法令上の制限 実戦篇
国土利用計画法の過去問アーカイブス 昭和62年・問18♯ 一団の土地〔買いの一団〕
Aは,市街化区域内に面積800平方メートルの土地〔以下,この問において「甲地」という。〕を所有している。また,Bは,市街化区域内に甲地に隣接して面積1,200平方メートルの土地〔以下,この問において「乙地」という。〕を所有している。甲地及び乙地に係る土地取引について,国土利用計画法第23条の事後届出に関する次の記述のうち,正しいものはどれか。(昭和62年・問18)改 |
1.「Cは,甲地及び乙地を取得し,両地にまたがってビル建設を行うことを計画したが,資金の関係で乙地は甲地取得の半年後に取得することとした。この場合,CとAが売買契約を締結したときには事後届出は不要であるが,CとBが売買契約を締結したときには事後届出が必要である。」 |
2.「Aから相続により甲地を取得したCは,さらに乙地の所有権を売買により取得し,両地にまたがってビル建設を行おうとしている。この場合,CとBが売買契約を締結したときには事後届出が必要である。」 |
3.「Cは,甲地及び乙地にまたがってビル建設を行うために,甲地の所有権を売買により取得するとともに,乙地に地上権を設定〔設定の対価として権利金がある。〕しようとしている。この場合,CとAとの売買契約及びCとBの地上権設定契約のいずれの契約を行ったときにも事後届出が必要である。」 |
4.「Cは,民事調停法による調停に基づき,甲地及び乙地の所有権を取得したが,この場合,事後届出が必要である。」 |
●一団の土地の考え方 | |||||||
●買いの一団・市街化区域内−物理的一体性と計画的一体性 一つ一つの土地が届出対象面積に達しなくても,最終的に権利取得者〔買主など〕が権利を取得する土地全体の面積では届出対象に達する場合は,取得目的が同じならば『買いの一団』となり,権利取得者は事後届出をしなければならない。下図のSは事後届出をしなければならない。
※この図ではP,Q,RとSが売買契約になっていますが,PとSが売買契約の締結,QとSが対価のある賃借権の設定などのように届出対象となる契約が複合して締結されても,事後届出をしなければいけません。本問題の肢1,肢3は契約が複合的に締結された場合に事後届出をする必要があるかどうかを問う問題です。 ここではわかりやすく説明するために,<一団の土地について複合して権利取得し届出対象面積になる>場合も『買いの一団』として扱います。 ※監視区域・注視区域では,契約の当事者が届出義務者なので,P,Q,RとSが事前届出をしなければならない。 |
【正解】
1 | 2 | 3 | 4 |
× | × | ○ | × |
1.「Cは,甲地及び乙地を取得し,両地にまたがってビル建設を行うことを計画したが,資金の関係で乙地は甲地取得の半年後に取得することとした。この場合,CとAが売買契約を締結したときには事後届出は不要であるが,CとBが売買契約を締結したときには事後届出が必要である。」 |
【正解:×】 ◆買いの一団 原則 買いの一団は届出対象となる契約で権利取得する土地の合計面積で判断する ポイント 合計面積・契約内容の2つとも届出対象になっているか?
二つとも届出対象となる契約であり,甲地+乙地の合計面積が届出対象に達する。買いの一団に該当するので,Cは二つの契約ともそれぞれ事後届出をする必要がある。 本肢は,<Aと売買契約をしたときは届出は不要だが,Bと売買契約をしたときに届出が必要>としているので誤り。
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2.「Aから相続により甲地を取得したCは,さらに乙地の所有権を売買により取得し,両地にまたがってビル建設を行おうとしている。この場合,CとBが売買契約を締結したときには事後届出が必要である。」 |
【正解:×】 ◆相続による権利取得は届出不要 原則 買いの一団は届出対象となる契約で権利取得する土地の合計面積で判断する
相続,法人の合併,遺産分割,遺贈,財産分与は届出対象となる土地の売買等の契約に該当しないので,甲地の所有権の取得は届出は不要。 買いの一団は届出対象となる契約で権利取得する土地の合計面積で判断するのでこの場合は,買いの一団にはならない。したがって乙地の売買のみで届出対象になるかどうかを考えることになる。 乙地は1,200平方メートルなので届出対象面積には達しないため,この売買のみではCは事後届出をする必要はない。 |
●類題 |
「相続人が注視区域内の土地を相続する場合には,事前届出が必要である。」(不動産鑑定士・二次・平成9年) |
【正解:×】 |
3.「Cは,甲地及び乙地にまたがってビル建設を行うために,甲地の所有権を売買により取得するとともに,乙地に地上権を設定〔設定の対価として権利金がある。〕しようとしている。この場合,CとAとの売買契約及びCとBの地上権設定契約のいずれの契約を行ったときにも事後届出が必要である。」 |
【正解:○】 ◆売買契約+対価のある地上権設定 原則 買いの一団は届出対象となる契約で権利取得する土地の合計面積で判断する
Aとの売買契約,Bとの「対価のある地上権設定契約」とも届出対象となる「土地売買等の契約」に該当し,合計面積が2,000平方メートルなので,買いの一団に該当する。 したがって,Cは,CとAとの売買契約及びCとBの地上権設定契約のいずれの契約を行ったときにも届出が必要である。
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4.「Cは,民事調停法による調停に基づき,甲地及び乙地の所有権を取得したが,この場合,事後届出が必要である。」 |
【正解:×】 ◆民事調停法の調停に基づいて所有権を取得→届出は不要
民事調停法による調停・民事訴訟法による和解・家事審判法による調停などに基づいて土地に関する権利の移転又は設定をする場合,届出を必要とする土地の売買契約等に該当しない。(23条2項3号,施行令17条1項) |
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