平成10年度 宅地建物取引主任者資格試験
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権利の変動分野 〔民法・区分所有法・借地借家法・不動産登記法〕 |
〔問1〕 Aの所有する土地をBが取得したが,Bはまだ所有権移転登記を受けていない。この場合,民法の規定及び判例によれば,Bが当該土地の所有権を主張できない相手は,次の記述のうちどれか。
1 Aから当該土地を賃借し,その上に自己名義で保存登記をした建物を所有している者 2 Bが移転登記を受けていないことに乗じ,Bに高値で売りつけ不当な利益を得る目的でAをそそのかし,Aから当該土地を購入して移転登記を受けた者 3 当該土地の不法占拠者 4 Bが当該土地を取得した後で,移転登記を受ける前に,Aが死亡した場合におけるAの相続人 |
〔問2〕 所有の意思をもって,平穏かつ公然にA所有の甲土地を占有しているBの取得時効に関する次の記述のうち,民法の規定及び判例によれば,正しいものはどれか。
1 Bの父が15年間所有の意思をもって平穏かつ公然に甲土地を占有し,Bが相続によりその占有を承継した場合でも,B自身がその後5年問占有しただけでは,Bは,時効によって甲土地の所有権を取得することができない。 2 Bが2年間自己占有し,引き続き18年間Cに賃貸していた場合には,Bに所有の意思があっても,Bは,時効によって甲土地の所有権を取得することができない。 3 DがBの取得時効完成前にAから甲土地を買い受けた場合には,Dの登記がBの取得時効完成の前であると後であるとを問わず,Bは,登記がなくても,時効による甲土地の所有権の取得をDに対抗することができる。 4 取得時効による所有権の取得は,原始取得であるが,甲土地が農地である場合には,Bは,農地法に基づく許可を受けたときに限り,時効によって甲土地の所有権を取得することができる。 |
〔問3〕 建物の賃借人Aは,賃貸人Bに対して有している建物賃貸借契約上の敷金返還請求権につき,Cに対するAの金銭債務の担保として質権を設定することとし,Bの同意を得た。この場合,民法の規定及び判例によれば,次の記述のうち正しいものはどれか。
1 Aは,建物賃貸借契約が終了し,AからBに対する建物の明渡しが完了した後でなければ,敷金返還請求権について質権を設定することはできない。 2 Cが質権の設定を受けた場合,確定日付のある証書によるAからBへの通知又はBの承諾がないときでも,Cは,AB間の建物賃貸借契約証書及びAのBに対する敷金預託を証する書面の交付を受けている限り,その質権の設定をAの他の債権者に対抗することができる。 3 Cが質権の設定を受けた後,質権の実行かつ敷金の返還請求ができることとなった場合,Cは,Aの承諾を得ることなく,敷金返還請求権に基づきBから直接取立てを行うことができる。 4 Cが,質権設定を受けた後その実行ができることとなった場合で,Bに対し質権を実行する旨の通知をしたとき,Bは,その通知受領後Aの明渡し完了前に発生する賃料相当損害金については敷金から充当することができなくなる。 |
〔問4〕 AがBに1,000万円を貸し付け,Cが連帯保証人となった場合に関する次の記述のうち,民法の規定によれば,正しいものはどれか。
1 Aは,自己の選択により,B及びCに対して,各別に又は同時に, 1,000万円の請求をすることができる。 2 Cは,Aからの請求に対して,自分は保証人だから,まず主たる債務者であるBに対して請求するよう主張することができる。 3 AがCに対して請求の訴えを提起することにより,Bに対する関係で消滅時効の中断の効力が生ずることはない。 4 CがAに対して全額弁済した場合に,Bに対してAが有する抵当権を代位行使するためには,Cは,Aの承諾を得る必要がある。 |
〔問5〕 Aは,Bから借金をし,Bの債権を担保するためにA所有の土地及びその上の建物に抵当権を設定した。この場合,民法の規定及び判例によれば,次の記述のうち誤っているものはどれか。
1 Bの抵当権の実行により,Cが建物,Dが土地を競落した場合,Dは,Cに対して土地の明渡しを請求することはできない。 2 Aは,抵当権設定の登記をした後も建物をEに賃貸することができるが,期間3年以内の賃貸借の登記があっても,その賃貸借についてのBの同意の登記がなければ,Eは,建物の競落人に対して賃借権を対抗することができない。改 3 Bは,第三者Fから借金をした場合,Aに対する抵当権をもって,さらにFの債権のための担保とすることができる。 4 Aから抵当権付きの土地及び建物を買い取ったGは,Bの抵当権の実行に対しては,自ら競落する以外にそれらの所有権を保持する方法はない。 |
〔問5〕 原題 短期賃貸借の問題でした。
2 Aは,抵当権設定の登記をした後も建物をEに賃貸することができ,Bに損害を及ぼすことなく期間3年以内の賃貸借でその登記があるとき,Eは,建物の競落人に対して賃借権を対抗しうる。 |
〔問6〕 AはBから建物を賃借し,Bの承諾を得て,当該建物をCに転貸している。この場合,民法の規定及び判例によれば,次の記述のうち正しいものはどれか。なお,Aの支払うべき賃料の額は,Cの支払うべき転借料の額より小さいものとする。
1 AとBとが賃貸借契約を合意解除した場合,AC間の転貸借契約は,その前提を失うため,特別の事情のある場合を除き,当然に終了する。 2 Cは,Bから請求があれば,CがAに支払うべき転借料全額を直接Bに支払うべき義務を負う。 3 Bは,Aの債務不履行によりAB間の賃貸借契約を解除しようとする場合,Cに対して,3ヵ月以前に通知し,Aに代わって賃料を支払う機会を与えなければならない。 4 Bが,Aの債務不履行によりAB間の賃貸借契約を適法に解除した場合,Cは,AC間の転貸借契約に基づく転借権をBに対抗することができない。 |
〔問7〕 Aが,A所有の土地をBに売却する契約を締結した場合に関する次の記述のうち,民法の規定によれば,誤っているものはどれか。
1 AのBに対する売却の意思表示がCの詐欺によって行われた場合で,BがそのCによる詐欺の事実を知っていたとき,Aは,売却の意思表示を取り消すことができる。 2 AのBに対する売却の意思表示がBの強迫によって行われた場合,Aは,売却の意思表示を取り消すことができるが,その取消しをもって,Bからその取消し前に当該土地を買い受けた善意のDには対抗できない。 3 Aが,自分の真意ではないと認識しながらBに対する売却の意思表示を行った場合で,BがそのAの真意を知っていたとき,Aは,売却の意思表示の無効を主張できる。 4 AのBに対する売却の意思表示につき法律行為の要素に錯誤があった場合,Aは,売却の意思表示の無効を主張できるが,Aに重大な過失があったときは,無効を主張できない。 |
〔問8〕 Aが,Bに建物を 3,000万円で売却した場合の契約の解除に関する次の記述のうち,民法の規定及び判例によれば,誤っているものはどれか。
1 Aが定められた履行期に引渡しをしない場合,Bは,3,000万円の提供をしないで,Aに対して履行の催告をしたうえ契約を解除できる。 2 Bが建物の引度しを受けて入居したが,2ヵ月経過後契約が解除された場合,Bは,Aに建物の返還とともに,2ヵ月分の使用料相当額を支払う必要がある。 3 Bが代金を支払った後Aが引渡しをしないうちに,Aの過失で建物が焼失した場合,Bは,Aに対し契約を解除して,代金の返還,その利息の支払い,引渡し不能による損害賠償の各請求をすることができる。 4 特約でBに留保された解除権の行使に期間の定めのない場合,Aが,Bに対し相当の期間内に解除するかどうか確答すべき旨を催告し,その期間内に解除の通知を受けなかったとき,Bは,契約を解除できなくなる。 |
〔問9〕 Aは,Bから建物を贈与 (負担なし) する旨の意思表示を受け,これを承諾したが,まだBからAに対する建物の引渡し及び所有権移転登記はされていない。この場合,民法の規定及び判例によれば,次の記述のうち誤っているものはどれか。
1 贈与が書面によらない場合であっても,Aが第三者Cに対して本件建物を売却する契約を締結した後は,Bは,本件贈与を撤回することができない。 2 贈与が書面によるものである場合で,Bが建物の所有権移転登記に応じないとき,Aは,Bに対して当該登記を求める訴えを裁判所に提起することができる。 3 贈与契約締結後に,本件建物にしろありの被害のあることが判明したが,Bがその被害の存在を知らなかった場合,Bは,しろありの被害による建物の減価分についてAに対し担保責任を負わない。 4 贈与が死因贈与であった場合,それが書面によるものであっても,特別の事情がない限り,Bは,後にいつでも贈与を撤回することができる。 |
〔問10〕 相続人が,被相続人の妻Aと子Bのみである場合 (被相続人の遺言はないものとする。) の相続の承認又は放棄に関する次の記述のうち,民法の規定及び判例によれば,誤っているものはどれか。
1 相続の承認又は放棄をすべき3ヵ月の期間の始期は,AとBとで異なることがある。 2 Aが単純承認をすると,Bは,限定承認をすることができない。 3 A及びBは限定承認をしたが,Bが相続財産を隠匿していたとき,相続債権者は,相続財産をもって弁済を受けられなかった債権額の1/2について,Bに請求できる。 4 Aは,Bの詐欺によって相続の放棄をしたとき,Bに対して取消しの意思表示をして,遺産の分割を請求することができる。 |
〔問11〕 Aは,平成4年8月,その所有地について,Bに対し,建物の所有を目的とし存続期間30年の約定で賃借権 (その他の特約はないものとする。) を設定した。この場合,借地借家法の規定によれば,次の記述のうち正しいものはどれか。
1 Bが,当初の存続期間満了前に,現存する建物を取り壊し,残存期間を超えて存続すべき建物を新たに築造した場合で,Aにその旨を事前に通知しなかったとき,Aは,無断築造を理由として,契約を解除することができる。 2 当初の存続期間満了時に建物が存在しており,Bが契約の更新を請求した場合で,Aがこれに対し遅滞なく異議を述べたが,その異議に正当の事由がないとき,契約は更新したものとみなされ,更新後の存続期間は30年となる。 3 Bが,契約の更新後に,現存する建物を取り壊し,残存期間を超えて存続すべき建物を新たに築造した場合で,Aの承諾もそれに代わる裁判所の許可もないとき,Aは,土地の賃貸借の解約の申入れをすることができる。 4 存続期間が満了し,契約の更新がない場合で,Bの建物が存続期間満了前にAの承諾を得ないで残存期間を超えて存続すべきものとして新たに築造されたものであるとき,Bは,Aに対し当該建物を買い取るべきことを請求することはできない。 |
〔問12〕 Aが,Bに対し期間2年と定めて賃貸した建物を,BはCに対し期間を定めずに転貸し,Aはこれを承諾した。この場合,借地借家法の規定によれば,次の記述のうち誤っているものはどれか。
1 AがBに対する更新拒絶の通知をしたときでも,期間満了後Cが建物の使用を継続し,Aがこれに対して遅滞なく異議を述べないと,AB間の契約は更新される。 2 AがBに対し更新拒絶の通知をするための正当の事由の有無は,A及びBについての事情によって決せられ,Cについての事情は考慮されない。 3 CがAの同意を得て建物に付加した造作は,期間の満了によって建物の賃貸借が終了するとき,CからAに対し買取りを請求することができる。 4 AB間の賃貸借が期間の満了によって終了するときも,AがCに対してその旨の通知をした日から6月を経過しないと,建物の転貸借は終了しない。 |
〔問13〕 建物の区分所有等に関する法律 (以下この問において 「区分所有法」 という。) に関する次の記述のうち,誤っているものはどれか。
1 区分所有者の1/5以上で議決権の1/5以上を有するものは,管理者に対し,会議の目的たる事項を示して,集会の招集を請求することができるが,この定数は,規約によって減ずることができる。 2 改良を目的とし,かつ,著しく多額の費用を要しない共用部分の変更については,規約に別段の定めがない場合は,区分所有者及び議決権の各過半数による集会の決議で決することができる。 3 占有者は,建物又はその敷地若しくは附属施設の使用方法につき,区分所有者が規約又は集会の決議に基づいて負う義務と同一の義務を負う。 4 区分所有法第62条第1項に規定する建替え決議が集会においてなされた場合,決議に反対した区分所有者は,決議に賛成した区分所有者に対し,建物及びその敷地に関する権利を時価で買い取るべきことを請求することができる。 |
〔問14〕 不動産登記の登記識別情報の提供に関する次の記述のうち,誤っているものはどれか。ただし,申請人が登記識別情報を提供することができないことについて正当な理由がある場合については考慮しないものとする。
1 相続による所有権移転登記を申請する場合には,申請情報と併せて被相続人の所有権の登記の登記識別情報を提供しなければならない。 2 所有権保存登記の抹消をその所有権の登記名義人が申請する場合には,申請情報と併せて当該所有権保存登記を受けた際の登記識別情報を提供しなければならない。 3 所有権の登記がある二筆の土地の合筆登記を申請する場合には,申請情報と併せて合筆前のいずれか一筆の土地の所有権の登記の登記識別情報を提供しなければならない。 4 抵当権の順位変更の登記を申請する場合には,申請情報と併せて,順位を変更する各抵当権の登記名義人が抵当権の設定登記を受けた際の登記識別情報を提供しなければならない。 |
〔問15〕 不動産の仮登記に関する次の記述のうち,正しいものはどれか。
1 仮登記は,登記の申請に必要な手続上の条件が具備しない場合に限り,仮登記権利者が単独で申請することができる。 2 仮登記権利者は,裁判所の仮登記を命じる処分の決定書正本を提供するときでなければ,単独で仮登記の申請をすることができない。 3 抵当権設定の仮登記に基づき本登記を申請する場合に,その本登記について登記上利害関係を有する第三者があるときは,申請書にその者の承諾書を添付しなければ,当該本登記を申請することができない。 4 仮登記の抹消は,申請書に仮登記名義人の承諾書を添付した場合には,仮登記義務者が単独で申請することができる。 |
【正解】
1 | 2 | 3 | 4 | 5 |
1 |
3 |
3 |
1 |
4 |
6 | 7 | 8 | 9 | 10 |
4 |
2 |
1 |
1 |
4 |
11 | 12 | 13 | 14 | 15 |
3 |
2 |
4 |
1 |
4 |
●平成10年度・宅建試験 |
権利変動(問1〜問15),法令制限(問16〜問25),宅建業法(問30〜問45),税法その他(問26〜問29/問46〜問50),◆宅建過去問1998のトップに戻る |
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