法令上の制限 実戦篇
国土利用計画法の過去問アーカイブス 昭和61年・問18 届出の要否
Aは,市街化区域内 (注視区域内) に面積2,000平方メートルの一団の土地 (以下この問において「甲地」という。) を所有している。甲地に係るBとの土地取引について,国土利用計画法第27条の4第1項の届出 (以下この問において「事前届出」という。) に関する次の記述のうち,正しいものはどれか。(昭和61年・問18) |
1.「BがAに対して有する金銭債権の担保として,甲地の所有権をBに移転する契約を締結しようとする場合 (いわゆる譲渡担保の場合) には,事前届出をする必要がない。」 |
2.「甲地が1,000平方メートルずつ2筆に分けて登記されており,1筆についてBと,他の1筆について第三者Cと売買契約を締結しようとする場合には,事前届出をする必要はない。」 |
3.「Aが第三者Cに対して負っている金銭債務をBが負担する代わりに甲地の所有権をBに移転する契約を締結しようとする場合には,事前届出をする必要がある。 」 |
4.「Aが甲地についてBを受託者とする信託契約を締結しようとする場合には,事前届出をする必要がある。」 |
【正解】
1 | 2 | 3 | 4 |
× | × | ○ | × |
●届出の要否の判定 |
届出が必要な土地に関する権利の移転及び設定の契約は,事前届出〔両当事者が届出〕・事後届出〔権利取得者が届出〕とも同じです。〔面積要件は,事後届出と注視区域の事前届出は同じ。監視区域で届出が必要な面積は,都道府県の規則で定められる。〕 |
■事後届出・注視区域の事前届出の面積要件
面積要件 | 都市計画区域 | 市街化区域 | 2,000平方メートル以上 |
非線引き都市計画区域 | 5,000平方メートル以上 | ||
市街化調整区域 | |||
都市計画区域外 | 準都市計画区域 両区域外 |
10,000平方メートル(1 ha)以上 |
1.「BがAに対して有する金銭債権の担保として,甲地の所有権をBに移転する契約を締結しようとする場合 (いわゆる譲渡担保の場合) には,事前届出をする必要がない。」 |
【正解:×】 ◆譲渡担保−届出が必要 譲渡担保は「土地に関する権利の,対価の授受を伴って,移転・設定する契約」に該当するので,届出が必要です。 ▼譲渡担保権設定契約・・・金銭消費貸借などから生じる債権を担保するために,土地などの所有権を債権者に移転して,弁済されれば所有権を設定者に復帰させるという契約。譲渡担保では,所有権は譲渡担保権者に移るが,設定者〔債務者・物上保証人〕が目的物を占有し利用することができる。動産では引渡し,不動産では登記〔譲渡担保を原因とする所有権移転登記〕が第三者への対抗要件となる。 仮登記担保・・・債務の弁済がない場合に,所有権が移転する。 譲渡担保・・・あらかじめ所有権を移転して,債務の弁済があったときに所有権が設定 |
2.「甲地が1,000平方メートルずつ2筆に分けて登記されており,1筆についてBと,他の1筆について第三者Cと売買契約を締結しようとする場合には,事前届出をする必要はない。」 |
【正解:×】 ◆売りの一団−届出が必要 一団の土地を複数の取引で売却する場合に,一回の取引では事前届出の面積要件に達していなくても,全体として事前届出の面積要件に達していれば,買主・売主とも当事者として事前届出をしなければなりません。登記が分かれていてもこのことに変わりはありません。 甲地が2筆に分かれて登記されていても,『甲地全体』では2,000平方メートルなので,届出対象面積の「2000平方メートル以上」に該当することから,AとB,AとCは当事者としてそれぞれの売買契約について事前届出をしなければいけません。 |
3.「Aが第三者Cに対して負っている金銭債務をBが負担する代わりに甲地の所有権をBに移転する契約を締結しようとする場合には,事前届出をする必要がある。 」 |
【正解:○】 ◆金銭債務を引き受ける代わりに土地の所有権を移転する契約−届出が必要 Aの金銭債務をBが負担する代わりに甲地の所有権をBに移転する契約は,「土地に関する権利の,対価の授受を伴って,移転・設定する契約」に該当するので,届出が必要です。〔対価=Aの金銭債務をBが負担する〕 |
4.「Aが甲地についてBを受託者とする信託契約を締結しようとする場合には,事前届出をする必要がある。」 |
【正解:×】 ◆信託契約−届出不要 信託契約の設定は,対価の授受を伴う権利の移転・設定とはいえないので,届出の必要はありません。 ただし,受託後に信託会社などが受託地を有償で処分するには届出が必要です。→受託地に分譲マンションを建築して土地を売却するときなど。 |
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