法令上の制限 実戦篇

都市計画法の過去問アーカイブス 昭和54年 都市計画制限・事業地 


都市計画法に基づく都市計画事業の認可の告示のあった土地〔以下「事業地」という〕に関する次の記述のうち,正しいものはどれか。(昭和54年)

1.「事業地内において都市計画事業の施行の障害のおそれのある一定の移動の容易でない物件の設置を行おうとする者は,都道府県知事等に届け出なければならない。」

2.「事業地内の土地建物等を無償で譲り渡そうとする者は,譲り渡そうとする相手方等の事項を書面で事業施行者に届け出なければならない。

3.「事業地内の土地については,土地収用法に基づく事業認定を得ないでも土地収用法の規定が適用される。」

4.「事業地内の土地で,土地収用法の規定により収用の手続きが保留されているものの所有者は,当該土地に建築物が建っている場合でも,都市計画事業の施行者に対し当該土地および建物を時価で買い取るべきことを請求できる。」

肢1の出題は複数年度でありますが,肢3〜肢4の出題は最近ではありません。
肢2は,平成20年問18肢3で出題。

【正解】

× × ×

■参考■ 都市計画施設,市街地開発事業,予定区域,都市計画事業の全体像

●事業地
 事業認可等の告示があった日から,都市計画施設の整備事業,市街地開発事業の施行区域は『事業地』と呼ばれます。

1.「事業地内において都市計画事業の施行の障害のおそれのある一定の移動の容易でない物件の設置を行おうとする者は,都道府県知事等に届け出なければならない。」

【正解:×

◆移動の容易でない物件の設置

 都市計画事業の告示があった後においては,当該事業地内において,都市計画事業の施行の障害となるおそれがある土地の形質の変更若しくは建築物の建築その他工作物の建設を行ない,又は政令で定める重量5tを超える移動の容易でない物件の設置若しくは堆積を行なおうとする者は,都道府県知事等の許可を受けなければなりません。(65条1項)

 本肢では,「都道府県知事等に届け出なければならない」となっているので誤りの記述です。

物件が容易に分割して5t以下にできる場合には許可は不要です。

知事等は,許可の申請があつた場合に,その許可を与えようとするときは,あらかじめ,施行者の意見をきかなければなりません。(65条2項)

管理行為や軽易な行為,非常災害のための応急措置であっても,事業の施行の障害となるおそれのある行為にも許可が必要なので注意してださい。

2.「事業地内の土地建物等を無償で譲り渡そうとする者は,譲り渡そうとする相手方等の事項を書面で事業施行者に届け出なければならない。

【正解:×

◆事業地内の土地建物を有償で譲渡する場合の届出

 都市計画事業の認可(国の機関が施行者のときは国土交通大臣の承認)の告示があったときは,施行者は,すみやかに,国土交通省令で定める事項を公告しなければなりません。(66条1項)

 この公告の日の翌日から起算して10日を経過した後に事業地内の土地建物等を有償で譲渡しようとする者は,当該土地建物等その予定対価の額(予定対価が金銭以外のものであるときは,これを時価を基準として金銭に見積もつた額。)及び当該土地建物等を譲渡しようとする相手方その他国土交通省令で定める事項を書面で施行者に届け出なければならないことになっています。(67条1項)

 つまり,本肢の「無償で譲渡しようとする者」には届出義務はありません。

 したがって,本肢は誤りの記述です。

この届出は,施行者に土地・建物等を買い取るかどうか考えさせるためのもので,施行者がこの届出があった後から30日以内に買い取るべき旨の通知をしたときは,施行者と届出をした者との間に予定対価の額に相当する代金で売買が成立したものとみなされます。(67条2項)

この届出をした者は,施行者が買い取るべき旨の通知または買い取らない旨の通知をするまでは当該土地建物等の譲渡は禁じられています。(67条3項)

3.「事業地内の土地については,土地収用法に基づく事業認定を得ないでも土地収用法の規定が適用される。」

【正解:

◆都市計画事業のための土地等の収用又は使用−土地収用法の適用

 都市計画事業については,土地収用法第3条各号の一に規定する事業に該当するものとみなし,土地収用法の規定が適用されます。(69条)

 都市計画事業については,土地収用法第20条の規定による事業認定は行なわず,都市計画事業の認可又は承認をもってこれに代えるものとし,都市計画事業の認可又は承認の告示をもって土地収用法第26条第1項の規定による事業認定の告示とみなされます。(70条1項)

 したがって,事業地内の土地については,土地収用法に基づく事業認定を得ないでも土地収用法の規定が適用されます。

4.「事業地内の土地で,土地収用法の規定により収用の手続きが保留されているものの所有者は,当該土地に建築物が建っている場合でも,都市計画事業の施行者に対し当該土地および建物を時価で買い取るべきことを請求できる。」

【正解:×

◆買取請求

 事業地内の土地で,土地収用法第31条の規定により収用の手続が保留されているものの所有者は,施行者に対し,国土交通省令で定めるところにより,当該土地を時価で買い取るべきことを請求することができます。(買い取るべき土地の価額は,施行者と土地の所有者が協議して定める。)

 しかし,「当該土地が他人の権利の目的となっているとき〔賃借権,地上権,抵当権などが設定されていること〕や,「当該土地に建築物・工作物・立木(立木に関する法律で規定する登記された立木)があるとき」は,この買取請求をすることはできません。(68条1項)

 したがって,本肢は誤りの記述です。


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