法令上の制限 実戦篇

国土利用計画法の過去問アーカイブス 昭和54年 事前届出の勧告


国土利用計画法第27条の4〔注視区域の届出〕,または第27条の7〔監視区域の届出〕の規定による事前届出が行われた場合,当該土地取引に関し,取引中止等の勧告が行われることがあるが,この勧告についての次の記述のうち,誤っているものはどれか。(昭和54年)

1.「予定対価の額に関する勧告は,届け出た予定対価の額が届出の時点における土地に関する権利の相当な価額に照らして著しく適正を欠くと認められるときに行われる。」

2.「勧告は,届出が行われた日から起算して6週間以内に行わなければならないこととされているので,その期間内に勧告が行われなかった場合には,土地売買等の契約を締結しても差し支えない。

3.「届出をした者は,都道府県知事または指定都市〔地方自治法の大都市に関する特例の規定の適用のある政令指定都市をいう〕の長から取引中止の勧告を受けたときは,当該都道府県知事または指定都市の長に対し,当該土地に関する権利を買い取るべきことを請求することができる。」

4.「取引後の土地の利用目的が,道路,水道その他の公共施設の整備の予定からみて明らかに不適当なものであると認められるときは,届出をした当事者は,取引中止の勧告を受けることがある。」

【正解】

×

1.「予定対価の額に関する勧告は,届け出た予定対価の額が届出の時点における土地に関する権利の相当な価額に照らして著しく適正を欠くと認められるときに行われる。」

【正解:

◆勧告が行われる要件

 都道府県知事または指定都市の長は,事前届出があった場合に,取引価額や土地の利用目的等について審査を行い,取引価額と土地の利用目的等のいずれかに当該土地を含む周辺の地域の適正かつ合理的な土地利用を図るために著しい支障があると認めるときは,土地利用審査会の意見を聴いて,当該土地売買等の契約の締結を中止すべきことその他その届出に係る事項について必要な措置を講ずべきことを勧告することができます。

 『予定対価の額に関する勧告』は,具体的には,

・公示価格を規準として算定した所有権の価額に照らし,著しく適正を欠くとき〔注視区域・監視区域共通〕(27条の5第1項第1号,第27条の8 第1項第1号)

・当該土地を含む周辺の地域の適正な地価の形成を図る上で著しい支障を及ぼすおそれがあるとき(投機的取引)〔監視区域〕(27条の8第1項第2号)

 に行われます。

●ヒッカケ対策
1.「事前届出があった場合の勧告は,届け出た予定対価の額が届出の時点における土地に関する権利の相当な価額に照らして著しく適正を欠くと認められるときに行われる。」
【正解:×勧告は取引価額土地の利用目的等について審査を行い,そのどちらか又は双方に問題があったときに行われるので,予定対価の額が著しく適正を欠くときにのみ行われるのではありません。

2.「勧告は,届出が行われた日から起算して6週間以内に行わなければならないこととされているので,その期間内に勧告が行われなかった場合には,土地売買等の契約を締結しても差し支えない。

【正解:

◆6週間経過しても勧告がないときは契約を締結できる

 勧告は事前届出があった日から起算して6週間以内にしなければならないとされています。

 また,都道府県知事〔指定都市の長〕は,勧告をする必要がないと認めたときは,遅滞なく,その旨を事前届出をした者に通知しなければなりません。

 このため,事前届出をした者は,その届出をした日から起算して6週間を経過する日までの間,その事前届出に係る土地売買等の契約を締結してはならないことになっています。(ただし,この6週間の間に,勧告又は不勧告の通知を受けた場合を除く。)(27条の4第3項)

 したがって,事前届出が行われた日から起算して6週間を経過したときは,土地売買等の契約を締結してもよいことになります。

3.「届出をした者は,都道府県知事または指定都市〔地方自治法の大都市に関する特例の規定の適用のある政令指定都市をいう〕の長から取引中止の勧告を受けたときは,当該都道府県知事または指定都市の長に対し,当該土地に関する権利を買い取るべきことを請求することができる。」

【正解:×昭和50年,昭和54年,平成元年,

◆勧告に基づいて契約の締結を中止→買取請求はできない

 規制区域内の土地の権利を有している者が,契約締結について不許可処分を受けた場合には,買取請求をすることができますが,事前届出の場合では,勧告に基づき契約の締結を中止しても買取請求をすることはできません。

 『都道府県知事や指定都市の長は,事前届出についての勧告に基づき契約の締結が中止された場合に必要があると認めるときは,当該土地に関する権利の処分についてのあっせんその他の措置を講ずるよう努めなければならない』という規定と『規制区域での買取請求』をしっかり区別してください。

4.「取引後の土地の利用目的が,道路,水道その他の公共施設の整備の予定からみて明らかに不適当なものであると認められるときは,届出をした当事者は,取引中止の勧告を受けることがある。」

【正解:

◆土地の利用目的等に対する勧告

 土地の利用目的が,

・道路,水道その他の公共施設の整備の予定からみて,
・学校その他の公益的施設の整備の予定からみて,
・周辺の自然環境の保全上,

 明らかに不適当なものである場合は,事前届出をした当事者は,取引中止の勧告を受けることがあります。(27条の5第1項第3号,第27条の8 第1項第1号)

●注視区域での勧告
(注視区域における土地売買等の契約に関する勧告等)
第27条の5  都道府県知事は、前条第一項の規定による届出があつた場合において、その届出に係る事項が次の各号のいずれかに該当し当該土地を含む周辺の地域の適正かつ合理的な土地利用を図るために著しい支障があると認めるときは、土地利用審査会の意見を聴いて、その届出をした者に対し、当該土地売買等の契約の締結を中止すべきことその他その届出に係る事項について必要な措置を講ずべきことを勧告することができる。

一  届出に係る土地に関する権利の移転又は設定の予定対価の額が、近傍類地の取引価格等を考慮して政令で定めるところにより算定した土地に関する権利の相当な価額(その届出に係る土地が地価公示法第二条第一項 に規定する公示区域に所在し、かつ、同法第六条 の規定による公示価格を取引の指標とすべきものである場合において、その届出に係る土地に関する権利が所有権であるときは、政令で定めるところにより同条 の規定による公示価格を規準として算定した所有権の価額)に照らし、著しく適正を欠くこと。

二  届出に係る土地に関する権利の移転又は設定後における土地の利用目的が土地利用基本計画その他の土地利用に関する計画に適合しないこと。

三  届出に係る土地に関する権利の移転又は設定後における土地の利用目的が、道路、水道その他の公共施設若しくは学校その他の公益的施設の整備の予定からみて、又は周辺の自然環境の保全上、明らかに不適当なものであること。

2  前項の規定による勧告は、前条第一項の規定による届出があつた日から起算して六週間以内にしなければならない。

3  都道府県知事は、第一項の規定による勧告をする必要がないと認めたときは、遅滞なく、その旨を前条第一項の規定による届出をした者に通知しなければならない。

●監視区域での勧告
(監視区域における土地売買等の契約に関する勧告等)
第27条の8 第1項  都道府県知事は、前条第1項において準用する第27条の4第1項の規定による届出があつた場合において、その届出に係る事項が次の各号のいずれかに該当すると認めるときは、土地利用審査会の意見を聴いて、その届出をした者に対し、当該土地売買等の契約の締結を中止すべきことその他その届出に係る事項について必要な措置を講ずべきことを勧告することができる。

一  その届出に係る事項が第27条の5第1項各号のいずれかに該当し当該土地を含む周辺の地域の適正かつ合理的な土地利用を図るために著しい支障があること。

二  その届出が土地に関する権利の移転をする契約の締結につきされたものである場合において、その届出に係る事項が次のイからヘまでのいずれにも該当し当該土地を含む周辺の地域の適正な地価の形成を図る上で著しい支障を及ぼすおそれがあること。

イ 届出に係る土地に関する権利を移転しようとする者が当該権利を土地売買等の契約により取得したものであること(その土地売買等の契約が民事調停法 による調停に基づくものである場合、当該権利が国等から取得されたものである場合その他政令で定める場合を除く。)。

ロ 届出に係る土地に関する権利を移転しようとする者により当該権利が取得された後二年を超えない範囲内において政令で定める期間内にその届出がされたものであること。

ハ 届出に係る土地に関する権利を移転しようとする者が、当該権利を取得した後、その届出に係る土地を自らの居住又は事業のための用その他の自ら利用するための用途(一時的な利用その他の政令で定める利用を除く。以下この号において「自ら利用するための用途」という。)に供していないこと。

ニ 届出に係る土地に関する権利を移転しようとする者が次のいずれにも該当しないこと。

(1) 事業として届出に係る土地について区画形質の変更又は建築物その他の工作物の建築若しくは建設(以下この号において「区画形質の変更等」という。)を行つた者

(2) 債権の担保その他の政令で定める通常の経済活動として届出に係る土地に関する権利を取得した者

ホ 届出に係る土地に関する権利の移転が次のいずれにも該当しないこと。

(1) 債権の担保その他の政令で定める通常の経済活動として行われるもの

(2) 区画形質の変更等の事業の用又はこれらの事業の用に供する土地の代替の用に供するために土地に関する権利を買い取られた者に対しその権利の代替の用に供するために行われるものであつて政令で定めるもの

(3) 届出に係る土地に関する権利を移転しようとする者に政令で定める特別の事情があつて行われるもの

ヘ 届出に係る土地に関する権利の移転を受けようとする者が次のいずれにも該当しないこと。

(1) 届出に係る土地を自ら利用するための用途に供しようとする者

(2) 事業として届出に係る土地について区画形質の変更等を行つた後、その事業としてその届出に係る土地に関する権利を移転しようとする者

(3) 届出に係る土地を自ら利用するための用途に供しようとする者にその届出に係る土地に関する権利を移転することが確実であると認められる者

(4) 届出に係る土地について区画形質の変更等を事業として行おうとする者にその届出に係る土地に関する権利を移転することが確実であると認められる者


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