平成元年度 宅地建物取引主任者資格試験 

権利の変動分野 〔民法・区分所有法・借地借家法・不動産登記法〕

〔問2〕 Aは,Bに対し金銭債権を有しているが,支払い期日を過ぎてもBが支払いをしないので,消滅時効が完成する前に,Bに対して,支払いを求める訴えを提起した。この場合,民法の規定によれば,次の記述のうち正しいものはどれか。なお,この金銭債権の消滅時効期間は,5年とする。

1 に対する勝訴判決が確定した場合,時効は新たに進行を開始し,その時効期間は10年となる。

2 訴えの提起前6月以内に,に債務の履行の催告をしても,時効が中断されるのは,訴えを提起したときである。

3 が訴えを取り下げた場合,の金銭債権は,がその取下げをした日から5年間権利を行使しないとき,消滅する。

4  に対する債権を有する場合において,その債権が既に時効により消滅しているときは,その時効完成前にの金銭債権と相殺し得る状態にあったとしても,は,相殺することはできない。

〔問3〕 A所有の土地が,AからB,BからCへと売り渡され,移転登記も完了している。この場合,民法の規定によれば,次の記述のうち正しいものはどれか

1 は,にだまされて土地を売ったので,その売買契約を取り消した場合,そのことを善意のに対し対抗することができる。

2 は,に土地を売ったとき未成年者で,かつ,法定代理人の同意を得ていなかったので,その売買契約を取り消した場合,そのことを善意のに対し対抗することができない。

3 は,が売買代金を支払わないので,その売買契約を解除した場合,そのことを悪意のに対し対抗することができる。

4 は,に強迫されて土地を売ったので,その売買契約を取り消した場合,そのことを善意のに対し対抗することができる。 

〔問4〕 土地の売買契約に関する次の記述のうち,民法の規定によれば,正しいものはどれか。

1 その土地が第三者の所有であって,当該第三者に譲渡の意思がないときは,契約は無効となる。

2 その土地に隠れた瑕疵があって,買主がそのことを知らなかったときは,買主は,その事実を知ったとき,瑕疵の程度に関係なく,契約を解除することができる。

3 その土地に権利を主張する者がいて,買主が買い受けた土地の所有権の一部を失うおそれがあるときは,買主は,売主が相当の担保を提供しない限り,その危険の限度に応じて代金の一部の支払いを拒むことができる。

4 その土地に抵当権が設定されていて,買主がそのことを知らなかったときは,買主は,その事実を知ったとき,抵当権行使の有無に関係なく,契約を解除することができる。

〔問5〕 根抵当権に関する次の記述のうち,民法の規定によれば,誤っているものはどれか。

1 根抵当権者は,元本の確定前において,同一の債務者に対する他の債権者の利益のために,その順位を譲渡することができる。

2 根抵当権者は,元本の確定前において,後順位の抵当権者の承諾を得ることなく,根抵当権の担保すべき債権の範囲を変更することができる。

3 根抵当権者は,元本の確定前において,根抵当権設定者の承諾を得て,その根抵当権の一部を譲渡することができる。

4 根抵当権者は,元本の確定後においても,利害関係を有する者の承諾を得て,根抵当権の極度額の変更をすることができる。 

〔問6〕 Aは,自己所有の建物をBに賃貸した。この場合,民法及び借地借家法の規定によれば,次の記述のうち誤っているものを選べ。

1 建物が老朽化してきたため,が建物の保存のために必要な修繕をする場合,は,の修繕行為を拒むことはできない。

2 建物が老朽化してきたため,の負担すべき必要費を支出して建物の修繕をした場合,は,に対して,直ちに修繕に要した費用全額の償還を請求することができる。 

3 の承諾を得て第三者に建物を転貸した場合,AB間の賃貸借契約が期間の満了により終了すれば,当然にBC間の転貸借契約も終了する。

4 の承諾を得て第三者に建物を転貸した場合,は,に対して直接賃料を請求することができる。

〔問7〕 抵当権に関する次の記述のうち,民法の規定及び判例によれば,誤っているものはどれか。

1 抵当権は,不動産だけでなく,地上権及び永小作権にも設定することができる。

2 抵当権の効力は,その被担保債権に債務不履行があるときは,その後に生じた抵当不動産の果実に及ぶ。

3 抵当権の効力は,抵当権設定行為に別段の定めがあるとき等を除き,不動産に附合した物だけでなく、抵当権設定当時の抵当不動産の従物にも及ぶ。

4 土地に抵当権を設定した後,抵当権設定者がその抵当地に建物を築造した場合,抵当権者は,建物を土地とともに競売して,建物の競売代金からも優先弁済を受けることができる。 

〔問8〕 請負契約における請負人の担保責任に関する次の記述は,民法の規定及び判例によれば,正しいものはどれか。ただし,担保責任に関する特約はないものとする。

1 完成した目的物に瑕疵があり,請負人が修補義務を負う場合において,その修補が可能なものであっても,注文者は,瑕疵の修補に代えて,直ちに損害賠償の請求をすることができる。

2 完成した目的物に契約をした目的を達することができない重大な瑕疵があるときは,注文者は,瑕疵の修補又は損害賠償の請求をすることはできないが,契約を解除することができる。

3 完成した目的物が建物その他土地の工作物である場合において,その物が引渡しを受けてから3年目に瑕疵により損傷したときは,注文者は,その時から2年以内に修補又は損害賠償の請求をすることができる。

4 完成した目的物が建物その他土地の工作物である場合において,その物に契約をした目的を達することができない重大な瑕疵があるときは,注文者は,契約の解除をすることができる。

〔問9〕 A所有の家屋につき,Aを売主,Bを買主とする売買契約が成立した。この場合,民法の規定によれば,次の記述のうち正しいものはどれか。

1 家屋の所有権移転登記後,引渡し前に,その家屋が天災によって滅失した場合,は,に対し代金を請求することができない。

2 家屋の所有権移転登記後,引渡し前に,その家屋が放火によって半焼した場合,は,に対し代金の減額を請求することができる。

3 家屋の所有権移転登記後,引渡し前に,その家屋がの失火によって焼失した場合,その契約は失効する。

4 家屋の所有権移転登記が完了し,引渡し期日が過ぎたのに,がその引渡しをしないでいたところ,その家屋が類焼によって滅失した場合,は,契約を解除することができる。

〔問10〕 A及びBは,Cと売買契約を締結し,連帯してその代金を支払う債務を負担している。この場合,民法の規定によれば,次の記述のうち正しいものはどれか。

1 に対して代金支払いの請求をしても,の代金債権の消滅時効は,については中断されない。

2 売買契約を締結する際,に錯誤があって,AC間の売買契約が無効であったとしても,BC間の売買契約は,無効とはならない。

3 に対して債務を承認すると,の代金債務の消滅時効は,についても中断される。

4 が死亡し,がその相続人としてその代金債権を承継しても,の代金債務は,消滅しない。 

〔問11〕 は,9,000万円の遺産を残して死亡した。には,配偶者との間の子がある。との間には,のほかに子もいたが,死亡の前に既に死亡しており,その子 b が残されている。さらに,には,非嫡出子もいる。また,には子 a がおり,死亡後直ちに相続を放棄した。この場合の民法の規定に基づく法定相続人に関する次の記述のうち,正しいものはどれか。

1 が6,000万円,が3,000万円の相続分を取得する。

2 が4,500万円,b が4,500万円の相続分を取得する。

3 が4,500万円,b が3,000万円,が1,500万円の相続分を取得する。

4 が4,500万円,a が1,800万円,b が1,800万円,が900万円の相続分を取得する。

〔問12〕 Aは,Bの所有する土地を賃借し,その上に木造の建物を所有している。この場合,借地借家法の規定および判例によれば,次の記述のうち誤っているものはどれか。

1 の借地契約において借地権の存続期間を10年と定めた場合,その約定はなかったものとみなされ,借地権は,契約の時から20年存続することになる

2 借地権の存続期間満了の際,が契約の更新を請求した場合において,建物が存在し,が異議を述べなかったときは,前の契約と同一の条件をもって,更に借地権を設定したものとみなされる。

3 借地権の存続期間満了後,が土地の使用を継続している場合において,建物が存在しが異議を述べなかったときは,前の契約と同一の条件をもって,更に借地権を設定したものとみなされる。

4 AB間で借賃の増額について協議が調わない場合,は,増額を正当とする裁判が確定するまでは,相当と認める借賃を支払えばよい。

〔問13〕 Aは,その所有する建物をBに貸借した。この場合,借地借家法の規定によれば,次の記述のうち誤っているものはどれか。

1 がその建物を第三者に譲渡し,所有権の移転登記がされた場合でも,その登記前にから建物の引渡しを受けていれば,は,に対して賃借権を対抗することができる。

2 が建物を第三者に転貸する場合,の承諾を得る必要があるが,が承諾を与えないときは,は,の承諾に代わる許可の裁判を裁判所に対して申し立てることができる。

3 は,賃貸借契約の更新について,正当の事由がなければ,これを拒むことはできない。

4 が賃貸借期間満了の1年前から6月前までの間にに対して更新拒絶の通知をしないときは,従前の契約と同一の条件をもって契約を更新したものとみなされ,更新後の賃貸借は期間の定めのないものとされる。 

〔問14〕 建物の区分所有等に関する法律(以下この問において「区分所有法」という。)に関する次の記述のうち,誤っているものはどれか。

1 共用部分の持分の割合は,規約で別段の定めをしない限り,その有する専有部分の床面積の割合により,かつ,各専有部分の床面積は,壁その他の区画の中心線で囲まれた部分の水平投影面積による。

2 区分所有者は,共用部分について他の区分所有者に対して債権を有する場合は,その債権について,債務者の区分所有権及び建物に備え付けた動産の上に先取特権を有する。

3 建物の設置または保存に瑕疵があることにより他人に損害を生じたときは,その瑕疵は,共用部分の設置又は保存にあるものと推定される。

4 区分所有法第62条第1項に規定する建替え決議は,集会において,区分所有者及び議決権の各5分の4以上の多数により行うことができる。 

〔問15〕 不動産登記に関する次の記述のうち,誤っているものはどれか。

1 同一の登記所の管轄に属する数個の不動産に関する登記を申請する場合,登記原因および登記の目的が同一であるときに限り,同一の申請情報で登記を申請することができる。

2 建物が滅失したときは,表題部所有者又は所有権の登記名義人は,その滅失の日から1月以内に当該建物の滅失の登記を申請しなければならない。

3 所有権の登記名義人が登記義務者として登記を書面申請する場合に提出する印鑑証明書は,その作成後6カ月以内のものでなければならない。

4 不動産の権利に関する登記の申請,不動産の表示に関する登記の申請とも,登記所に出頭しなくてもすることができる。

〔問16〕 区分建物に係る登記に関する次の記述のうち,誤っているものはどれか。

1 敷地権たる旨の登記ある土地の登記記録には,敷地権を目的とする一般の先取特権の保存の登記及び質権又は抵当権の設定の登記は,その土地が敷地権の目的となる前にその登記原因が生じたものであっても,することができない。

2 建物について敷地権の表示を登記したときは,敷地権の目的である土地の登記記録の権利部の相当区に,敷地権たる旨の登記をしなければならない。

3 区分建物の所有権保存の登記は,表題部所有者から所有権を取得した者も,申請をすることができるが,当該建物が敷地権付き区分建物であるときは,当該敷地権の登記名義人の承諾を得なければならない。

4 区分建物の登記記録は,各区分建物ごとに一登記記録が備えられる。区分建物の登記記録は,当該区分建物が属する一棟の建物についての表題部,当該区分建物についての表題部と,権利部の甲区,乙区からなる。


【正解】

10 11

12 13 14 15 16


●宅建過去問・民法編
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