平成14年度 宅地建物取引主任者資格試験
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権利の変動分野 〔民法・区分所有法・借地借家法・不動産登記法〕 |
〔問1〕 AがBの欺罔行為によって,A所有の建物をCに売却する契約をした場合に関する次の記述のうち,民法の規定及び判例によれば,誤っているものはどれか。
1 Aは,Bが欺罔行為をしたことを,Cが知っているときでないと,売買契約の取消しをすることができない。 2 AがCに所有権移転登記を済ませ,CがAに代金を完済した後,詐欺による有効な取消しがなされたときには,登記の抹消と代金の返還は同時履行の関係になる。 3 Aは,詐欺に気が付いていたが,契約に基づき,異議を留めることなく所有権移転登記手続をし,代金を請求していた場合,詐欺による取消しをすることはできない。 4 Cが当該建物を,詐欺について善意のDに転売して所有権移転登記を済ませても,Aは詐欺による取り消しをして,Dから建物の返還を求めることができる。
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〔問2〕 AがBの代理人としてCとの間で,B所有の土地の売買契約を締結する場合に関する次の記述のうち,民法の規定によれば,正しいものはどれか。
1 Bは,Aに対してCとの間の売買契約を委任したが,Aが,DをCと勘違いした要素の錯誤によってDとの間で契約した場合,Aに重過失がなければ,この契約は無効である。 2 Bが,AにB所有土地を担保として,借金をすることしか頼んでいない場合,CがAに土地売却の代理権があると信じ,それに正当の事由があっても,BC間に売買契約は成立しない。 3 Bは未成年者であっても,Aが成年に達した者であれば,Bの法定代理人の同意又は許可を得ることなく,Aに売買の代理権を与えて,Cとの間で土地の売買契約を締結することができ,この契約を取消すことはできない。 4 AがBに無断でCと売買契約をしたが,Bがそれを知らないでDに売却して移転登記をした後でも,BがAの行為を追認すれば,DはCに所有権取得を対抗できなくなる。
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〔問3〕 売主A・買主B間の建物売買契約(所有権移転登記は行っていない。)が解除され,建物の所有者Aが,B居住の建物をCに売却して所有権移転登記をした場合に関する次の記述は,民法の規定及び判例によれば,正しいものはどれか。
1 Aが,Bに対して建物をCのために占有することを指示し,Cがそれを承諾しただけでは,AがCに建物を引き渡したことにはならない。 2 Bが建物占有中に,地震によって玄関のドアが大破したので修繕し,その費用を負担した場合でも,BはCに対してその負担額の償還を請求することはできない 3 Bは,占有中の建物の一部をDに使用させ賃料を受領した場合,その受領額をCに償還しなければならない。 4 Cが暴力によって,Bから建物の占有を奪った場合,BはCに占有回収の訴えを提起できるが,CはBに対抗できる所有権があるので占有回収の訴えについては敗訴することはない。
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〔問4〕 Aは,自己所有の甲土地の一部につき,通行目的で,隣地乙土地の便益に供する通行地役権設定契約(地役権の付従性について別段の定めはない。)を,乙土地所有者Bと締結した。この場合,民法の規定及び判例によれば,次の記述のうち正しいものはどれか。
1 この通行地役権の設定登記をしないまま,Aが,甲土地をCに譲渡し,所有権移転登記を経由した場合,Cは,通路として継続的に使用されていることが客観的に明らかであり,かつ,通行地役権があることを知っていたときでも,Bに対して,常にこの通行地役権を否定できる。 2 この通行地役権の設定登記を行った後,Bが,乙土地をDに譲渡し,乙土地の所有権移転登記を経由した場合,Dは,この通行地役権が自己に移転したことをAに対して主張できる。 3 Bは,この通行地役権を,乙土地と分離して,単独で第三者に売却することができる。 4 Bが,契約で認められた部分ではない甲土地の部分を,継続かつ表現の形で,乙土地の通行の便益のために利用していた場合でも,契約で認められていない部分については,通行地役権を時効取得することはできない。
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〔問5〕 Aは,Bから建物を賃借し,Bに3,000万円の敷金を預託した。その後,Aは,Bの承諾を得て,この敷金返還請求権につき,Cからの借入金債務を担保するために,Cのために適法に質権を設定した。この場合,民法の規定によれば,次の記述のうち正しいものはどれか。
1 Cは,Bの承諾が書面によるものであれば,確定日付を得ていなくても,この質権設定を,B以外の第三者に対しても対抗することができる。 2 CのAに対する利息請求権は,常に満期となった最後の2年分についてのみ,この質権の被担保債権となる。 3 CのAに対する債権の弁済期の前に,この敷金返還請求権の弁済期が到来した場合は,Cは,Bに対し,当該敷金を供託するよう請求できる。 4 CのAに対する債権の弁済期が到来した場合,Cは,Bに対し,Bがこの質権設定を承諾したことを根拠に,この敷金返還請求権の弁済期の前に,当該敷金を直ちにCに交付するよう請求できる。
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〔問6〕 Aは,Bに対する貸付金債権の担保のために,当該貸付金債権額にほぼ見合う評価額を有するB所有の更地である甲土地に抵当権を設定し,その旨の登記をした。その後,Bはこの土地上に乙建物を築造し,自己所有とした。この場合,民法の規定及び判例によれば,次の記述のうち正しいものはどれか。
1 Aは,Bに対し,乙建物の築造行為は,甲土地に対するAの抵当権を侵害する行為であるとして,乙建物の収去を求めることができる。 2 Bが,甲土地及び乙建物の双方につき,Cのために抵当権を設定して,その旨の登記をした後(甲土地についてはAの後順位),Aの抵当権が実行されるとき,乙建物のために法定地上権が成立する。 3 Bが,乙建物築造後,甲土地についてのみ,Dのために抵当権を設定して,その旨の登記をした場合 (甲土地についてはAの後順位),Aの抵当権及び被担保債権が存続している状態で,Dの抵当権が実行されるとき,乙建物のために法定地上権が成立する。 4 Aは,乙建物に抵当権を設定していなくても,甲土地とともに乙建物を競売することができるが,優先弁済権は甲土地の代金についてのみ行使できる。
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〔問7〕 AB間の土地売買契約中の履行遅滞の賠償額の予定の条項によって,AがBに対して,損害賠償請求をする場合に関する次の記述のうち,民法の規定及び判例によれば,誤っているのはどれか。
1 賠償請求を受けたBは,自己の履行遅滞について,帰責事由のないことを主張・立証すれば,免責される。 2 Bが,Aの過失を立証して,過失相殺の主張をしたとき,裁判所は損害額の算定にその過失を斟酌することができる。 3 裁判所は,賠償額の予定の合意が,暴利行為として公序良俗違反となる場合でも,賠償額の減額をすることができない。 4 Aは,賠償請求に際して,Bの履行遅滞があったことを主張・立証すれば足り,損害の発生や損害額の主張・立証をする必要はない。
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〔問8〕 Aは,A所有の土地を,Bに対し,1億円で売却する契約を締結し,手付金として1,000万円を受領した。Aは,決済日において,登記及び引渡し等の自己の債務の履行を提供したが,Bが,土地の値下がりを理由に残代金を支払わなかったので,登記及び引渡しはしなかった。この場合,民法の規定及び判例によれば,次の記述のうち誤っているものはどれか。
1 Aは,この売買契約を解除せず,Bに対し,残代金の支払を請求し続けることができる。 2 Aは,この売買契約を解除するとともに,Bに対し,売買契約締結後解除されるまでの土地の値下がりによる損害を理由として,賠償請求できる。 3 Bが,AB間の売買契約締結後,この土地をCに転売する契約を締結していた場合で,Cがやはり土地の値下がりを理由としてBに代金の支払をしないとき,Bはこれを理由として,AB間の売買契約を解除することはできない 4 Bが,AB間の売買契約締結後,この土地をCに転売する契約を締結していた場合,Aは,AB間の売買契約を解除しても,Cのこの土地を取得する権利を害することはできない。
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〔問9〕 AがBに建物を売却し,代金受領と引換えに建物を引き渡し後に,Bがこの建物に隠れた瑕疵があることを発見したが,売主の瑕疵担保責任についての特約はない。この場合,民法の規定及び判例によれば,次の記述のうち誤っているものはどれか。
1 Bは,この瑕疵がAの責めに帰すべき事由により生じたものであることを証明した場合に限り,この瑕疵に基づき行使できる権利を主張できる。 2 Bは,この売買契約を解除できない場合でも,この瑕疵により受けた損害につき,Aに対し賠償請求できる。 3 Bが,Aに対し,この瑕疵に基づき行使できる権利は,Bが瑕疵を知った時から1年以内に行使しなければならない。 4 Bは,この瑕疵があるために,この売買契約を締結した目的を達することができない場合に限り,この売買契約を解除できる。
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〔問10〕 Aが,A所有の不動産の売買をBに対して委任する場合に関する次の記述は,民法の規定によれば,正しいものはどれか。なお,A及びBは宅地建物取引業者ではないものとする。
1 不動産のような高価な財産の売買を委任する場合には,AはBに対して委任状を交付しないと,委任契約は成立しない。 2 Bは,委任契約をする際、有償の合意をしない限り,報酬の請求をすることができないが,委任事務のために使った費用とその利息は,Aに請求することができる。 3 Bが当該物件の価格の調査など善良なる管理者の注意義務を怠ったため,不動産売買についてAに損害が生じたとしても,報酬の合意をしていない以上,AはBに対して賠償の請求をすることができない。 4 委任はいつでも解除することができるから,有償の合意があり,売買契約成立寸前にAが理由なく解除してBに不利益を与えたときでも,BはAに対して損害賠償を請求することはできない。
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〔問11〕 Aの被用者Bと,Cの被用者Dが,A及びCの事業の執行につき、共同してEに対し不法行為をし,A,B,C及びDが,Eに対し損害賠償を負担した場合に関する次の記述は,民法の規定及び判例によれば,誤っているものはどれか。
1 Aは,Eに対するBとDの加害割合が6対4である場合は,Eの損害全額の賠償請求に対して,損害の6割に相当する金額について賠償の支払をする責任を負う。 2 Aが,自己の負担部分を超えて,Eに対し損害を賠償したときは,その超える部分につき,Cに対し,Cの負担部分の限度で求償することができる。 3 Aは,Eに対し損害賠償債務を負担したことに基づき損害を被った場合は,損害の公平な分担という見地から信義則上相当と認められる限度において,Bに対し,損害の賠償又は求償の請求をすることができる。 4 Dが,自己の負担部分を超えて,Eに対し損害を賠償したときは,その超える部分につき,Aに対し,Aの負担部分の限度で求償することができる。
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〔問12〕 相続の承認及び放棄に関する次の記述のうち,民法の規定によれば,誤っているものはどれか。
1 相続の放棄をする場合,その旨を家庭裁判所に申述しなければならない。 2 相続人が数人あるときは,限定承認は,共同相続人の全員が共同してのみこれをすることができる。 3 相続人が,自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヵ月(家庭裁判所が期間の伸長をした場合は当該期間)以内に,限定承認又は放棄をしなかったときは,単純承認をしたものとみなされる。 4 被相続人の子が,相続の開始後に相続放棄をした場合,その者の子がこれを代襲して相続人となる。
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〔問13〕 Aが,平成4年8月,Bに土地を賃貸し,Bがその土地上に建物を所有している場合の契約終了に伴う建物買取請求権に関する次の記述のうち,借地借家法の規定及び判例によれば,誤っているものはどれか。
1 AB間の借地契約が,公正証書により10年の事業専用の目的で締結された場合には,Bは建物買取請求権を有しない。 2 建物買取請求権は,契約終了の理由を問わず,Bの債務不履行を原因とする契約終了の場合にも,BはAに対して建物の買取りを請求することができる。 3 BがAの承諾を得て土地をCに転貸し,建物を譲渡した場合,AB間,BC間の契約が,ともに期間満了し更新がなければ,CはAに対し直接建物買取請求権を有する。 4 Bが適法にAに建物買取請求権を行使すると,その所有権は直ちにBからAに移転するが,BはAが代金を支払うまで,建物の引渡しを拒むことができる。
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〔問14〕 建物賃貸借契約(以下,この問において「契約」という。)の終了に関する次の記述のうち,借地借家法の規定によれば,正しいものはどれか。
1 期間の定めのある建物賃貸借において,賃貸人が,期間満了の1年前から6月前までの間に,更新しない旨の通知を出すのを失念したときは,賃貸人に借地借家法第28条に定める正当事由がある場合でも,契約は期間満了により終了しない。 2 期間の定めのある建物賃貸借において,賃貸人が,期間満了の10月前に更新しない旨の通知を出したときで,その通知に借地借家法第28条に定める正当事由がある場合は,期間満了後,賃借人が使用を継続していることについて,賃貸人が異議を述べなくても,契約は期間満了により終了する。 3 期間の定めのある契約が法定更新された場合,その後の契約は従前と同一条件となり,従前と同一の期間の定めのある賃貸借契約となる。 4 期間の定めのない契約において,賃貸人が,解約の申入れをしたときで,その通知に借地借家法第28条に定める正当事由がある場合は,解約の申入れの日から3月を経過した日に,契約は終了する。
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〔問15〕 不動産登記の申請に関する次の記述のうち,誤っているものはどれか。
1 権利に関する登記の申請をするときは,申請人又はその代理人は必ずしも登記所に出頭しなくてもよいので,郵送により登記申請をすることができる。 2 委任による登記申請の代理権は,本人の死亡によって消滅する。 3 登記の申請は,登記権利者及び登記義務者が共同してするのが原則であるが,相続による登記は,登記権利者のみで申請することができる。 4 登記権利者及び登記義務者が共同して申請することを要する登記について,登記義務者が申請に協力しない場合には,登記権利者が登記義務者に対し登記手続を求める旨の判決を得れば,その登記義務者の申請は要しない。
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【正解】
1 | 2 | 3 | 4 | 5 |
4 | 1 | 3 | 2 | 3 |
6 | 7 | 8 | 9 | 10 |
4 | 3 | 4 | 1 | 2 |
11 | 12 | 13 | 14 | 15 |
1 | 4 | 2 | 1 | 2 |
●平成14年度・宅建試験 原題 |
権利変動(問1〜問15),法令制限(問16〜問25),宅建業法(問30〜問45),税法その他(問26〜問29/問46〜問50),◆'02宅建試験トップに戻る |
●宅建過去問・民法編 |
昭和55年,昭和56年,昭和57年,昭和58年,昭和59年,昭和60年,昭和61年, 昭和62年,昭和63年,平成元年,平成2年,平成3年,平成4年,平成5年, 平成6年,平成7年,平成8年,平成9年,平成10年,平成11年,平成12年, 平成13年,平成14年,平成15年,平成16年,平成17年,平成18年,平成19年, 平成20年, |
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