◆監視区域では報告を求められることがある 監視区域が指定されると当該区域を含む周辺の地域における地価の動向や土地取引の状況等を常時把握するため,都道府県知事〔または指定都市の長〕はこれらに関する調査が義務付けられています。(27条の6第3項) この調査を適正に行うため必要があると認めるときは,都道府県知事〔または指定都市の長〕は,面積要件に達していないために事前届出をしなかった者に対して,当該土地売買等の契約及び土地利用について報告を求めることができます。(27条の9) ⇒ 届出対象面積未満では事前届出をする必要はないが,契約内容と土地利用目的について,都道府県知事または指定都市の長から,報告を求められることがある。 ▼この規定は監視区域のみの規定であり,注視区域にはありません。 |
4.「規制区域に所在する土地について,都道府県知事の許可を受けずに売買契約を締結した場合,刑罰を課されることはあるが,当該契約は効力を有する。」 |
【正解:×】 ◆規制区域で許可を受けずに契約締結 規制区域内の土地について,許可を受けずに売買等の契約を締結したときは,その契約は無効であり(14条2項),『3年以下の懲役or200万円以下の罰金』の刑罰が課されます。(46条) ●契約の効力と刑罰の比較
註 規制区域内の土地の売買等の契約には都道府県知事の許可が必要です。 |
●関連問題 |
「注視区域又は監視区域に所在する土地について,事前届出をしないで土地売買等の契約を締結した場合,当該契約は無効である。」(不動産鑑定士・平成11年・改) |
【正解:×】 |
●国土利用計画法の過去問Archives |
【平成10年法施行後の過去問】 平成11年・問16,平成12年・問16,平成13年・問16,平成14年・問16,平成15年・問16,平成16年・問16,平成17年・問17,平成18年・問17,平成19年・問17,平成20年・問17, |
【平成10年法施行前の問題】法改正対応しているため事実上の新作問題 昭和50年,昭和50年,昭和54年,昭和55年,昭和56年,昭和57年,昭和58年,昭和59年,昭和60年,昭和61年,昭和62年,昭和63年,平成元年,平成2年・問17,平成2年・問18,平成3年,平成4年,平成5年,平成6年,平成7年,平成8年,平成9年,平成10年, |